第一九四食 旭日真昼と大人っぽさ
★
その日、学校から帰った少女は、相も変わらず衣類が散乱している部屋のベッドにごろんと横になっていた。
手の中にあるのは帰宅途中に珍しく本屋に立ち寄って購入してきた一冊の雑誌。〝意中のカレもイチコロ!? 魅惑のデート特集〟という大袈裟な見出しの通り、内容のほとんどが中高生向けの恋愛術
もちろんこの手の雑誌に書かれているような〝恋愛術〟など、あくまで話のタネとして楽しむ程度のものであり、
「うーん……『ちょっとした可愛い仕草で男心をくすぐる』、かあ……」
一般には〝あざとい〟と表現される行為が列挙されている
「『呼び止める時に服の
ちなみにいずれも少女が過去、隣人の青年に対してしたことがある仕草ばかりなのだが……残念ながらこの天然少女がそれを自覚することはなかった。
「(
それは「無理をしなくていい」という意味であり「努力しなくてもいい」という意味ではないと、真昼は正しく理解している。隣人の彼を――
ゆえにこうして指南書――と呼ぶにはあまりにも安っぽいが――を購入してきた。しかし同時に、
「(そういえば、お母さんが『
よく周りから「あんな綺麗なお母さんがいて羨ましい」と言われる母親のことを思い出す。
元より
「(でも、大人っぽくなるにはそういうのが大事なんだよね……?)」
青年が
今、真昼の近くで大人っぽい人物と言えば、それこそ
だが、ここで真昼はさらに
「(うーん、格好だけ考えても駄目なのかな……)」
真昼から見て蒼生や千鶴のどこが大人っぽく感じるかを考えてみると、やはり思考や行動の部分が大きいように思える。さっきの雑誌ではないが、大人っぽい仕草や振る舞い、とでも言えばいいのだろうか。
どれほど外見を見事に
「(大人っぽくなるためには見た目よりも中身……? でも、どうやったら中身が大人っぽくなるんだろう……?)」
結局は堂々巡りだった。理想だけ先にあっても、そこに達するための手段を持っていなければ永遠に辿り着くことなど出来ない。
「(私もひよりちゃんみたいに剣道をやればいいのかな……? で、でもお兄さんに好きになってほしいから剣道を始めるって、ものすごく不純な気がする……)」
まるで茶菓子を食べたいから
「(もっとこう……私やお兄さんと関係があって、それでいて大人っぽくなれるようなものが……あっ)」
少女がなにか
雑誌を
「(またお母さんから服が届いたのかなあ……? しばらく
既に足の踏み場もないほど散らかっている衣類に一度視線を落としてから、真昼は少し
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