第三二三食 女子高生と二人称①
★
「おっひる~、おっひる~、ふんふふんふふーんっ♪」
中に入っているのは至ってシンプルなピンク色の二段弁当――と、梅と鮭フレークのおにぎりが入ったアルミホイルが一つずつとカットフルーツが入ったタッパー、そしてデザート代わりのチョコチップメロンパン。ある意味通常運転な彼女が食事を始める中、それを対面で見ていた眼鏡の女子高生が半眼でぼやく。
「なんでそんだけ食べて太んないのよ、あんたは……」
「? 今なにか言った、
「別に。なんか機嫌良さそうだなーって」
「あっ、分かる? えへへー」
あっという間に
「実は最近、お兄さんにも同じお弁当を作って渡してるんだ。『やっと綺麗に美味しく作れるようになってきたから食べてみてくださいっ!』って」
「へえ、あれから上達したんだ? まひるってほんと頑張り屋よね。私も
「あはは、私も最初お兄さんに似たようなこと言われたかも。私はお料理大好きだし、自分のお昼ごはんのついでだからって言って納得してもらったけど」
「ふーん……で? それを食べた
「うん! いつも残さず食べてくれるし、お弁当箱を返してもらう時に『今日も美味しかったよ、ありがとう』って! うぇへへへへぇっ!」
「笑い方よ」
赤くなった頬を両手で押さえ、にへにへと思い出し笑いをする少女。くねくねと身を
「実際に片想いが叶うと急に
「そりゃ、この子は〝恋に恋する〟ってタイプでもないでしょ」
そんな真昼の横で口々に言うのは
彼女たちは現在、近くの机を四つくっつけてそれを囲うように座っていた。椅子が二つ
「ところで、ちょっと気になったんだけどさー」
席が空いているのをいいことに、その内の一つに足を投げ出している亜紀が口を開く。
「まひるんって、付き合うようになってからもおにーさんなんだねー?」
「え? どういうこと?」
聞かれた意味が分からず真昼が問い返すと、代わりに雪穂が「ああ、言われてみれば」と言葉を引き継ぐ。
「まひるって今でも家森さんのこと〝お兄さん〟って呼んでるよね、下の名前とかじゃなくて。なんでなの?」
「な、なんでと言われても……」
改めて
「でもさー、〝お兄さん〟ってなーんか距離ある呼び方だよねー」
「そ、そうかなあ?」
「そうでしょー。だってそれ、おにーさんがまひるんのことを〝お嬢さん〟って呼んでるようなもんでしょー?」
「うっ……!? そう言われるとものすごく距離があるような気がしてきたかも……」
「というか普通に〝夕くん〟とか〝夕さん〟でいいっしょ。なんで
「い、いや、だからなんでと言われても……」
「けどこれからもずっと〝お兄さん〟のままでいいわけ? たとえば将来、家森さんと結婚することになったりしたらどうすんのよ?」
「ケッコ……!?」
「実現したとしてもどれだけ先の話なのよ、それ」
「そんなの分かんないじゃん、一応家森さんもまひるももう結婚出来るトシなんだから。そんでこのままじゃあんた、子どもが出来ても夫のことを〝お兄さん〟って呼ぶ奥さんになっちゃうのよ?」
「なにその超ややこしい家庭ー」
「さ、流石にそうはならないと思うんだけど……」
「だからそんなの分かんないじゃんか。まひるあんた、もし明日家森さんから求婚されたらどうすんのさ?」
「するならせめてもう少し現実的な仮定にしときなさいよ……」
「え、『末永くよろしくお願いします』?」
「
ひよりのツッコミを聞き流しつつ、真昼は頭の中でうーんと
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます