カマス
寝る時のポムは猫型に戻るんだけど、戻ったら猫の本能に引っ張られて、人型の時は人の感覚になるんだそうだ。
猫型に戻るまではペット飼うって言い続けてて、真っ暗になって猫型になったらアツアツの天ぷらの美味さを延々と褒めたたえてた。
んで朝。とにかく眠いけど今日は洗濯しなくちゃなんだよ、着てない着替えがあと1組しか無いからさ。
「文明の利器ってのは便利だったんだなあ……洗濯物なんて、洗濯機に入れてスイッチ1つで乾いて出て来るのが当たり前なわけないか。」
「私の上司なんか、え〜と……地熱発電所? っていうの経営してたよ。電化製品ってのに必要なんでしょ?」
2人並んで水道の所でタライと洗濯板を使って洗濯物をゴシゴシしてる、洗剤は普通に買えた。
「お前の上司ってどんだけ金持ちなんだよ、マイ発電所とかさ……馬鹿じゃねえの? そんな金の使い方。」
「自作したって聞いてるけどね。 私が働き始めた頃には発電所もサーキット場も演芸場もあったけど、昔はただの草原だったらしいよ。」
すげえな……
「どんなヤツなん?」
「布1枚しか持ってない状態から、全部そこに住んでる生き物と協力して作り上げたって聞いてるけど、凄く貧乏性な人かな。コツコツ時間を掛けて手作業で木を切り出す作業から始めて作り上げたって言ってたもん。」
ほえ〜貧乏性と言うかケチなんだろ? 金持ちってケチって言うじゃん。
「心の声が漏れてるぞ。おはようばくちょうくぅぅん。ポムちゃあぁぁぁん。」
「うい〜す。」「おはようポセどん。」
おお、服装が板前さんだ。でも顔は何時ものなのな。
「欲しい物があったら構造を調べて、原材料から自分で確保して、制作に関する作業も自分でやって、快適な住環境を作ったらしいが、アイツの貯金なんて30万超えた事なんて数日しか無いらしいぞ。」
「なんでもかんでも使う人の為にって言って利益率0%にしようとするんだもん、住んでる皆から何時も猛反対されて、男4人でコタツで鍋つつきながら酒盛りと言う名の反省会してるもんね。」
どんなやつだよ……
「休日モードはちょいワルなイケメンなのに、仕事モードだとショボイおっさんにしか見えない奴だな。」
「へ〜。」「奥さんが大国の元王族で、すっごいワガママで活発なお嬢様だから、家事も育児も仕事も全部やってるもんね。」
なんか苦労してそ……
「だけど2人はなんでタライなんか使って洗濯してんだ? あっちにコンセントあるだろ、洗濯機くらい買えよ。」
な……ん……だ……と……
「どこにあんだよ。岩しかねえじゃん」「あっち」
うわ……岩に埋まってる……
「気付かんよこんなの。考えた奴ってアホじゃねえか。」「すまんなアホで。」「や〜いアホ〜。」
マジ? ポセイドンが考えたのかよ……
「もう少し分かりやすくしろよな、こんなん気付かんよ。」
腰くらいの高さの岩の下の方に、三ツ口コンセントとテレビのアンテナ線を刺すとこが付いてっし……
「洗濯機買うから、ちょっと選ばして。」
結構種類あんのな……乾燥機能付きは高いや。
「なんか思ったより安いのな、リサイクルショップより安くね?」
「壊れて捨てられた家電を修理して販売してるからだな。一時期あったろ、リサイクル料金が掛かる家電の無料回収とかよ。」
あったあった、無料回収とか言って「これは有料になります」とか言う業者とか居て問題になってた。
「昔の日本人なら本当に動かなくなるまで修理して使い続けてたんだけどな。」
何時の時代だよ、平成生まれの俺は知らんぞそんなの。
「私の上司のインベントリには年間2万トン超の壊れた家電が溜まって行くらしいよ。修理して付喪神付けてネットショップに出してるから、そっちも検索してみたら?」
付喪神って……物に宿る神だよな?
「東屋くらい作らないと濡れて壊れるぞ、DIYくらい出来んだろ?」「うむ、出来る。」
迷うのは二槽式か脱水までボタン1つで出来る奴かだな。
「お前のスマホで買える洗剤なんかは化学物質ゼロだから、排水はそのまま海に流して大丈夫だぞ。」
ほえ〜そうなんだ。どれにしようかな……どれを買うか選んでるだけで楽しいのな、家電ってさ。
「昼はカマスで良いか? 寝てる間に網仕掛けてたら結構かかってたんだよ。」
おお、塩焼きだな。
「本格的な和食じゃないが、玉ねぎとシメジをてんこ盛り乗せて、日本酒少々と麺つゆかけて、バター乗っけて蒸すと美味いぞ。」
「なんだそのハイカラな食いもんは。」
「お刺身も欲しい。ご飯は小盛でお願い。」「あいよ。」
カマスの刺身とか……美味いだろ絶対。ぬあっ!
「なんだよその渋い見た目は……」「板前モードだ。」「お刺身〜♪ お刺身ぃ〜♪」
なんつーんだろ……如何にも男前な板前さんって感じの見た目になりやがった。白人っぽい顔立ちのポセイドンが、ポセイドンなんだけど日本人に見えそうな見た目になってる。
「確かにそれだと、板前やってても違和感無いな。」
「モテるんだぞ。胃袋を掴まれるのに弱いのは男も女も同じだな。」「モテますオーラを加齢臭に変えてやりたい。」
やっぱりポムはポセイドンとなんかあったんだろうか?
「ポムちゃん、何回も謝っただろ? 猫だったんだから小便してるとこ見られたくらいでいつまでもネチネチ言うなよ。」
「なんだそんな事か。俺だって何度も見てんじゃん、気にすんなよ。アバターやる前はウ〇コしてるトコまで見たぞ……ぅわっ!」
あっぶねー……
「目を突くな目を。怪我したらどうすんだよ。」
「爆釣、そりゃ見てても言ったらダメだ、流石にレディーに失礼だぞ。」
フシャーって言いながら威嚇してやんの。
「お前だって俺が海にウ〇コしてんの見てただろうが。」
「出してるの分かってたから見てない! ド変態!」
「別に海に出すのは構わんが、食い物を扱う時にする話題じゃないぞ。」
だな、すまんすまん。
そんなこんなで、昼飯まで不機嫌だったポムだけど。
「悔しいけど美味しい。これからも美味しい物を捧げてくれるなら許してあげようじゃないか。」
おっ、眼鏡の奥がニヤケてやんの。
「だなあ、カマスって塩焼きくらいしかしてなかったけど、色んな食い方があるんだな。」
知らん人はサンマと間違えるかも……そんなわけ無いか。
「解して握り飯の具にしても美味いぞ。」
間違いないな。てか魚って殆どが塩焼きにするかマヨ混ぜて握り飯の具にしたら美味いと思う。
「乾燥機付いてない洗濯機買うから、物干し台も買わないとな。」
「洗濯バサミも欲しいね。」「布団叩きも買っとけよ。」
だなあ、欲しい物が色々あり過ぎだな。
「そういやさ、ポムってドライヤーが欲しいって言ってたよな?」「うん、音のしない奴が良いんだけど。」
音のしない? そんなのあるのか……
「うわ……1500万pとかするんだけど……何このドライヤー……」
半永久的に使える? なんだそりゃ……
「高いから1680pの普通の奴な。」「ケチ。」
「普通ので十分だろ、人型の時に使うならな。」
それもそっか、だってさ。助かったよポセイドン。
「おし、今日は休日にして洗濯しまくるぞ。」
「おー!」「俺の海パンも洗ってくれ。」
うし、洗濯しよ。
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