ジャガイモ


「何やってんだよ……」


 ポセイドンって意外と不器用なんだな。


「俺は農業に対応してないんだ。仕方ないだろう」


「ハーパンTシャツとビーチサンダルで農作業とか、対応してないって言う以前に、着替えて来なよって言いたいね」


 言ってんじゃん……


「今日のうち収穫出来る分は、それ程多くないので、余り気負わずに……」

「私達2人でも大丈夫ですよ。お二方もですが、ポセイドン様のお手を煩わせる程の量は無いですから」


 ロナルディもリスティールさんも、ポセイドンに気を使ってら……


「良いの良いの、ポセイどんがやりたいって言い出したんだし、俺とポムは元々手伝うつもりだったし、気にしない気にしない」


 ジャガイモ掘りなんて小学生以来だけど、そんなに難しい事じゃ無いと思う。

 畝に鍬を入れて、柔らかくなった所のジャガイモを一気に引っ張るだけだし、残ったジャガイモは土を掻き分けて拾うだけだし。


 リスティールさんが何をしたのか全く分からないけど、家庭菜園と言うには多少無理がある程の畑を作って、その畑の畝1列毎に違う野菜をロナルディが植えたんだ。


「私の猫草部分も綺麗にレンガで囲ってくれて、爆釣なんかより気が利くよね」


「雑草をレンガで囲う意味がわからん」


 1畝毎に土の成分を変えてあるから、1つの畑で色々な野菜が作れるんだと。

 因みに、ポムの猫草は大麦の若葉らしい。育つと麦が出来るそうだ。


「ふがっ!? また切れた……」


「諦めて拾えよ……全部一度に繋げて抜こうとするから、尻もちつくんだろ?」


 ポセイドンの尻も背中も泥だらけ。洗濯する前に泥を洗い流さないとな。




 ロナルディとリスティールさんの家は、結局俺に合わせるって事でコンテナハウスに決定して、2つ買って1つは農作業小屋になってる。

 野菜を保管する場所も作ったから、掘ったジャガイモを運んで昼飯の準備。


「小さい芋は丸ごと揚げて、大きい芋はじゃがバターとポテサラだな」


 オレンジ色のカゴに15個くらい収穫出来たジャガイモ、掘ってすぐと少し置いた物で、かなり味が変わるらしい。


「ジャガイモばっかりか……ポテサラにはベーコン沢山入れて欲しい……」


 ポムがショボーンってしてるな……猫だから肉食だししょうがないか。


「ベーコンたっぷりな。ちょっと高い奴で、ぶつ切りにして入れてやるよ」


 ジャガイモを使った料理か……あんまり思い浮かばないな……


「ふぅ……サッパリだ。やはり俺に農作業なんて向いてないな」


「せめて長靴くらい履けよ」「軍手も付けた方が良いと思う」


「おっ、早速ジャガイモ料理か。手軽に美味い奴でも1つ作ってやろうかな」


 話を逸らしやがったけど、ポセイドンのジャガイモ料理も気になるや……



 ある程度塊を残したままの潰したジャガイモにマヨネーズをネチョッと豪快に混ぜて、キュウリとレタスをざく切りにして、分厚いベーコンをぶつ切りにして混ぜ込んでたら、リスティールさんが……


「もう少し油の温度は上げた方が良いと思う」


 煮えたぎる油の中に指を突っ込んだんだ……


「それじゃもう少し火力をあげようかな」


 ロナルディが火に手をかざすと、火力が上がった……


「爆釣、ドワーフだと300℃くらいなら火傷なんてしないからな」


「爆釣って魔法を見たの初めてだっけ? ロナが使った魔法なんて誰でも使える初歩の魔法だよ」


 映画の中の世界っぽい……


「魔法や魔術の衰退した地球だと、驚いて当然だな」

「私には魔法も無いのに、お洗濯とか自動でやってくれる機械の方が驚きだったけどな」


洗濯機アレは素晴らしい物です」


 リスティールさんは蛍光灯に驚き、洗濯機に驚き、ガスコンロに驚き、夜飯の時に見てる猫型ロボットのアニメに驚き、構造を調べたいとか言い出して、分解しようとするもんだから、止めるのが大変だった。


 ロナルディは、蛍光灯の光に魔力が宿ってない事に驚いたくらい。

 そもそも家事をしてる所を見た事が無くて、洗濯機を見た時は、メイドや使用人はこんな風に洗濯してるんだなって思ったらしい。

 あと、アニメは何回か見た事があるんだと。


「後はオーブンで焼くだけだ。出来上がったら運ぶから、食卓で待っててくれ」


 ポセイドンは作るトコを見せてくれなかった。

 何が出来るのか少し楽しみではある。




 ポムの分のポテサラにベーコン多めによそって、蒸したジャガイモと串に刺して団子みたいになった揚げ芋と来れば……


「ダンっ!? 黒い奴!」「おお、コーラ」


 まだ昼だからな。アルコールは早い……わけない。


「コーラ味のチューハイな」「昼からお酒とか良いんでしょうか?」


 ロナルディが昼からとか言ってるけど、リスティールさんは目が輝いてる。


「良いの良いの。たまには昼間っから酔っぱっても。誰にも迷惑掛けないんだしさ」


 5人分ジョッキにコーラチューハイを注いだら、ポセイドンの登場……


「ピザ?」「ピザだな」ピザソースの匂いが……


「ジャガイモを生地にして、ウインナーとチーズたっぷりのお手軽ジャガピザだよ」


 おお〜美味そう……


「んじゃ揃ったし食うか」「だね。お腹ペコペコ」


 俺とポムとポセイドンは、いただきます。

 ロナルディとリスティールさんは、祈りの言葉みたいなのを言ってから食い始める。


「爆釣、じゃがバターにコレを乗せてみろ」


 ポセイドンがコレって言ったのは……


「塩辛? それって初めて会った時に作ったやつだよな?」


「良い漬かり具合だ。塩が効いてて少し辛めだが、大成功だったな」


 どれどれ…………うわっ!


「爆釣、モタモタしない。邪魔!」


 ポムがイカの塩辛を奪って自分のじゃがバターに乗せて……デカい口開けて……


「おいふぃい」


 ガブリと1口、もごもごしながら美味しいだってさ。


「どれどれ……んぐっ……もごもご…………」


 …………………………


「美味っ! じゃがバターとイカの塩辛ってヤバい」


 リスティールさんも、もぐもぐしながらニコッとなってて、コーラチューハイを一気飲み。

 ロナルディはイカの塩辛の匂いに顔を歪めたけど、思い切って1口齧ったら……


「美味しい……」


「この塩辛自体が美味いからな。パンパンに肥えた肝と最良の塩加減と寝かせた時間。飯と食っても、酒の肴にしても美味いぞ」


「作った後、どこにやったか分からなくなってたのって、ポセイどんが保存しててくれたんだな」


 白い歯に、塩辛が挟まってて、ニッって笑うポセイドン。今日の歯は光ってないなww


 焦げたチーズとジャガイモの匂いが最高のジャガピザ、串に刺した揚げ芋も塩が効いててコーラに合う。


「せっかくいい天気なんだし、昼からは外で昼寝すっぞ」


「ビーチチェアー使うか?」「私はレジャーシートが良い」「昼間から寝ていて良いのでしょうか?」

「リスティ。昼寝しよう」


 ポほろ酔い状態でポカポカ陽気。5人並んで自分のポジションを確保したら……そりゃ寝てしまうよ。


 俺とポムはレジャーシート、3人はビーチチェアー。


「夜飯は何食う?」「なんでもいい」


 昼飯食ったばっかりだけど、夜飯の相談。


「夜はテキトーで良いか……………」「だね……」


 ロナルディもリスティールさんも、疲れてたのかな? あっという間寝ちゃったし……

 ポセイドンなんかデカいいびきかきながら寝てる。


「春だな……」「春だね……」


 のんびり出来るって……なんか良いなあ……



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る