カワハギ
今日は起きて直ぐに猫型ポムのブラッシングをしてやって、寝床をコロコロで掃除した後に、昼の弁当の握り飯を作って防波堤に来てる。
「カワハギは煮付けもだけど、肝醤油作って刺身に付けたら最高だぞ。」「お吸い物も欲しい。」
バーベキューの時の竈は残してあるから、そのうちまたやろうかな? とか考えてたら……
「フィッシュ! って……最近デカいのばっかり釣ってたから手応えが……」
釣れたのは20センチくらいのカワハギ。
「カワハギは20センチが買取下限だっけ?」
「だな。とりあえず数釣らないと収入になんねえから頑張ろうか。」
タモも要らんな。釣れた傍から頭の所に包丁入れて〆てクーラーボックスに投げ込む。
仕掛けなんてテキトーでも釣れるから、小学生の頃から良く釣ってたぜ。
「業務用の製氷機が6千ポイントで買えたのはありがたいな。氷使い放題だし。」
「夏になったらかき氷食べたい。出来れば練乳とフルーツてんこ盛りで。」
夏が来る前にちゃんとした建物作らないとな……
「台風来るんだよな……ちょっと島の真ん中に山っぽいのでも作ろうか。」
「山を作るなら木を植えて川も作れよ。そしたら上ってくるぞ鮭が。おはよう2人とも。」
おっ今日も来た来た。
「おはようございますポセイど〜ん。」「おはよポセどん。」
む! ベイトリールじゃないか。
「さすがポセイどんだな……やっぱり一流メーカーのリールって良いか?」
シ〇ノのリールだな。竿は……ダ〇ワか……
「俺の率直な意見を良いか?」
ポセイドンが真剣な表情になった、普段はヘラヘラしてんのに。
「島国の日本人独特の考え方で作られたシ〇ノやダ〇ワはチートだよ。素晴らしい性能に耐久性とメンテナンス性を兼ね備えた、こんな良い釣り道具なんて過去のどの文明にも存在しなかったんだからな。」
そうなのか?
「ポセどんと爆釣の持ってる釣り道具って変な素材で出来てるけど、爆釣のは安っぽいよね。ポセどんのは凄く高そう。」
俺のは1番高い竿で、ホムセンで買った型遅れの1万くらいのヤツだもんな。
「竿もリールも今年の最新モデルだからな。羨ましいだろ?」
ぐぬぬ……羨ましいです。
「俺の分もだけどポムのも一緒に揃えよっかな。」
「私はコレで良いかな。尻尾で釣るよりずっと簡単だから。」
尻尾?
「尻尾で釣れんのか?」「釣れるよ、全身飲み込まれそうになるけど。」「それは釣りとは言えんだろ。」
おお……投げる時の姿も様になってる……
「囮に食い付いたら皆でしがみついて捕獲してたんだ。部族の長老達は木の枝を竿にして釣りしてたけどね。」
へ〜。
「普通の釣り竿ってのは竹だぞ。どの文明でもそれは変わらん。それを明治維新以降数十年でグラスロッド、カーボンロッドを作り出すとか変態日本人と言われても仕方の無い事だ。」
「竹竿なんてめちゃくちゃ高いじゃん。買えんよあんなの。」
「竹竿って高いの? 今使ってるヤツの方が高そうな感じがするけど。」「お前のはセットで1500ポイントな。ちゃんとした竹竿は10万ポイント以上すんぞ。」
入れ食いってこんなのを言うんだな……3分1匹ペースで釣れてくよ。
「そろそろイソメも無くなりそうだけど、無くなったら何する?」
80匹以上俺とポムで釣ってるな。
「東屋でも作るか、雨が降って濡れたら洗濯物や製氷機が壊れるぞ。」
「だな。工具は車に載ってた奴があるし、材料だけ買えば良いか。」「爆釣は家も作れるの?」
そんな訳ない。
「簡単な小屋くらいならな。本格的な家なんて無理だよ。」「ふ〜ん……」
「家を建てる時が来たら、職人を連れて来てやるぞ。日本人だし木造が良いんだろ? 木造家屋は専門家じゃないと無理だろうからな。」
うむ、木造がいいな。
「日当とか払えるかな……」「頑張ってポイント貯めよう。」「ガチャで技能持ちを当てるのもアリだけどな。」
そんな不確実な事はしません。
昼前には食べる分残してカワハギを売却したんだけど……
「ヤバいな……2匹1野口だ……」「ノグチって何?」「1000ポイントって事だな。」
3人共目が¥になってる。
「80匹だぞ、凄いじゃんコレ。カワハギなんてイソメで釣れるんだぞ。イソメなんて、そこら辺にうじゃうじゃ居るんだぞ。」
釣るのに針が直ぐダメになるから、針の交換がめんどくさいけど、ただそれだけ。労力なんて微妙なもんだよ。
「煮付けは2種類作ろうか。1つは普通の、1つはトマト煮込みなんてどうだ?」
「おお、またハイカラな食いもんを……」「美味しいなら何でもいい。」
とりあえず昼飯にしよ。
「ほれ、昼飯。ポセイどんの分も作っといたぞ。」
「待ってました。」「おお、すまんな。今日は何も準備してなかったんだ。」
ふふふ、俺の自信作だぞ。
「なんだ……ただの塩むす……」「………………」
「どうだ?肉巻きin握り飯は。美味いだろ?」
肉巻きっておにぎりを食べた事がないだろうか?
あれってめちゃくちゃ手が汚れんのな。だから俺は考えた、小さい肉巻きおにぎりを作って米でコートしてやればいいんじゃないかと。
「うん。ちょっと濃いめの味付けで大正解。」
コンビニに置いてあるバクダンおにぎりより少し大き目の奴を1人2個と横にトコブシの醤油煮。
「コレは……うちの店で裏メニューにしても良いか?」「お代り!」「別に良いんでない? 焼肉のタレとご飯と豚肉だよ。簡単に作れんだろ?」
お代りはありません。
ちなみに東屋を建てるのは、一瞬で却下になった。
「海洋コンテナが万能すぐる。」
窓と玄関の付いた海洋コンテナが売ってあった。
「3500ポイントとか、コレで十分過だろ。」
「頑丈だが夏は暑いぞ。断熱効果のある屋根でも作らないとな。」
そこは後々考えよかな。住居用と洗濯機と製氷機を置く用に2つ購入しといた。ポイントに余裕があるって素晴らしい。
「コンセントは移動出来るからな。岩から外して持ってくればいい。」
「タコ足すりゃ良っか。」「おお、ちゃんと床がある。」
空いてる所にちょっとしたキッチンを据えても良いかも、システムキッチンは……
「ぬあ……キッチンも安っ!」
「それは解体した建物から入手した奴を綺麗にして再利用された物だぞ。間違えて納品した物や、モデルハウスから撤去した型遅れの物も含まれているから安いんだよ。」
ほへ〜。安いのはありがたいな。
夜飯はカワハギ料理。もちろん買ったキッチンで作ったよ。ポムは寝床にするダンボールの中に毛布を敷き詰めて寝心地を確認してた。
薄く切った刺身と肝醤油。残った肝は刺身で、煮付けは2種類と来たら……ダンっ! 「銀色のヤツ!」
「肝はちゃんと裏漉ししたら滑らかなのな。次からちゃんとしよ。」「手間を掛けた分だけ美味くなる。」
「理屈なんか要らない、今は無言で食べる時間。」
とりあえず猫型ロボットの2作目の映画でも見せてやろうかな……
「食べるか見るかどっちかにしたらどうだ?」
「まあ良いじゃん。明日は何釣ろっかな……」
新しい環境を作ると直ぐに生態系が出来上がる不思議仕様だもんな。
「どうせなら南北に島を伸ばしてみろ。北の魚も南の魚も釣れるようになるぞ。」
「おお、それなら暖流側と寒流側とに島の東西で分けた方が良いかもな。」
親潮と黒潮みたくさ。
「海流の制御は俺に任せろ。本業だからな、良い感じにしといてやる。」
おお頼りになる。ポムが目を輝かせてコッチを見てる……もしかして……
「私も何か決めたい。そうだ、鉱山作ろ。ガルタイトが出る鉱山作ろ!」
無えよそんな鉱石……ポセイドン、笑ってないで助けろ。
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