第二〇三食 家森夕と二人乗り②
★
「ふーん? それで今日は徒歩通学になったんだ?」
「ああ。原付から中型になったから、大学の駐輪場使うなら再申請しろって言われてな」
二日後の昼休み。俺は
「まあ家に帰ったところで一人孤独に飯を食うだけだしな……」と思ってしまうのは、隣人の少女と過ごしたこの半年間、めっきり一人で食事する機会が減ったせいなのかもしれない。
「あれ? そういえばうちの大学、駐輪場の申請が通りにくいって聞いたんだけど……
「ん? 普通にいくつか
「あー、そういえばそんな話だった気がするね」
無論、原付――自動車免許さえあれば乗れる――での通学を希望する学生の方が圧倒的に多いのだから、仕方のないことではある。俺は例の金髪ヤンキー女子大生が不機嫌そうに舌を打つ姿を思い浮かべつつ、心の中で「ドンマイ」と励ましの言葉を贈った。
「それで
「いや、俺の分のヘルメットは高校の頃使ってたやつを持ってきたからな。調べてたのは
「真昼ちゃんの?」
「ああ。中型に乗り換えるって言ったら『二人乗りしてみたい』って話になってさ。結局今のところ、あんまりいいのは見つかってないんだけど……」
「へえ……真昼ちゃんにお願いされて、ねえ?」
「おい、ニヤニヤするな」
明らかに含みのあるニヤニヤ笑いを近付けてくるイケメン女子大生の顔を腕で押し
「マヒルってあの子だろ? 夕が大学祭の時にデートしてやがった――」
「え、もしかしてあのめっちゃ可愛い子か!? あんな子にそんなお願いされるとか……! ……あー、
「本人の目の前で
頭の後ろで手を組みながらサラッと言ってくる友人に半眼でツッコミを入れる。そういや、大学祭でこいつらに見つかった時は大変だったけな……。
「いいよなー、女子高生の彼女とか……なんで家森がそんな羨ましい展開になるんだよ、俺の方が一〇〇倍カッコイイのに」
「自分で言うな。というか彼女じゃねえって言ってるだろ」
「ええ~? ホントに彼女じゃないのか~い?」
「
「でも女子高生と
「安心しろ、お前は元からだいぶおかしいから」
「
「お前と
大袈裟に羨ましがる友人の一人をため息で受け流しつつ、俺は改めて授業の合間に検索していたバイク用品のサイトを開く。これでもライダーの端くれなのでライダースウェアや有名メーカー産のメット、ホルダーなどが並んでいるのを見ているだけで心が踊るものの、残念ながら真昼に良さそうな品は見つからなかった。
そもそも
「(悪いけど一回、真昼を連れて
原付のメンテナンスも含め、実家にいた頃から世話になっている地元の工務店でやってもらっていた
「とりあえず大手なら安心できるか……」と口内で呟きながら携帯の液晶画面をスクロールさせていると、隣でそれを見ていたらしい青葉が人差し
「夕がなにで迷ってるのか知らないけどさ、バイクのことならそれこそ千鶴ちゃんに聞いてみたらいいんじゃない?」
「……あ」
そうか、その手があったか。
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