第三二八食 リア充たちとチョコ作り①
★
まず恋を経験したことのない彼女には、バレンタインチョコを渡すべき
ちなみに実はバレンタインシーズンを迎える
次に、本命チョコを渡す相手が居ないなら友だち同士でチョコレートを交換――いわゆる友チョコ――すればいいわけだが、そもそも両親から自炊を禁じられていた真昼は、当然バレンタインチョコを手作りすることも出来なかった。
友だちが用意してくれるのは一生懸命手作りし、不格好ながらも可愛らしいラッピングが
とある親友の少女は「どうせあんたの手作りより市販の方が一〇〇倍美味しいんだからいいんじゃない?」などとドライかつヒドイことを言っていたが、バレンタインとはそういうものではない気がする。きっと下手だろうが
そんなわけで真昼のバレンタインに関する記憶は、チョコレートの甘さではなく思い出の苦さと涙のしょっぱさによって
今の彼女が考えるのは〝いかに美味しいチョコを作れるか〟、そして〝
「……話は分かったんだがよ」
その時、キリリとした表情で己の悲しき
「なんでテメェら、オレの家に来てやがンだ……?」
染め抜かれた金髪にシルバーのピアス、そして部屋着と
そんな千鶴に「いいじゃないですか!」と言葉を返したのは真昼ではなく、その隣で大量の板チョコが入ったビニール袋を
「だって千歳さんはケーキ屋でアルバイトしてますよね!?」
「あァ」
「ケーキってお菓子ですよね!?」
「あァ」
「私とまひるが作りたいチョコレートもお菓子!」
「あァ」
「つまり千歳さんから教われば美味しいチョコが作れる!」
「いやそうはならねェだろ」
ものすごく安直な理由でやって来た女子高生ズに、千鶴は真顔でツッコミを
「テメェらもウチの店でバイトしてたンだから知ってンだろ。オレの仕事はあくまで接客で、ケーキ作ってンのは店長とかキッチンのスタッフだ。教わりたいならあっちに行きやがれ」
「えー、だって店長さんたちはお仕事中だろうし、迷惑になるじゃないですか」
「急に家まで来てる時点でオレにも迷惑かかってるっつンだよ……! つーかテメェら、どうやってオレの家の住所調べやがった? 教えたことなんざねェはずだぞ」
「
「
顔が広いどこぞのイケメン女子大生に
「ご、ごめんなさい、千鶴さん。私も雪穂ちゃんもバレンタインチョコを手作りしたことがないんです。でもお兄さんと
「……まァ、アイツらに渡すモンだからな」
「はい……だから私たちが頼れるのは千鶴さんだけなんです。お願いします、千鶴さん。私と雪穂ちゃんに美味しいチョコレートの作り方、教えてください!」
「教えてください!」
「ぐっ……」
目を掛けているお気に入りの少女と、短期バイトの際になにかと手を焼かされた分、それなりに可愛がってはいる眼鏡少女。そんな二人から同時に頭を下げられてしまえば、元より年下に甘い千鶴は強く断ることが出来ない。ついこの前、彼女たちの友人であるゆるふわ系の少女と話したばかりということも手伝って、金髪女子大生はやがて大きな溜め息を
「……上手く教えてやれる保証はねェからな」
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