第三二九食 リア充たちとチョコ作り②
外から見ればおんぼろアパートのうたたねハイツと大差ないものの、室内はリフォームをされているおかげであちらよりもずっと清潔な印象を受ける。新築マンションのようにオートロックやモニターフォンなどの設備がない分、本来は女子が一人で暮らすには不向きかもしれないが……同年代の男連中を視線一つで黙らせる千鶴に限ってそんな心配は不要だろう。
そしてそんな千歳家に踏み
「うわー、部屋ん中、めっちゃくちゃかわいー……」
「お、おい、あんまジロジロ見てンじゃねえぞ、コラ」
「見て雪穂ちゃん! キッチンもすっごくおしゃれだよ! しかもこれ、こないだお兄さんが欲しいって言ってたセラミック加工のフライパンだ!」
「お前はお前でどこに興奮してやがンだ、真昼」
――お
しかし実際に千鶴の部屋は、普段の彼女の言動からは想像も出来ないほど女らしく
特に真昼が目を付けたのは台所。ピカピカに手入れされた食器棚に始まり、使いやすいように整頓された小型のキッチンワゴンや美しい
「ち、千鶴さんっ! ぜひ今度、私とお買い物に行きましょう!」
「あ、私も私も。千歳さんと一緒に行ったらセンス良いの選んでもらえそうだもんね。……あの
「なっ……!? ま、まさか〝みじんぎりオニオンくん〟のこと!? あんなに可愛いのに!」
「どうでもいいことで揉めンな!? つーかなんでテメェら遊びに来た友だちみたいに楽しんでンだよ! チョコ作りに来たンじゃねェのか!?」
……そんな一幕があった後、ようやく主目的に立ち返った女子高生たちを連れてキッチンに立つ千鶴。壁に掛けてあったエプロンを装着した彼女は、二人が持ち込んだチョコレートを取り出しながら問うた。
「で? ヤモリと
「ハイッ! 美味しそうなチョコを作りたいです!」
「はーい、とりあえず
「お前らどっちもフワフワじゃねェかッ! 具体的にどんなチョコを作りてェか聞いてンだよ!」
「そんなこと言われても、私もまひるもチョコ作ったことないんですもん」
「い、一応自分なりに下調べはしてきたつもりなんですけど……」
頭の後ろで腕を組みつつ唇を
「あのなァ……トリュフもチョコケーキも大きく
「うっ、それもそっか……ねえ、まひるが調べたチョコになんか良さそうなのあった?」
「うーん、やっぱり人気そうだったのは生チョコとかトリュフかなあ。あとはチョコクッキーとかブラウニーとか、フォンダンショコラとか?」
「ふぉんだん……ってどんなやつだっけ?」
「簡単に言やァ中に
「うへー、美味しそうだけど作るの大変そー……もうちょっと簡単なのがいいな。一時間くらいでぱぱっと作れそうなやつ」
「お前、
頭を使って悩むより実際に手を動かした方が手っ取り早いだろうと判断した千鶴がそう告げると、二人は威勢よく「よろしくお願いします!」と返事をした。
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