第二九〇食 仔犬少女と小悪魔少女①
数学、現代文と順調に宿題を終わらせていき、時計の短針が頂点を通りかかる時分。古文の途中で机に突っ伏してしまった
「どしたのー、まひるん?」
「う、ううん、なんでもないよ。ほ、ほらっ、続き続き!」
「……?」
なんだろうと亜紀が首を傾けているとその一分ほど後、壁の薄いアパートの隣室からがちゃがちゃと鍵を回すような音が聞こえてきた。それと同時に真昼が何に反応したのかを理解し、「ははーん?」と
「ねーねーまひるん、おにーさん帰ってきたみたいだねー?」
「へ、へー、そう?」
ニヤニヤ見つめながら言ってみると、真昼は
だが、この小さい悪魔のような友人がそんな
「いやあー、おにーさん帰ってくるの早いねー? 今日は大学、もういいのかなー?」
「き、今日は午前中で終わりの
「へー、そうなんだー。ってことはまひるん、お昼からはおにーさんと一緒に過ごせるんだねー? んふふー、オジャマだろうし私もう帰ろうかー?」
「……っ! い、いいよ、お兄さん今日アルバイトの日だからまた出掛けなきゃいけないだろうし……それに亜紀ちゃんの宿題だってまだ終わってないでしょ?」
「え~っ、まひるんってば超友だち想い~っ! ……でもいいのー? 本当はおにーさんに『寂しかったですっ!』って抱き付いたりしたいんじゃないのー?」
「そ、そんなこといつもしてないもんっ!? もうっ、亜紀ちゃんは私たちのことからかいたいだけでしょっ!? 今日は宿題が全部終わるまで帰さないんだからねっ!」
「やーん、まひるんってば
がるるっ、と警戒を
『真昼ー、ただいまー。どうかしたのかー?』
「! お兄さんっ、おかえりなさいっ!」
「のわあっ!?」
青年の声が聞こえた瞬間、パッと顔を輝かせた真昼が
『今の声……ひょっとして誰か遊びに来てるのか? だとしたらごめん、邪魔したな』
「気にしないでくださいっ! 遊びに来てるのは亜紀ちゃんなのでっ!」
「なにその『亜紀ちゃん相手なら気遣わなくていい』みたいな言い方ー」
『あー……そ、そっか、
「なんでおにーさんも若干嫌そうな言い方すんのー? このカップル、私に対してちょっと失礼すぎないー?」
後ろから聞こえる亜紀の文句などどこ吹く風で、真昼は壁に両手をついて喜色満面の表情を浮かべている。彼女に
『二人はもう昼飯食べたのか? もし良かったら二人の分も一緒に作るけど』
「そ、そんなっ!? それなら私が作りますよっ、お兄さんは大学もお仕事もあるんですからっ!?」
『いいっていいって、大した
「いえ、そういうわけじゃないですけど……あ、亜紀ちゃん、お昼どうする?」
「んー、私もまたおにーさんのご飯食べたいなー。前に作ってもらったハンバーガー美味しかったしー」
『了解、赤羽さん。それじゃあ出来たら呼ぶよ。少しだけ待っててくれるか?』
「わ、私もお手伝い――」
『いいから。真昼はお客さん来てるんだし、こういう時くらい俺に働かせてくれよ』
「はあぁん、お兄さぁん……!」
優しい言葉を掛けられ、壁に向かったまま顔を
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