アバター
毎日コツコツと100㎡の土地を購入してたら、島が当初の倍の広さくらいになって、魚の売れ行きも好調だから、今日はついに建物を購入するんだ。
ネットショップ見てたらイイもん見付けたからさ。
「車のトランクを寝床にするから、車の中に入ってる物を倉庫に移して整理整頓するのが今日の午前中の仕事だぞ。」
「うにゃ。昼ごはんは用意してるのかにゃ?ポムはそれが1番の心配だにゃ。」
もちろん用意してるよ。
「カリカリな。俺だって握り飯とメジナの塩焼きだけなんだからよ。」
飲み物は麦茶、ペットボトルに入れてる1ℓのやつな。ペットボトルは使い回ししてて、ヤカンを1個を麦茶専用にして毎日自分で沸かしてるんだ。
「ポムはバクチョーを見損にゃった。ポムも塩焼きが食べたいにゃ。1切れで良いからちょうだいにゃ。」
もちろんトッピングしてやるつもりだよ。
「まっ、昼になったら考えるさ。設置するから離れてな。」
「ふにゃっ」って言いながら敬礼するポムが可愛い。
設置する場所は島の中央。MAPで見たら下の方を拡張してるから車の置いてある場所から少し離れるけど、車は動かせば良いしだし。
「相変わらず地面からせり出して来んのな。車取ってくるから待ってろよ。」
設置したのは海運コンテナな。中古の払い下げ品で1個500p。なかなかお買い得だと思う。
「ポセイドンから貰った蛇口も移動出来るし、便利だよなコレ。ガソリンもちょっとしか残ってないし、そろそろガソリンも満タンにしときたいな。」
トイレは4日目でぶっ壊れた。風で倒れてバラバラになったから、ちゃんとしたのを今回購入済。
ポムと2人でせっせと車の中身を移動して、昼を回った頃には全部終わった。
「ポム、お手伝いサンキューな。お礼にメジナの塩焼きを捧げる。」
「よきにはからえバクチョーよ。ポムはカリカリとお魚で幸せににゃれる事間違い無しだにゃ。」
ふふふ、今回はもう1つあるんだよ。
「なあポム、20万p貯まったんだよ。猫獣人アバター買ってやろうか?」
アバターの説明を見たら、ネコ耳で尻尾のある人型タイプのアバターらしくてさ、どうせなら人型にしてやればポムも釣りくらい出来そうだから、労働力2倍ってわけだ。やましい気持ちなんて……聞かないでくれ。
「アバターだけじゃダメだにゃ。ちゃんと服も買って欲しいにゃ。バクチョーがエロい目付きで見てくるような露出度の高い物は拒否するにゃ。」
ボラがな……豊漁だったんだよ。婆ちゃん特製の練り餌は最高だった、毎日1万p以上稼げたんだ。
「ポム用の釣り道具も見繕ってあるから、毎日昼寝するなら釣り糸垂らしながら寝てくれよ。」
ホムセンとかに、袋に入ったセットになって掛けられてる税込1480円位のヤツな。
「うにゃ。そんな事にゃら許可してやるにゃ。露出度の高いセクシー担当ににゃったら、ポムのセクシーさにバクチョーは骨まで甘露煮になってしまうにゃ。」
骨まで食える程に柔らかくなるのか? セクシーな美人ならなりそうだけどな。とりあえず今の時点で求めてるのは労働力だからな。
「15万pも使うんだから、売り上げに貢献してくれよな……購入……」
貯めたポイントが一気に減った……
因みにだが、ポイントで物を購入するとダンボール箱に入って地面から出てくる。出てくる時に魔法陣っぽいのが浮かんで、そこの上にな。
梱包してあるダンボールは寝る時に敷布団代わりに使ってたんだけど、今は車の床に敷いて、その上に敷布団を敷いてある。
「ちっちゃいダンボールなのな。中身はビー玉みたいなのが1つ入ってるだけか。」
「それはオーブにゃ。スキルだったりギフトだったり色々な能力が入ってたりするにゃ。触ったら発動するのもあるから触らずにそのままポムに寄越すにゃ。」
危なく触るとこだったよ。
「物を持てる手になるのは嬉しいにゃ。1度で良いから、お箸を使ってお魚さんを食べてみたかったにゃ。」
木製の手にはめて使うスプーンとフォークだったんもんな。
「ポムの服を選ばせるにゃ。このまま変化したらポムの大切にゃチョッキが破れてしまうにゃ。」
おっと……そうだった……
ポムがスマホの画面を見ながら15分くらい服を選んでたけど、無難な下着とジャージとスニーカーを選んでた。ポイント残高が1万切ってて少し不安だな。と言うかポムの奴、3万p分も買ったのか……
さっき設置したコンテナの裏側で変化して着替えて来るってさ……
待つこと5分くらい。
「どうかな? 二足歩行には慣れてるけど背筋を伸ばすのに慣れてないから歩き方が変じゃない?」
ぼけーっとしてたら後ろから声を掛けられた。
振り返ったら……
「何処がセクシーだよ! なんだそれ、連休2日目に自宅でくつろいでる、御局様の対応に疲れた事務員の姉ちゃんみたいな見た目じゃんか!」
歳は20代前半〜俺と同じくらいかな。白い髪の毛をタオル生地のヘアバンドで後ろに流してて、肩より少し上までのサラサラストレート、黒縁メガネにジャージって……瞳孔が縦に細いのが猫っぽい。
確かに顔付きは綺麗と言うか可愛らしい感じだけど、何処がセクシーなんだよ。
「爆釣はわかってない、女子ってのは化粧で武装する生き物なんだから、スッピンはこんなもんでしょ。」
「ポムって何歳なんだよ?俺と似たようなもんか?」
俺の年齢は25、見た感じあんまり離れてないように見えるけど……
「1歳かな。1歳の誕生日くらいの時に魔族になって歳はとらなくなって、その後に寿命を貰う前に神化したから、外見は1歳のままだと思うけど、なんか変?」
猫の1歳って……あぁ確か人間だと21〜23歳くらいだったか……
「語尾ににゃって付かないのな、その方が喋り安いから、そっちで頼むわ。」
あれ……よく見たら……
「ネコ耳付いてるから耳が無いのな。ヒゲも生えてやんの。」
「そりゃそうでしょ、耳が4つあったら魔物だし。ポムは魔族だったけど魔物になった事はないから。」
う〜ん……マジマジと観察してみたけど……うむ、悪くないかもしれん。
「ねえ爆釣。胸と腰に視線が行き過ぎ。」
シュッって風を切る音がして、目の前を尖った爪が通り抜けた。
「うわっ! ふざけんな。気軽に目を潰そうとするなよ。怪我したらどうすんだよ……まったくよう。」
体型はジャージだからよく分からんが、まあ普通だな。背も160くらいで俺よりちょっとちっちゃいくらいか。
「まっ、これからもよろしくな。」
握手でもと思って右手を出したんだけど……
「なあ……なんで軍手とか付けてんだよ?」
「爆釣の手は魚ばっかり触ってるから、ひえ臭い。」
む? 婆ちゃんが良く言ってた、ひえ臭い……
鹿児島の方言で生魚の匂いとかを言うんだよな。
「めちゃくちゃ失礼じゃん。お前だってそのうちこんな匂いになるんだよ。今のうち慣れとけ。」
軍手を付けたまま握手したんだけど、爪が尖ってて痛かった。
「爪くらい切れよな。」「気が向いたらね。」
なんか、ふわっと変な匂いがした。
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