第三八一食 恋人たちと最後の戦い⑩
改めて目を通すと、
『私、この町に来て本当に良かったと思うんです』
離ればなれになる直前、暗闇に包まれた部屋の中であの子がそう言っていたことを思い出す。この写真群を見ていると、あの言葉が真昼の心をそのまま切り取ったものなのだということがよく分かった。
真昼はよく食べ、よく遊び、よく笑う。とても
――そう再確認してしまう程度には笑顔に溢れた画像ファイルが、ある日付を越えた瞬間から途端に
「!?」
「……!」
そこに写っているのは、学校の教室で席に
「これは夕くんと会えなくなった次の日の写真みたいね」
言いながら画像に
「あ……あの真昼が、こんなに落ち込んでいたのか……?」
驚愕した様子の真昼父に、明さんが「そうね」と頷く。
「夕くんと会えないのがよっぽど
「……!」
「でも夕くんが気を回してくれたおかげでどうにか持ち直したんですって。ね、夕くん?」
「え? い、いえ、気を回すってほどのことをしたわけじゃ……」
頬を
「……ここに写っている食事も
「は、はい。その……真昼はすごく頑張り屋なので、たまに不必要に自分を追い込もうとする
「根を詰めすぎないように……か。……君はそれで良かったのか? 真昼は君と一緒にいたいがために試験勉強を頑張っていたんだぞ?」
「その気持ちはもちろん嬉しいんです。だけどそれ以上に――俺は試験の結果なんかより、真昼がいつも通り元気に笑ってくれていることの方が大事なんです。俺のために無理するあの子の姿なんて見たくない」
なぜなら俺が心を奪われたのは、あの子が浮かべるお日様のような笑顔だから。たとえどんなに賢くとも可愛くとも、性格が良くとも器量が良くとも――そこにあの笑顔がなければ、俺は彼女と恋に落ちることはなかったから。
「……そうか。……君はどこまでも、目の前にいるあの子のことを見ているんだな」
そんな俺の言葉がトドメになったかのように、彼女の父親は一度きつく目を
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