第一八三食 旭日真昼と初デート①
様々な者たちの思惑が
一年生にとっての
そして一年一組にも似たような空気が
「んへへへへへぇ……」
「
「うっさいわ!? 誰がキモいのよ!?」
机に
「雪穂ってば、この一週間がずーっとニヤニヤしちゃってー……
「お前わざと言ってるだろ。ふっふーん、まあいいわ! 今の私は世界一幸せな女の子ですもの!
「うわー……自分に恋人が出来た途端、周りを見下すタイプの人だー……」
「恋人にフラれた後、手元に誰も残らなくなるタイプね」
「冬島、お前ほんとそういうとこだと思うぞ」
「な、なによアンタら!? い、いいじゃん、今くらい
高笑いをしたところに亜紀、ひより、
「でもまあ、好きな人と一緒になれたんだからおめでたいよな。相手も女の人っていうのは驚いたけど……」
そう言いながら弁当を一口食べると、くすんだ金髪の男子生徒はちらりと自分の隣に座っている人物に気まずそうな視線を向けた。そこには、
「……おいユズル。ユズル!」
「――ハッ!? な、なんだリョウ、耳元でいきなり大声を出すんじゃない」
「ユズルがぼーっとしてたからだろ……お前もいつまで落ち込んでるんだよ」
「べ、別になにも落ち込んでなどいない!」
取り
「……」
彼らが注視する先には、窓際の一席でぼんやりと空を眺めている女子生徒・
「え、えっと……まひる、まひるー?」
「……へっ? あ、す、すみませんっ!? ど、どこの問題ですかっ!?」
「いや、もう授業終わって昼休みなんですけど……ついでにそれ、一時限前の授業の教科書だし」
あわあわと数学の教科書をめくる真昼に、雪穂が半眼になってツッコミを入れた。この六人組の中でも一番の優等生であるはずの彼女が文化祭以降、目を離す
「どしたのさー、まひるーん? もしかしてあれから、おにーさんと
「うぇっ!?」
全員が心の中で予測していたことを
「おりゃおりゃー、いったいどしたんやー? おねーさんにお話ししてみぃやー?」
「あ、あははっ、くすぐったいよ亜紀ちゃんっ」
うりうりと親父臭い手付きで真昼の細い腰を揉む亜紀に、男子二名が居心地悪そうに視線を逸らす。こういう
「え、えっと……」
真昼は亜紀に抱き締められるような体勢のまま、ぽつりと呟いた。
「私、その……文化祭の時、お兄さんにこ……告白、したでしょ?」
「うんうん」
どこかから眼鏡男子が「かはっ!?」と
「でも……あれから全然、その……き、距離を
「ああ、まひるもお兄さんもヘタレっぽいもんね」
「かはっ!?」
「各方面に対する容赦のない
人に刺さる言葉を吐く時に限って標準口調になるゆるふわ系少女改め銃剣系少女を、雪穂が「少しはオブラートに包んで言いなさいよ」と
「まあ、まひるが宣言通りにガンガンいけるとか、誰も思ってなかったけどね?」
「んなっ!?」
「『この気持ちが恋かどうか分からない』なんて言っちゃってた子が突然『お兄さん私と付き合いましょう、ホラホラ!』とか言えるわけないじゃん。逆に言えると思ってたの?」
「ぐはっ!?」
「どうせ中途半端に本音で話し合ったせいでお互いに意識しちゃって、〝ちょっと手が触れ合っただけで顔を
「ぎゃああっ!?」
「あ、アキ、もうそれくらいにしてあげて……」
全身を言葉の
「お兄さんのことがす、好きだって自覚できたのはいいけど、自覚したらしたで、今度はなにをどうすればいいのか分からなくなっちゃったんだもんっ!?」
「めんどくさっ。なんなの、まひるはステップを踏むごとにいちいち立ち止まらないといけない呪いにでもかかってるの? それとも精神年齢レベルが小二くらいで
「ひ、ひどいっ!? じ、じゃあ亜紀ちゃんが私の立場ならどうするの!?」
「そりゃもちろん一思いに押し倒して
「変なこと教えようとするんじゃないわよ、バカアキ」
保護者の武闘派女子からスパーンッ、と景気良く後頭部を
「まー、手っ取り早く関係を進めたいんなら、ふつーにデートしてみるのがいいんじゃない?」
「で、デート……?」
そのいかにも〝男女感〟のある響きに、さっそく真昼の顔が赤くなる。
「お、お買い物とかならよく一緒に行ってるけど……」
「そーいう親子とか
「て、テヲツナグ……!?」
「いや、そんな未知の文化に
隣人と手を繋いで歩く自分の姿を想像したらしい真昼がぐるぐると瞳の中を回転させる中、亜紀は事態を見守っていた自称・世界一幸せな女の子に尋ねた。
「ねー、雪穂はもう
「んー、そんなデートデートしたのはまだだけど……ちょっとしたごはんとかお出掛けくらいなら、もう何度かね」
「なっ…… つ、付き合ってまだ一週間なのに……!? そ、そんな
「まひる、アンタの中で〝デート〟ってどんなイメージになってるわけ?」
雪穂は両目を
「こないだは
「あ、あっち、って?」
首をかくん、と横に折った真昼に、眼鏡少女はキラリとフレームを光らせながら言う。
「決まってるじゃない――
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