第一六二食 大学生組と後夜祭伝説①
「なにか面白そうなお話をしてるわね、
「んぎゃあああああっ!?」
「!?」
前触れもなく後方からニュッと一人の女の顔が飛び出してきたことで、少女が色気のない悲鳴を上げた。よほど驚いたのかイスごと
そんな娘――
「おっ、おおおお母さん!? ビックリさせないでよ、口から心臓飛び出るかと思ったでしょ!?」
「あら、飛び出さなくて良かったわね。もし勢いよく飛び出してたら
「(笑顔でなんつーグロいこと言ってやがンだ)」
「や、やめてよ!? 私の口から飛び出した心臓が、ちょうど口を開けてた千鶴さんのお口に入ってそのまま
「(『痛い』で済んでたまるか。つーか
ニコニコと血生臭いことを言う母と、その
「千鶴ちゃん、待たせちゃってごめんなさいね」
「いや、別にいいンすけど……」
グロいことを考えさせられたせいで沸き立ってくる吐き気を
「と、というかお母さん、お兄さんとなんの話があったの? まさかとは思うけど、なにか余計なこと言ったりしてないよね……?」
「そんな
「だ、だったらいいんだけど……」
口をもごもごさせながら、一応納得したように頷く少女。オレには詳しいことなんか分からねェが……どうやら雰囲気的に、母親の方は娘がヤモリのことを好きだって知ってるらしいな。ヤモリとの〝話〟っつーのがそれ関連なのかはさておき。
「それでお母さん、お兄さんはどこにいるの? もう体育館で三年生の演劇が始まる時間なんだけど……」
「ええ、
「ほんと!? だ、だったらすぐに行かなきゃっ!?」
「あらあら、慌てちゃって……そんなに夕くんを独占したいのかしら? もう、真昼ちゃんってば
「ちがっ!? そ、そんなんじゃないよっ! 早く体育館に行かないと良い席埋まっちゃうって言ってるのっ!」
「まあまあ、照れなくても」
「照れてないよっ! もうっ、お母さんのばかっ!?」
「さっ、折角の文化祭だもの、私も楽しませて貰おうかしら。千鶴ちゃんも一緒に行くでしょう?」
「まァ……そっすね」
オレはこの文化祭に興味があって来たわけでもねェし、お遊びレベルの演劇を
「(つーか、あの
イスと机のズレを元通りに戻し、教室を出る途中でそんなことを考える。
元はと言えばあの
面倒くせェからもう帰ろうかな、などと本気で考えながら、廊下へ出るオレ。するとその瞬間、「あっ!?」と驚いたような声と共に、こちらに向かってビシッと指を突き出してきた女が一人。
「ホントに千鶴ちゃんだ!? なんで高等部の文化祭にいるの!? 絶対キャラじゃないのに!」
「……」
「痛ぁっ!? な、なんでいきなり無言で先制攻撃してくるのさ千鶴ちゃんっ!?」
「いきなりアホ
人の気も知らずにひょっこり現れやがったその女に、オレは結局我慢出来ずにイライラをぶつけてしまったのであった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます