真鯛



 イカソーメンも肝焼きも完成して、ポセイドンがポケットから取り出したテーブルに並べて、ポセイドンがポケットから取り出した冷え冷えの銀色の奴を並べて……ポセイドンがポケットから取り出した? 刺身のツマの大根とか出しやがった……


「なあ……俺の食欲が、おびただしい勢いで減って行くんだが、どうにかなんないのかよ? ポケットに直で入ってる訳? もう少し見た目を考えてくれよ、食べ物だぞ。」


 日本人はこれだから。なんて、ぶつくさ言ってるけど、誰でもそうだろうよ。ハーパンのポケットから出したんだぞ、切り揃えてある大根を。


「まっ、ビールでも飲みながら色々教えてやろうじゃ無いか。テーブルセットはお前にやるよ、地べたで飯食うとか、何処の蛮族だよ? って感じだからな。」


 うおっ! なんだそりゃ……


「ヒゲって伸び縮みするのかよ。ちょっとビビるぞソレ。」


 ヒゲが無くなったら、爽やかイケメンなポセイドン……


「超人気スキルなんだぞ、滅多に手に入らない体毛操作って奴な。薄毛に悩まされてる奴なら誰でも欲しいスキルだからな。」


 ほへ〜そんなモンまであるのか。


「俺にはスキルとか無いのか? 何処でステータスとか確認出来るんだろ?」


 合わせタイミング延長とか、遠投力アップとかさ……


「お前の場合、普通の地球人のまんまだよ。だってバイトだもん。正社員になるなら何か貰えんじゃね? 知らんけど。必要な物はアプリになってインストールされてっし、アプリで出来ない事は自力で何とかしろよな。」


 ふむふむ……む?


「アプリってさ、こっち側にインストールされてるのだよな? 販売とかポイント交換とか通販とか分かるんだけど、隣人ガチャとかランダムガチャって何よ?」


 ホーム画面は俺が元々入れてたまんま、次の画面に数種類入ってるのが追加されてたアプリみたい。


「まっ食いながら説明してやるよ。美味そうなイカじゃなイカ、美味しいうちに食わないと食材に失礼だぞ。」


 まっそうだよな。食いながら聞こ。


「汚染物質の無い綺麗な海に乾杯。」

「訳わかんねえけど、乾杯。」


 本日の料理はイカソーメンとイカの肝焼きと来たら、やっぱり……銀色のヤツ。


 ぷはっ! なんだこりゃ美味すぎる。


「うめぇなぁ〜。ビールってうめぇなぁ〜。」


「肝焼きと一緒に飲むビールは美味いだろうよ。んで、俺の特製醤油も試してみ。」


 おっと、そうだった出汁醤油だったな……


「なるほどね……こりゃ美味いわ。生姜だよな? 醤油に生姜と…………煮詰めた酒と昆布出汁だよな?」


 イカソーメンに最高に合うなコレ……


「おっ、お前っていける口だな。味覚もしっかりしてっし、1瓶やろうか?」


 素直に美味いって言葉にしたら、三合くらいの瓶に入った醤油貰えた。


「助かる、味変しないとキツイんだよ。ホント助かる。」


 メジナの刺身に付けても美味いかもだわコレ。

素直に喜んだら、ポセイドンがニヤニヤしてんの。


「てかさ、隣人ガチャって何? 1回100pのと1回10万pのと2種類あんだけど……」


「10万pの奴は、役に立つ奴確定じゃね? 詳細載ってんだろ? 確率とかも載ってるから試してみ。」


 ふむふむ……なるほどね……100pの方は出てくる奴がホントにランダムで、超絶美人秘書ってキャラが0.001%……当たらんな。


 対して、10万pの奴は超絶美人秘書が5%……それ以外も特殊技能持ちが殆ど……ここら辺は釣りゲーにも竿ガチャとかルアーガチャとかあったから分かる。


「明日の朝飯にしようと思って捕獲してた真鯛があるからお前にやるし、売ってポイントに変えてみろよ、使った方が覚えんだろ?」


 ポセイドンのポケットから……新鮮な真鯛が出てきた……凄く立派な60センチくらいの奴。


「有難く。ってコレかな……」


 買い取りってアプリを起動したら地面に魔法陣みたいなのが浮かんでる……


「それに乗っけたら自動で査定して貰えるし、買い取ってポイント付与して貰えんぞ。確か浜値で買取りだったはずだけどな。1円1p換算だから分かりやすいだろ。」


 なるほど……浜値か、漁師さんが市場に出す金額だな。小売値にして欲しいな。


「キロ1100円か……3.2キロだから3500円くらいかよ……安っ。」


「そんなもんだろ。21世紀の日本だと養殖とか出回ってっし、浜値だから毎日相場は変動するんだしさ。」


 売りますか? って画面に出てるから、売るをタップして売却してみたら……


「おお。消えた……何処に行くんだ? 売れた魚は何処に行くんだ?」


「観光地化されてる裏出雲大社の割烹料理屋だな。あれの魂は輪廻の輪に戻って次の生き物に生まれ変わるから気にすんな。」


 生まれ変わるとか気にもならん。


「隣人ガチャって1回だけ回してみていいか? なんか気になるんだよ。」


 回せよ、ちゃんと面倒見てやるんだぞ。なんて言われた。


「充電残量の所が所持ポイントになってんのか……よし、気合いを入れて…………おっ!」


 なんか金色の枠に赤い文字で説明文が書いてあって……


「獲物を狙う雌猫の目線に貴方は釘付け、気まぐれな性格と魅惑のヒップで男心を揺さぶる雌。めちゃくちゃ当たりじゃんよ!」


 コレで良いですか? だってさ……もちろん良いだろ……俺の心をくすぐって欲しいから。


「なあ……この世界は喋る生き物は全部人扱いだ……って聞いちゃいないか……」


 決定をタップしたら、魔法陣っぽいのが地面に浮かんで……


「ここがポムの新しい仕事場かにゃ? 美味しそうなイカの匂いがするにゃ……ポムはお腹が減ったにゃ。イカをよこすにゃ人間。」


 二足歩行でチョッキを着てて、喋る白猫が出てきた……



  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る