スルメイカ


 気になった事を色々聞きたいんだけど、ブーメランパンツ1枚のポセイドンが、一瞬でTシャツとハーパンになったんだ……


「ん、どうした? 着替えたのが変か? 流石に海パン一丁で刃物や火を使うほどバカじゃないさ。」


「どうやったのかが気になって……何処にしまってたんだ? やっぱりパンツの中か?」


 呆れてやがる。知らない事を聞くのは悪い事じゃ無いはずだよな。


「あの海パンは俺のインベントリと繋がってるヤツで、四次元ポケットになってんだよ。四次元ポケットって分かるだろ?」


 ああ……そうなんだ……


「お前のスマホにもちゃんとアプリ入れてあんだろ? ちょっと前にタブレット渡しただけで、なんにも教わらないで任地に送り出された神が居てな、そいつが何も知らなさ過ぎて神界大戦に発展しそうになったから義務化されたんだが。」


 へ〜スマホのアプリを入れるのが義務化……何それ?


「俺のスマホなんて、ホーム画面に入り切るくらいしかアプリなんて入ってないけど? 何処に入ってんのそんなアプリ。」


 包丁持ってるから料理に集中してら、聞いても答えてくれないし。


 だけど、ポセイドンってイカを捌くの上手いな……


「男の俺が料理するのが変か? 和食の料理人なんて殆ど男だろ? これでも有名な料亭で板前修行した事もあんだぜ。イカなんてお手の物だ。」


 へ〜神様なのに板前とかしてたのか……


「ポン酢派? 醤油派? 肝焼きは何で食べる?」


 2人で並んで、地面にまな板を置いて作ってるんだけど、釣ったスルメイカって足まで計ると40センチくらい。


「俺の特性出汁醤油でお前の舌を唸らせてやろう。俺が板前修行した料亭のオリジナルレシピだぞ。」


 おお、なんか凄いのが出て来そう……


「ハーパンのポケットからおもむろに出すなよ……しかも、醤油差しをポケットにじかで入れてるって勇気あるな、溢れないのかよ?」


 イカソーメンは出来た。肝焼きが完成するまで少し待たないとな。


「溢れる訳ないだろ。インベントリから直接出してんのに……ってお前ってインベントリって何か分かる?」


 知らない……何それ? お腹に便の詰まった鳥?


「呆れてしまうな、オンラインゲームとかやらんのか? 元日本人だろ。」


「ゲームやるよ、釣りゲーばっかりだけど。なんでまた?」


 色々教えて貰った。なるほどね……知らんわそんなの。


「気楽にやれや。地獄って言っても、ホントに軽い地獄だからな。焼き魚食うのがめちゃくちゃ汚い奴が居んだろ? 殆ど身を残してグチャグチャにする奴。あとは弁当に入ってる野菜とか捨てる奴とかさ。」


 いるいる、箸の使い方が下手くそなのか、魚が苦手なのか知らんけど、ちょくちょく見る。弁当もメインのおかずと米しか食わん奴とかいるいる。


「あんな奴らに魚介類になって一生を体験させて、魚介類の気持ちを教えてから現世に戻すってだけの地獄だからよ。」


 食べ物を無駄にするのは地獄行きらしい。


「んで、なんで俺が管理人? 普通だと地獄で仕事してるのって鬼とかじゃ無いの?」


「この地域の鬼はな……ダンサーだったり歌姫だったり、レーサーだったりキノコ博士だったりと、色々な仕事をしててな……どうせなら日本人で、その時の生活に納得してなくて、くすぶったまま死んだ奴を雇わないか? って年明け一発目の会議で決まってな。お前が第1号ってわけだ。」


 ダンサーとか歌姫とかレーサーとか……鬼だよな? キノコ博士ってなんだろ? 就職先は茸の会社ホ〇トかな?


「雇われた記憶は無いんだけどな……」


「それは仕方ない、強制だから諦めろ。その代わり任期が終わったら現世に戻った後に特典があるぞ。」


 お! そんなのあるの?


「お前の人生が25年と96日だったはずなんだが、同じ時間だけ任期があるのな。んで現世に戻ったら時給600×24時間×9926日で計算されて、その分だけ普通よりお得な人生が送れるぞ。」


 ちょっと待った……計算機、計算機……


「やべっ……約1億3千3百万円お得な人生とか……」


「違う違う、円じゃ無くてルピーだよインドルピー。お前って仏教徒だよな? インドの通貨に変わるはずだぞ。だいたい9千万円くらいじゃ無かったかな、100円が70ルピーくらいだったし。」


 それでも十分じゃねえか。


「でも、地獄ここで生活すんのが楽しくて、定住したい時はどうすりゃ良いんだ?」


 そんな時が来るか分からんけど、一応聞いとこう。


「そんなの普通に契約更新したら良いんじゃね? バイトから正社員に格上げしてくれんだろ?」


 正社員とかあんのか……有給とかもあんのかな?


「俺からも1つ頼みがある。聞いてくれたら少しだけ協力してやろう。」


 それは……


「聞いてから受けるかどうか決めていい?」




 …………………………しばらくお待ちください。





「なるほどね……地中海くらいの広さの世界で、島はココだけだから、それを太平洋くらいの広さに拡張してオーストラリアの半分くらいの陸地を作れって……」


 出来るのそんな事?


「う〜ん……ポイントで色々買えるのは分かった。ポイントを得るには魚を売れば良いのも分かった。」


 スマホのホームの右端を左にフリックしたら次のページがあって、そこに色々アプリが入ってた。それを使えば、なんとか生活は出来そうだけど……


「受けてくれたら、次に日本人として生まれ変わったら、プロの釣り人になれる人生を用意してやるぞ。」


 なんだと…………


「日曜の早朝とCSだけど釣り番組もレギュラーを4本持ってて、釣りアイドルと結婚して、楽しい人生を謳歌出来る人生とかどうだ?」


 そんなの……


「やるよ、俺はやるよ。やれば出来る子なんだ。」


 魚釣 爆釣 25歳。どうなるか分からんけど頑張ってみるか。

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