第三八四食 旭日真昼とお父さん②
「
「え?」
「お、お兄さんが私の作ったごはんの話をしたの!? なな、なんて!? なんて言ってた!? 『美味しい』って言ってた!? 『お嫁さんにしたい』って言ってた!?」
「い、いや、
「キャーッ! お兄さんが私の居ないところで私のごはんを『美味しかった』って……! えへ、うぇへへへへへっ……!」
「聞いてないな」
この場に
恋人のこととなると周りが見えなくなる娘の姿に自身の血を感じたのか、なんとも言えない表情の冬夜。そして彼は、声の調子を少し真面目なものに変えて続ける。
「……彼は、『真昼が一二月に成績を落としたのは自分のせいだ』と言っていた」
「!」
「試験の準備期間に風邪を引いて心配を掛けたり、自分に贈るクリスマスプレゼントを買うために色々準備をしてくれていたせいだ、とな。彼がこの雑炊の話を出したのも、どちらかと言えばそういう
「お、お兄さんが……」
真昼は胸の奥がぐっと詰まるような感覚を覚える。風邪の看病もクリスマスアルバイトも、どちらも真昼が自ら望んでやったことだ。
それでも彼がそう言ったのは真昼の恋人として、あるいは〝お兄さん〟として、共に責任を背負いたかったからなのかもしれない。
「他にも色々な話を聞かせてくれたよ。真昼と初めて会った時のことや第一印象、料理を教えている時のこと、真昼のどんな部分を魅力的に感じているか」
「なにそれ私も聞きたい!」と脳内で叫ぶ少女。
「まあほとんど母さんの聞きたいことに答えているだけだったが……どの話も真昼への親愛と
「そんなことないもん!? お兄さんは自分のことになると途端にニブくて、鈍感で、察しが悪くなっちゃうだけだもん!?」
「それはフォローなのか? というかどれも同じじゃないか。よくそんな男を落とせたもんだな、真昼も」
「だ、だって……絶対諦めたくなかったんだもん。お兄さんのこと、本当に大好きだから」
あの頃から一切
真昼の母・
真昼もまた、
しかし同じだからこそ、父と母には娘の気持ちがよく分かったのだろう。あるいは分かってしまった、だろうか?
「まったく……そこまで言われてまだ二人のことを認めなかったら、父さんは本当に魔王並みの悪者になってしまうじゃないか」
冬夜の表情に諦めたような、それでいて晴れやかな笑みが刻まれた。
「……真昼、よく聞きなさい。まず一つ、いくら
「!」
それを聞いて真昼が大きく瞳を見開く。なぜならそれは父が夕のことを――二人の交際を認めたということに他ならなかったから。
嬉しさのあまり、思わず飛び上がってしまいたくなる少女。しかし父はそれよりも一瞬早く、「そして三つ」と三本指を立てる。
「万が一、彼が無理矢理手を出そうとしてきたらすぐ父さんに言いなさい。包丁でも
「だ、だからお兄さんはそんな人じゃないってばっ!? なんか色々台無しだよっ!」
机をバンと叩いて立ち上がる真昼に、わざとらしく
「……父さんはなにがあっても真昼の味方だ。ただそのことだけは、忘れないでくれ」
そう言って
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