第二六七食 女子高生と初詣(恥)
★
「や、
「わあっ!? ひ、ひよりちゃん、声が大きいよっ!」
「あ……す、すみません」
一月二日の朝。驚きのあまり場にそぐわない大声を上げてしまった
「ど、どういうこと? 一体なにがどうなったらそんな急展開になるのよ?」
「え、えーっと……」
一段階ボリュームを下げた声で問われ、真昼は照れたような、あるいは困ったような表情で頬を
「だって
「私の知らないところでそんなこと言われてたの!?」
「あと
「ただの悪口っ! も、もしかしてひよりちゃんもそう思ってたの!?」
「いや、私は別に……まあ見ててもどかしいな、さっさとくっつけばいいのにとは思ってたけど」
「思ってたんじゃない! 直接言われなかった分、余計に本音っぽくてショックなんだけど!?」
涙目で
「……それで? どうやってあの家森さんにそこまで言わせたのよ? あの家森さんに」
「な、なんで二回も言うの? えっと……これ、あんまり大きな声では言っちゃいけないと思うんだけどね……?」
「大きな声で言えない……? ハッ……あ、あんた、まさか……!?」
「ちょっと待って、なんで引くのひよりちゃん!? 一体何を想像してるの!? 違うよ!? たぶんひよりちゃんが想像してるような意味じゃないよ!?」
「え? とうとうバカアキたちの言葉を
「違うよッ! ……か、完全に違うとまでは言い切れないかもしれないけど……」
嘘の
「み、見損なったわよ
「だ、だから違うんだってば!? たしかにお、押し倒しちゃったりはしたんだけど、でも別に変なことはなにもしてないし、されてないんだよ!」
「本当に!? 本っ当になにもしてないしされてない!?」
「うっ……し、してないよ! ……あと一歩でしそうになってたのはぼんやり覚えてるけど」
「今ぼそっとなんて言った!? あ、あと一歩のところまで、って……ぬ、脱がされはしたってこと!?」
「へ? 脱がされ……? ……。……ッ!?!? ちちち、違うよっ、『しそうになった』ってそういう意味じゃなくてっ!? というか私とお兄さんでどんな想像してるのさ、ひよりちゃんのえっち!?」
「だ、誰がよ!? あんたが自分で言ったんでしょ、『お兄さんとしそうになった』って!?」
「だ、だからそれは――! ……って、あ」
言い合っているうちにどんどん声が大きくなっていた二人がふと気付くと、周囲の参拝客たちがこちらをチラチラ見ながらヒソヒソ話していることに気付く。そして「ちょっとやだー……」「お兄ちゃんとだってー……」と漏れ聞こえてくる声が、さらにとんでもない誤解を受けていることを教えてくれる。
文字通りの
「な……なんかごめんね、ひま……」
「謝らないでっ、余計に恥ずかしくなるからあっ!?」
ひよりに謝られるという地味に貴重な体験をしつつ、真昼は全力で境内から逃げ出すのであった。
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