第三五二食 JK組とコンビニ弁当②
「ねーねーひよりん、どう思うー……?」
「……」
勉強会開始から数時間が経過し、時計の短針が頂点からやや右に傾き始めた頃、ひよりの耳元で
最初に目についたのは、部屋主の勉強量を証明する学習机回りの惨状だった。各教科の教科書やノートはもちろん、数学や英語の参考書類、赤シートで消えるように暗記したい部分だけを同色のペンで記入して作ったルーズリーフ等が、机の上やその周りにどっさりと積み上げられている。
半年前のように大量の衣類が散らかっていたりするわけではないものの、
最近は料理も出来ていないのか、台所に使用した
否、なにも食生活に限った話ではない。あの青年と出逢い、恋慕い、
「……
目の下に小さな
そして欠けた部分を埋め立てんとばかりに、必要以上に勉強へ打ち込むことで自己を
「(それだけ
おそらく真昼は父親に課された
本来であれば、試験までの残り期間は日々の授業をしっかりと受けていればいいくらいだろう。だがこの不器用な少女は使命感と危機意識に
「……
ひよりは他二人へチラリとアイコンタクトを送りつつ、止めどなく数式と格闘し続ける真昼に声を掛ける。
「不安なのは分かるけど、だからってそんなに張り詰めてたら
「そーそー。身体壊したりしたら元も子もないしー、おにーさんからも『頑張りすぎるな』って言われたんでしょー? もうちょっと気楽に気楽にー」
「そうよまひる、少しは私を見習いなさい? ほーら、こんなにサボってるでしょ?」
「
亜紀と雪穂も続けて言うが、真昼は「うん……」と生返事をするだけで手を止めようとはしない。試験まであと一〇日もあるのに今からこの調子となると、試験が始まる頃にはヘトヘトのガス欠状態になっているのではなかろうか。
「(睡眠不足に
そこまで考えてノートを閉じると、ひよりは
「……いい時間だし、ちょっとお昼ご飯でも買ってくるよ。皆はここで勉強してて」
「え? ひよりちゃん一人に行かせるのは悪いし、それなら私も一緒に……」
こんな時でも人の良さは変わらない真昼に内心で
「私一人で十分だよ。それに――すぐ近所に美味しいお店、知ってるからさ」
そう言って部屋を後にした彼女は、二〇五号室の玄関ドアを
無論、そのまま突き進んだところで行き止まりにぶつかる以外はなにもない――そう唯一、その部屋があることを除けば。
「不安的中でしたよ――家森さん」
インターフォンも押さずにドアの前でそう告げるとわずか数秒後、二〇六号室のドアが内側からゆっくりと押し開けられる。
「やっぱりそうか……
そう呟きながらそこに立っていたのは、もちろんこの部屋の
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