天ぷら
朝からポセイドンもキス釣りしてんだけど、昼を過ぎてもずっと居るんだよな、ちょっと経営してる割烹料理屋ってのがどうなってるのか気になるな。
「なあ、ポセイどん。お前の店って毎日遊び回って大丈夫なん? 仕込みの時間とか間に合うのかよ?」
「大丈夫、そこは時間軸の違いだな。異世界ここと地球は時間の流れが違うから、異世界こっちで3日遊んでも地球だと1日しか過ぎてないんだよ。」
ほへ〜、なんか難しい話になりそ。
「まっアレだ、知り合いに時間移動出来る奴がいるから、遅刻しそうな時はそいつに過去に送って貰ってっし気にすんな。仕事はちゃんとしてるよ。」
「仕事もしないのに女性関係にルーズな男は糞虫以下だもんね。仕事してても糞虫だけど。あっ! 虫に失礼かな?」
ポム……なんかポセイドンに怨みでもあるんだろうか?
「きついなポムちゃん。こっちじゃオイタはしねえよ。どうなるかは分かってんだし。」
「オイタしたらどうなるんだ?」
半殺しとかかな? 慰謝料くらいだと簡単に払えそうだし……金持ってそうだもんなポセイドンって。
「標高1万8千mの極寒の山の頂きに海パン1枚で前触れも無く放り出されるのさ。あの時は山頂で1人悲しく凍え死ぬかと思ったぞ。」
半殺しより酷かった……
「それくらい当然だよね。奥さん何人居るのよ、お兄さんを見習って1人を愛するとか出来ないの?」
「無理だな、俺の生き甲斐の1つだからよ。」
3人並んで釣り糸を垂れてんだけど、殺伐として来たな……
「一夫多妻とか良くやるよ、俺なんか自分を養うだけで精一杯だぞ。ある意味尊敬するな。」
「爆釣も同時に何人も好きな人が居る感じのクズなの?」
う〜ん……
「それは無い。と言うか、2人ですら同時に付き合うとか無理だよ、そんな甲斐性も無いしだし。」
ポムにキツイ事言われたポセイドンだったけど……
「旗色が悪いので離脱する。サラバだ!」
水中眼鏡付けて海に逃げやがった……
「あっ、アイツ……腰にビク付けたまんまじゃん。車海老置いてけよ。」
「どうせ夕飯の支度する頃には帰ってくるよ、キス天食べたいって言い出したのポセどんでしょ。」
それもそうか。
結局ポムの言ってた事は大当たりで、どの野菜を買うか2人で考えてたらポセイドンも帰って来た。
「おかえり、野菜選んでんだけどポセイどんは何が食いたい?」
「決定してるのは、玉ねぎとレンコン、青じそにアスパラ、椎茸とタラの芽。他に何が良いだろ?」
結局あんまり思い浮かばなかったんだよな。
「茎生姜だな。あとはオクラと舞茸も必須だろ。」
おお、3人寄ればって奴だ。茎生姜とか最高の肴じゃねえか。
「油はゴマな。ちゃんと仕入れて来たぞ。」
むっ……一斗缶かよ。
「業務用じゃねえの? そんな量使わんだろ。」
「油はそうそう腐らんよ。残ったら置いとくから使ってくれ。」
ありがてえな。
「助かるよポセイどぉ〜ん。」「気にしないでばくちょうくぅぅん。」「またやってる……」
相変わらず似てねえなww
「ポム、元ネタ見ながら呑むか?」「面白い?」
「面白くないとは言わんが、子供向けだな。」
ポムが来るまで夜は1人で暇だったから、ひたすらYouTubeばっかり見てたんだよな……月額の有料でも入ってやろうかな。
「スマホだと画面ちっちゃいな……」
「設定開いて機能の所で36インチまで大きく出来るぞ。」
マジで? すっげー機能が付いてんじゃん俺の……
「なあ、このスマホって弄られてるんだよな?」
「もちろん、日本仕様を元にカスタマイズされてんぞ。ちゃんと個人情報は漏れないようになってるから安心してエロ動画も見てくれ。」
アツアツのゴマ油でも掛けてやろうかな?
横を見たら……やっぱりポムがジト目になってる……
「エロ動画も興味が無いって言ったら嘘になるけどさ、家族にバレたんだぞ……少しトラウマだよ。」
これってホンネな。PCのデータ見られたのは本気で凹む。
「とりあえず画面デカくして猫型ロボットと眼鏡小学生のアニメでも見るか。」
「揚げながら食いながらな。」「うん。」
ちょー便利、4Kの36インチテレビに早変わりだわ。
足が付いてないから脚立に乗っけ石で固定してるんだけどな。
「大きくしたら、設置とかやり易そうだな。次からこの大きさで色々設置してこ。」
「とりあえず食え。天ぷらは揚げたてをハフハフ言って食うもんだ。」
だな。3人共飲み物は手に持ったな。
「美味そうな天ぷらに乾杯。」「板前さんの作る天ぷらに乾杯。」「アツアツを食べられる事に乾杯。」
ポセイドンがビール片手に食べながら揚げてくれる。
プロの料理人が目の前で揚げてくれた天ぷらは、アツアツで最高。
俺とポセイドンは黒いラベルな。たまには気分を変えたいだろ? ポムはホワイトサワーな酎ハイ。
「やはり何度見ても神器の効果を模していたとしか思えないアニメだな。」「へ〜、石ころみたくなれる帽子とかあんのかよ?」「……むしゃ……あつっ。」
ん? ジンギスカンか……
「なあ爆釣、天女の羽衣とかトライデントとか聞いた事ないか?」
天女の羽衣か……なんかあったな……
トライデントは歯磨き粉だろ? 長いチューブに入ってるヤツ。
「なんで呆れ顔してんだよ? 分かるよどっちも。」
「考えてる事が漏れてるぞ。トライデントは歯磨き粉じゃなくて、俺が持ってるヤスな。」
へ〜。それが何?
「……知らんのなら気にするな。簡単に言うと神の持ってる便利な道具だよ、お前のスマホも改造されて準神器になってんだからな。」
おっ。揚げたてのエビ……エビは揚げて貰ったらソッコーで食わないと、熱いとか言ってられない。最高のタイミングは中に完全に火が通る直前なんだから。
「熱っ。でも美味っ。ちょっと気になるのは、ポセイどんって和食の料理人なんだろ? その見た目で和食の料理人なのか? 胡散臭いぞ。」
まるっきり白人だもんな、髪は白髪と言うかプラチナブロンドってやつ。イケメンだけど、こんな奴が板場に立ってたら、回れ右するな。
「このままな訳ないだろ。流石に日本仕様に見た目は変えるさ。角刈りで如何にもな料理人の見た目だぞ。」
ちょっと見てみたい……
「でもな、そう言う所は日本人の悪い癖だ。外国人が和食の料理人になって何が悪い? 長い事日本に住んでりゃ出汁文化にも適応出来るんだぞ。」
金沢とかモロに和な街だろ? 大丈夫なのかよ?
「俺は別に構わんよ、店の売り上げが心配なだけでさ。」
おっ。やっとキス天……とりあえず塩……
「天つゆに豪快に潜らせて、熱いまま口に放り込め。売り上げは心配するな、そこそこ稼いでるからな。」
なんで天つゆなんだ? とりあえず言われた通り……
「うまっ。何このキス天。めちゃくちゃ美味いじゃん。」「それが青ギスだ。昔はキス天と言えば青ギスだったんだぞ。」
へ〜初めて食ったけど、ビールに合いすぎてヤバいなコレ。
「ホワイトサワーおかわり。舞茸とアスパラもおかわり。」
やっと終わったな猫型ロボットの最初の映画版。
「どうだった? 元ネタ分かったか?」「多種多様な信仰が混在している日本独特の文化だよなドラ〇もんは。」
「爆釣、恐竜飼おう。仕込んで漁業させよう。」
目を輝かせて、アホな事言うなよww 子供か。
「アホか……アレは作り話の世界だから出来るんだよ。実際に飼うとなったら寝床とかどうすんだよ。」
おっ俺のビールも空だな……いい感じに腹も膨れたし、最高のほろ酔い加減だし、そろそろ寝るか。
「寝床なら海に放置で良いだろ? でもな、海竜種だったら海の覇者だから漁業を覚えるとは思えないのだが。」
いるのかよ恐竜……
「ダメダメ。ペット飼うなら、しっかりと海と島の拡張が終わって、のんびり出来るようになるまで我慢な。」
残った天ぷらは、明日の朝飯で天むすにして食お。
「ねえ、爆釣。ちゃんと面倒見るから、私が育てるから、ねえ爆釣……」
むう……縦長の瞳孔が大きな黒目になってウルウルしてやがる……油でベトベトな手で服を掴むな。
「隣人ガチャのランダムの方にラインナップされてんだろ、0.002%だから当たるか知らんけど。」
そんなアドバイスなんかするなポセイドン。
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