ボラ


 せっかく桟橋が出来たんだから、のんびり桟橋で釣りしながら握り飯を食おうと思って、アジの塩焼きをほぐして具にして、残ったのをポムにあげてみた。


「ちょっと前まで、ポムは美味しいカリカリさんを、たらふく食べてたにゃ。バクチョーもカリカリさんを食べれば栄養バランス良くなるにゃ。」


 あ〜カリカリか……確かに栄養バランスは良さそうだよな……


「んじゃカリカリだけにして、魚は食わなくていいか? それなら買ってやるけど。」


 にゃんと意地悪にゃ、とか言いながら椅子の上に敷いてある座布団の上で丸くなりやがった。


「首輪とか要らんのか? 欲しいなら買ってやるけど。」


 飼い猫なら付けるべきだよな……


「ご主人様プレイでもしたいのかにゃ? ポムは自立してるレディーだから首輪は要らにゃいにゃ。」


 あっそ……


「桟橋の所で釣りしてっから、起きたら飯食いに来いよ。」


「うにゃ」だってさ。



 桟橋で釣りするならウキ釣りだよな……とりあえず適当に太めのハリスで良いかな?


「海中から隆起したと思えないな……なんか、前からありましたよって感じの岩場と桟橋だし……」


 MAPを確認したら島の形が変わってんの。

因みに、島の名前はまだ決めてない。だって魚釣島とか付けたら……世論的にヤバくない?


「婆ちゃん特製のチンだご……普通にネットショップで取り扱ってんのな……びっくりだよ。」


 婆ちゃんがやってる釣り具店でしか売ってないって思ってた。婆ちゃん特製の練り餌なんだけどな……


「とりあえず、桟橋なら鉄板だろ。チンだごで攻略出来ない桟橋は無いはず。」


 竿は1.8メートルの短いヤツ、リールは安物スピニングリール。仕掛けはテキトーにウキと重りを付けて針はちょっと太め。


「意外としっかりしてんのな、350pだったのによ。」


 クーラーボックスに座って、ぼけーっと竿を眺めてんだけど……暇だな……竿の先に鈴でも付けて昼寝しよ。


「木の桟橋って良いなぁ良いなぁ。岩と違って背中が痛くない。伸びて寝れるって最高だな。」


 ポカポカといい感じの陽気だな。今なん月なんだろ? 季節とかあんのかな……家が買えるなら冬とかあっても良いな……冬が旬の魚とか釣りたいし。


 ぬおっ!鈴がなった気が……


「なってる……まだ……まだ……ここだっ!フィーーシュ!キタキタキタキター!」


 なんだろ、凄いぞ、めちゃくちゃ重い……


「ヤバい!ポムー!タモ取ってタモ。」


 過去に俺が釣った魚の中でも一二を争うくらい重い……


「でけえ!めちゃくちゃでけえボラじゃん。」


 ボラか〜……安いんだよ……


「ポムー!早く早く!」


 桟橋から海面まで1メートルくらい高さがあるんだよ、海面から上げたらソッコーで糸が切れるぞコレ。


「ポムのお昼寝タイムを邪魔したんにゃから、カリカリを要求するにゃ。」


「わっーたから。早く早く。」


 でけえな……90センチくらいあんじゃね?


「うわぁ、ごっついにゃ。ごっついお魚さんにゃ。」


 ポムの目もキラキラしてんな。俺の目もキラキラだよ。安くても良いよ、こんだけデカい魚釣ったのって初めてだし。


「ハリス太めのにしといて良かった〜。釣ったどー!」


 ボラってさ……卵を持ってたら高いのな。


 ボラの卵は三大珍味の一つ、カラスミの材料な。


「雌だったら良いなぁ……卵入ってたら良いなぁ。」


「バクチョーは魚の雌でもいけるのかにゃ?とんだド変態にゃ。危険だにゃポムも狙われてしまうにゃ。」


 コノヤロウ……


「ボラの卵は高級品なの。これだけのデカさのボラの卵だったらいい値段になりそうなんだけどな。」


 む? ポムがタモに入ったボラを真剣な眼差しで見つめてる……


「雌で卵が入ってるにゃ。鑑定さんが教えてくれたにゃ。」


 ん? なんだそれ? オスメス見分けられるの?


「凄いなポム。売ろうぜ。値段が楽しみだ。」


「高かったら高級カリカリを要求するにゃ。ポムも仕事したにゃ。」


 はいよ、はいよ。仕方ないな。


「お〜、8800pだってよ。すげえなボラ。」


 これは良いぞ、いい傾向だ。

1日3匹釣れたら……ウハウハじゃねえか。


「ポム。後でカリカリ選んでやるぜ。」


 1番安いヤツな。20kgで800pのやつ。


「ホントかにゃ? ポムはバクチョーを誤解してたにゃ。ド変態の料理上手な釣りバカだと思ってたにゃ。」


 失礼な、俺はノーマルだよ。変態って何処から何処までか分かんねえじゃん。俺は至って普通な。


「とりあえず住む所欲しいのな。いい加減車中泊じゃキツイしよ。簡易テントとマットレスくらい欲しいしさ、少しずつポイント残すつもりだし、無駄遣いはしないぞ。」


 生活の充実って大事だよな? とりあえず車は倉庫代わりにしてテント生活を目指そう。あと露天風呂。


「ケチ臭い男だにゃ。ポムはグルーミングした後に毛玉を吐きたいから雑草が生えてる場所が欲しいにゃ。ちゃんとしたおトイレも欲しいにゃ。」


 あ〜……トイレ……確かに……踏んだら嫌だもんな。


「俺は海にしてんぞ。紙も無いから海水で洗ってるし。ポムは海に出来ないのか?」


 大っきいのも小さいのもね。ケツは洗って専用タオルで拭いてる。


「ポムはレディーだにゃ。ちゃんとしたおトイレを要求するにゃ。」


 仕方ねえなあ……


「ダメダメ。生分解エコトイレってのが5万pもするし買えない。適当にそこら辺に出しとけよ。猫だろ?」


「車の中で出してやるにゃ!」


 なんだと! それはいけない。


「まて! ポム待って。分かった分かったから。汲み取り式簡易トイレ買うから。」


 1番安い300pのトイレ。


「うにゃ。ちゃんと壁があるにゃ? 無いとダメだにゃ。バクチョーのエロい目で見られてしまうにゃ。」


 え〜と……何処に設置しようかな……車の近くで良いか……


「おお。小屋が出来た。」


 ポムと二人で中を確認したんだけどさ……

小屋の真ん中に穴が空いてるだけのトイレだった。



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