第三五四食 友人たちと朝の日没①
★
近寄るだけで
その発生源は、つい今しがた登校してきたばかりだというのに一年一組の教室中央で机に突っ伏している一人の少女。普段はそのお日様のような笑顔で
「ねえ、
「わ、分かんねえよ。俺が来た時にはもうああなってたし」
「もしかして具合悪いのかな? 保健室に連れてってあげた方がいいんじゃない?」
「具合が悪そうっていうより〝やつれてる〟って感じに見えるんだけど……」
教室内の一点から半径三メートル以上の距離をおいたままヒソヒソと話す周囲のクラスメイトたち。しかし文字通り
生徒たちの中には中等部時代から真昼のことをよく知っている者もいたが、彼女がこれほど消沈している姿を見せたことは過去一度だけしかなかった。そしてムードメーカーが黙り込んでしまうと、ただそれだけで空気が
「おはよう……って、いったいなんなのよ、この騒ぎは?」
「あ、
「ちょうどいいところに! ねえ、なんとかしてよ!」
「え……な、なにをよ?」
この緊迫した空気を打ち払うべく
「さてはあの子、あの人となにかあったのね?」
「あの人……って?」
「なんでもない。でもいいわ、私に任せなさい」
ドン、とその薄い
その堂々たる立ち振舞いに周囲の期待が高まる中、雪穂は真昼の前の席へ横向きに腰掛け、
「おはよ、まひる」
「雪穂ちゃん……おはよう……」
「どうしたのよ、なんか暗いじゃんか。もしかして
これこそが雪穂が五秒で考えた奇策〝
「……ただ喧嘩して会えないだけなら、どんなに良かっただろうね……」
「……え? ち、ちょっ……まひるサン!?」
想像を遥かに超える
そしてすっかり首を縮めてしまう眼鏡少女に対し、カラカラと笑い声を上げたのは友人のゆるふわ系美少女だった。
「あははー、なにやってんのさ雪穂もみんなもー」
「あ、
「まひるんの機嫌が悪い理由なんて考えるまでもなく分かることでしょー? まったく、みんなデリカシーってものがないんだからー」
「は、はあ? なによ、じゃああんたには理由が分かるっていうわけ?」
雪穂が問うと彼女――亜紀は「決まってるじゃーん」と頷く。
「まひるんが不機嫌な理由、それはズバリ
「違うわよ、バカアキ」
男子の目も
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