第三八三食 旭日真昼とお父さん①
★
「んぅ……むにゃ?」
長く深い眠りから、少女――
試験期間中盤からは生活リズムを健康なものに戻していたとはいえ、心の底からぐっすり眠ったのは本当に久し振りだった。久しぶりに大好きな彼に会えたことで、一番巨大な心の
「というか私、いつの
「……あ、あーーーっ!? そ、そうだっ、昨日の夜はお兄さんがお父さんとお話するって言ってて、私もそれに参加しようとしてて……い、今何時っ!?」
勢いよく顔を振り向けると、窓からは既に明るい光が
「ノオーーーーーッ!?」
絶叫し、布団から飛び上がる真昼。なんという失態だろう、まさか自分と恋人の今後を左右する重大な場面でおねんねを決め込んでしまうとは。こんなことでやっぱり彼との交際は認められない、などという結末になろうものなら死んでも死にきれない。
「おっ、お兄さんっ! ごめんなさい、私いつの間にか寝ちゃって――って、ウッ!?」
部屋を出た途端、少女は台所とリビングに
「お、お酒くさあ……っ!? お酒飲むとは言ってたけどお兄さんたち、いったいどれだけ飲んだんだろ……」
「うう……ま、真昼、か……?」
「! お父さんっ!?」
娘の声に目を覚ましたのか、テーブルに突っ伏したまま眠っていたらしい父・
「フッ……なかなかいい男を見つけたな、真昼よ……彼が俺の
「どういうことなのっ!? というかよく見たらお兄さんとお母さんは
まったく状況が飲み込めていない真昼が水を差し出しつつ
☆
「もうっ、お父さんもお母さんも信じられないよ、お兄さんにお酒ばっかり飲ませて……! お兄さんは普段、お酒なんてほとんど飲まない人なんだからね!?」
「い、いやあ、
キッチン前に立ちながらぷんすこと
冬夜の話を簡単に
大切な恋人を潰されたことにひたすら
「真昼、さっきから何を作ってるんだ? なんだかすごくいい匂いがするが……」
「……玉子
「お酒飲んだ後にもいいと思う」と、火を消したコンロから土鍋を持ち上げた真昼は短く言う。これから仕事へ出掛ける父のため、なるべく消化に良いものをと選択した結果だ。
不機嫌そうに唇を
「そうか、これが彼も話していた……」
娘手製の雑炊を前に、冬夜はそう小さく呟いてレンゲを手に取った。
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