ポム


 唖然としてる俺と、ため息混じりのポセイドンの目の前に現れた白猫。綿毛のような体毛の灰色のチョッキを着てるポムなんだけど。


「初めましてにゃ、ポムは神様にゃ。とっても偉い神様にゃ。人間よ、ポムにイカをたらふく捧げるにゃ。」


 そんな事を言いながらテーブルに上がって来ようとするから。


「ダメっ。テーブルに立ったらダメ。そこは乗る所じゃ無くて、乗せるとこ。」


 脇に手を入れて持ち上げたら……下半身をクネクネして抜け出そうとしてる。微妙に可愛い。


「お前なぁ……ちゃんと注意書きを読め。書いてあった種族は猫だったろ? 人型なら〇〇人って書いてあるからよ。」


 うん、覚えた。次からはそうする。


「今の俺は、とてつもなく後悔してる。白猫コレの面倒も見なくちゃいけなくなったんだよな。」


 さっき責任持ってって言われた気がするんだよな。


「コレとか言ったらダメにゃ。ポムはセクシー女優にも負けにゃい美人にゃ。」


 う〜ん……確かに猫としては可愛いけど……


「全く信じてにゃいにゃ。ポムは人間にもにゃれるにゃ。」


 む? そうなのか? 教えてポセイド〜ン……


「大丈夫だよ、爆釣くぅぅん。心の声が漏れてるぞ。アバターを買い与えたら人間型にもなれるんじゃないか? 」


 映画? アバターってなんだったっけ?


「ポムは持ってるにゃ。これでもポムは神様にゃ。見せてやるからイカを食わせるにゃ。」


 ポセイドンも頷いてる。


「猫ってイカ食べちゃダメじゃねえの? 食って腰抜かさん?」


 イカフニャイって言いながら白猫が……でかくなった……


「まあな……そんな事だろうと思った。体型変化スキルじゃないか。それはアバターじゃないぞ。」


 おっ。体調1.5メートルくらいになったから、これが人型かと思ったんだけど。


「食料の無駄だ、元に戻れ。神と言っても付喪神より少し上の下級神だろ。」


 おお、一応神様なのか……なら……イカも大丈夫だろ。お腹壊さないよな?


「うにゃにゃ! うにゃにゃ! 微妙に届かにゃいにゃ。意地悪しないで食べさせるにゃ。」


 微妙に届かない高さにイカソーメンを摘んで、右に左にゆ〜らゆら、ポムが掴もうとするんだけど掴めなくて可愛い……


「飼うのか? 止めはせんが……人型にして働かせたいならショッピングアプリを開いてアバターでも買い与えてやれ。多種多様な種族が揃ってるはずだぞ。」


 おお。なんかアドバイスを貰った。


「メジナも食うか? 味付けはちょっと濃いけど美味いぞ。」


「もちろん食べるにゃ。ポムはお魚さんに目がにゃいにゃ。」


 余り物を処分出来る、素晴らしいじゃないか。

皿にメジナの塩焼きとイカソーメンを乗っけてやったら……どっから取り出したか分からないフォークとスプーンを使って食べ始めた。


「すげっ。手にはめて使う猫専用カトラリーとかあんのか。なんか高そうな匂いがする。」


 ちゃんとフォークとスプーンで食べてやんの。


「なあ爆釣。お前って人の話を聞かないのな。とりあえず食いながらで良いからスマホでショッピング開いてアバターって検索してみろ。」


 むう…… 堤防の所で釣りしてると、いつも餌を貰いに来る猫が居て、そいつに小魚をあげてる気分だったのによ……仕方な……


「なんですと? すげっ!高いけど欲しい。」


 人間から微生物までたくさんあるけど……獣人タイプってのが良いな……


「使用者を素材にして変化させるアバターは1体15万するからな。頑張って釣った魚を売って買えば良いさ。」


 うん。絶対買う……だって、さっきセクシー女優にも負けない美人とか言ってたし……


「まっ、お前がココを発展させてくれるってんなら少し協力してやらんとだな、俺の休日がどれだけ充実するか、管理人のお前の腕にかかってるんだから。」


「人間、バクニューだにゃんて恥ずかしい名前でも諦めちゃダメにゃ。ポムは名前なんて気にしにゃいにゃ。一緒に楽園を作るにゃ。」


 違う! 小学5年生くらいから良く言われてたけど違う。


「ばくちょう。俺はばくちょう、決してバクニューでは無い。間違うなよ。」


 またポケットをゴソゴソやってるポセイドンを気にしつつ、ポムの耳の後ろをコリコリしてやったら。


「良きにはからえ。ポムはお昼寝するにゃ。」


 俺が座ってた椅子の上に寝転んで寝ちゃった……


「んで、なんだよそれ? 杖? 蛇口型のステッキ?」


「あれだ、猫型ロボットの不思議な道具と同じようなもんだ。地面に刺してみろ。」


 塩ビパイプが杖に見える蛇口の付いた奴を受け取って、言われたように地面に刺してみた。


「蛇口を捻れば真水が出る。真水が無いと辛いだろ? それくらいは支援してやるよ。赴任祝いにとっとけ。」


 塩ビパイプの端っこを地面に当てたら蛇口が地面から50センチくらいの所まで勝手に埋まって……


 蛇口を捻ったら水が出た……


「ポセイドン……お前も地獄ここに住んでくれ。お前ほど素敵な奴は居ない。初めてだ、こんな便利な奴に会ったのは……」


 感動してたら、ポセイドンが海に向かって逃げてった。


「俺はバカンス中なんだ。たまに様子を見に来るから頑張れよ。あと、島の名前はスマホで変えられっから好きな名前を付けてやりな。」


 水中眼鏡とシュノーケルを装着しつつ海パンになって、ヤスを手に掴んで潜ってった。


 でも……ちょっとだけ海面から顔を出して……こっちを向いて。


「言い忘れてたけど、お前が任期終わって現世に帰ったら、溺れた所からやり直しなんだけどな。」


 おお、生まれ変わるとかじゃ無いんだ。


「お前のPCに入ってるエロデータ、ぜんぶ家族に見られたから。ケモ耳付けた巨乳姉ちゃんに「ご主人様の〇〇をたくさん下さい」とか言われてる奴な。妹なんかゴキブリを見る時の目になってたぞ。」


 なんだと……



「同級生達にも飲み会で酒の肴にされっから。覚悟しとけよ。」


 マジ? Orz



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る