第三六六食 恋人たちとお弁当①
★
久し振りに二人一緒に
「お……思ったよりキツッ……!?」
「で、ですね」
出発から約三時間後。何台かの自動販売機が設置されているだけの
「考えてみればまったく同じ姿勢でエンジンの振動を受け続けてるんだから、疲れもしますよね」
「だな……もちろん慣れない道だからってのもあるだろうけどさ」
歌種町から真昼の実家までは電車でおよそ五、六時間は掛かるらしい。ナビアプリの記載を信じるならば自動車で向かった方が一時間ほど早く到着するようだが、それでも相当な距離だ。俺の実家から歌種町までがおよそ二時間なので、片道だけでも俺の実家に行って帰る以上の時間と体力を要する計算になってしまう。ちなみに現在時刻は午後一二時過ぎ、到着予定時刻は一五時頃となっている。
「まあのんびり行こうか。別に急いでるわけでもないんだしな」
「は、はい」
俺の言葉に、真昼は少し緊張した様子で頷いた。これから父親と話をするからか、それとも俺とこうして二人きりで話すのが久し振りだからか……いや、多分その両方なんだろう。正直なところ俺も同じなので、その気持ちは分かる。
「(だって真昼の親父さん、厳しそうだもんなあ……俺みたいなのが〝
出発する前に真昼には母親――
「(っていかんいかん、俺まで緊張してどうする! 真昼が余計に不安になっちまうだろ、馬鹿!)」
俺はブンブンと
「そ、そうだ真昼。ちょうどいい時間だし、ここらで昼飯にしないか?」
「えっ、ごはんですか!?」
一瞬でパッと表情を輝かせた真昼に、俺は思わず頬を緩ませてしまう。相変わらず、本当に分かりやすい子だ。しかし続いて彼女は「あれ?」と気付く。
「でもこの辺りって
「ん? ああ、そうだな」
俺たちが今いる場所は
「それじゃあどこか近くにお店がないか探しましょうか?」
「いやいや、必要ないよ。昼はここで済ませられるから」
「で、でも私、お昼ごはんなんて持ってきてないですよ? 今日は駅の購買で済ますつもりだったからお弁当も作ってませんし……」
「フッフッフッ……真昼よ、弁当作りは君の専売特許ってわけじゃないんだぜ?」
「え?」
バイクのシート下に入れておいたリュックサックを引っ張り出しながら不敵に笑う俺に対し、真昼は不思議そうに首を傾けた。
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