第三八〇食 恋人たちと最後の戦い⑨
自身の携帯端末を取り出し、液晶画面を操作した
「か、母さん? これは一体……」
どうやら
「この一年間の真昼の写真だけを集めたファイルよ。全部でざっと五〇〇枚くらいかしらね」
「ごっ……!?」
「なっ、なんだそれは!? そんなものがあるなんて聞いてないぞ!?」
「当然でしょ、言ってないもの」
悪びれもしない真昼母に対して「なんでだ!?」とツッコミを
「ご、五〇〇枚って……お母さん、一体どうやってそんな数の写真を手に
「ええ、もちろん。去年の四月頃から今月までの一二ヶ月間分、丸々入ってるわ」
どこか自慢げな彼女に俺は頬を引くつかせる。ちなみに俺は真昼の写真なんて両手の指で収まる程度の枚数しか持っていない。真昼はあれでも現代っ子なのでわりと
いや、というかそれを
つまりこの中に入っている写真は真昼以外の誰かから提供された可能性が極めて高いわけだが……。
「これは全部、
「あ、
また意外な名前が登場した、と言いかけたところで俺はふと思い出す。そういえばたしかに文化祭の時、明さんと赤羽さんは連絡先を交換していた。真昼が俺に告白したことを明さんがいち早く
「文化祭の日以来、定期的に纏めて送ってきてくれてるのよ。正確には亜紀ちゃんが自分で撮った写真だけじゃなく、お友だちが撮影したものもあるみたいだけれどね。面白い写真がたくさんあって
ウキウキした様子でファイルを開く明さんに、嫌な予感を覚える俺。この人が「面白い」と言うということは……。
「ほらこの写真とか。白い砂浜を背景に、とってもよく撮れてると思わない?」
「どれどれ……ッ!? なっ、ななッ……!?」
「(おォいッ!? 海でナンパされた真昼を助けた直後の写真じゃねえか!)」
それは水着姿の真昼に思いっきり抱きつかれる俺がど真ん中に
「この写真もいいわよ。
「ぬおうッ!? や、
「(花火大会の時の写真!? しかも花火見てはしゃいだ真昼が跳ねてるとこをタイミングよく撮ってるせいで若干浴衣がはだけて見えるやつッ!)」
最悪なのはそんな真昼を一歩後ろで見ている俺の横顔が若干ニヤけていることだ。おそらくは一週間ぶりくらいに会った彼女のはしゃぎっぷりを見て
「あとはこの写真とかどうかしら? 真昼が可愛いサンタの衣装――から着替えようとしているところを更衣室で撮った写真」
「家森君ッッッ!?」
「(いやこれに関してはもはや俺なんも関係ねえしッ!?)」
おそらくクリスマスバイトの時に
「あ、せっかくだからこの三枚、
「絶対しませんからッ!? というかそれ以前に送ってこないでください!?」
「はい、今送ったわ」
「早ッ!? しかも無駄に
「あら、むしろあの子なら恥ずかしがりつつも喜ぶと思うけれど?」
「なんか普通に想像出来る自分が嫌だッ!?」
「おい家森君、君はやっぱり真昼をそういう目でしか見ていないのかッ!? 失望したぞ、やはり君に娘は任せておけんッ!」
「振り出しに戻っちゃったんですけど!? なにしてくれてんですかお母さんッ!?」
冬夜氏に胸ぐらを掴まれてガクガク揺さぶられながら叫ぶ俺。ほんとに何してくれてるんだよ明さん、ここまでの俺と真昼の努力が水の泡じゃないか!
だがしかし――彼女も考えなしにこのファイルを俺たちに見せたわけではなかったらしい。
「本当に二人に見てほしいのは、これより後の写真よ」
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