第二一五食 ランチボックスと少女の想い②
★
「ははっ、それで昨日は急に『
「す、すみません、お兄さん……」
翌朝、事情を聞いた
「いやいや、そんなの全然気にしなくていいよ。というか前から言ってるけど、普段からもっと
「うっ……そ、そんなハッキリ『どうとでもなる』って言われちゃうと、それはそれでちょっとショックです……」
「めんどくさっ」
じゃあなんて言えば満足するんだよ、と青年がもう一度同じように笑うのを見て、真昼は顔を赤くしながら小さく
「……私の
「ん? どうかしたか、真昼?」
「なんでもないですっ! 今ちょっとだけ怒ってますっ!」
「どっちなんだよ」
夕は自分のことになると途端に面倒くさがりになる
コンビニ弁当の
「でもアレだな、
「む……わ、私だってお兄さんに渡すお弁当は私の力だけで……」
「いや、なんでちょっと張り合ってるんだよ。それで? 冬島さんは上手く弁当作れそうだって?」
「あ、はい。今朝早起きして作って、もう完成してるみたいですよ。『ばっちし自信作!』って言ってました」
「ははっ、そりゃ頼もしいな。あの子、たまに自信過剰そうなとこがあるから若干心配でもあるけど」
「ふふ、今回は大丈夫ですよ。なんといっても昨日、私たちがしっかり丁寧に教えたんですから!」
「あの不器用女子高生が、今や誰かに料理を教えられるようになっただなんて……
「ふっふーん! ……は、半分くらいはひよりちゃんのおかげでしたけど……」
「駄目じゃねえか」
得意げに胸を張ったかと思えば、すぐに背中を丸くして人差し指を突っつき合わせる真昼に半眼でツッコミを入れてくる夕。そして相変わらず嘘が吐けない少女が情けない声で「だ、だってえ……!」と言うのを聞いて、プッと小さく吹き出した。
「じゃあ冬島さんは今頃、青葉に弁当渡しに行ってるのか?」
「あ、いえ、そのことなんですけど……実は雪穂ちゃん、お兄さんから青葉さんに渡してもらえないかって頼んできてるんです」
「は、はあ? な、なんでそうなるんだよ?」
「な、なんか『美味しく出来た自信はあるけど、
「ええ……?」
真昼と雪穂のメッセージ履歴画面を見せられて困惑する青年。
「いや、まあ気持ちは分からんでもないけど……でもそういうのって自分で渡すから意味があるんじゃないか?
「私もそう言ったんですけど……『私は
「『してくれてもいい』じゃないよ、俺が嫌だわそんなん。なにをどう血迷ったら俺が
「『蒼生さんならドン引きしつつも食べてくれると思う』とも書いてあります」
「『そっか、なら安心だ』って言うとでも?」
しかし、文面から
「……分かった」
やがて、青年が一つ頷く。
「真昼、たしか冬島さんってそこそこ近所に住んでたよな?」
「え? あ、はい。学校を挟んだ向こう側なので通学路とかは違いますけど、歩いて二〇分くらいのところに……」
「じゃあそうだな……八時くらいにこっちに来てくれるように連絡してもらえるか? それならたぶん間に合うから」
「間に合う……って?」
真昼が不思議そうに首を傾けると、夕は
「渡しに行くのが怖いなら、受け取らせればいいのさ」
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