第一三七食 家森夕と買い物上手
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たとえば部屋で過ごす時の格好。去年の夏頃であればタンクトップにパンツ一丁でだらだら過ごすなんて当たり前だったのだが、今年は最低限、上下のスウェットくらいは着るようにしている。なにせ相手は女子高生、いい歳をした男がパンツ一丁でお出迎えなど事案以外の何物でもない。
生活習慣が改善されたこともそうだ。一回生の頃は
そして、その他に大きく変わったことといえば――
「お兄さんお兄さんっ!
「わ、分かった、分かったからもうちょっと静かにしような?」
「そういえばお兄さんって、お
「いや、普通に食えるけど……うちのコンロについてるグリルってやたら部品数多くてさ。ぶっちゃけアレを洗うのが面倒だから、焼き魚とかしたくないんだよ」
「なるほど。そういえばお魚焼いたことないですもんね。前にフライパンで
「ああ、タレをつけてから焼いたせいで
「え? 普通に美味しかったじゃないですか?」
「……なんか最近、君の言う『美味しい』は信頼しちゃいけないんだなって思うようになってきたよ」
「な、なんでですか!?」
涙目になる真昼を差し置き、並べられた生魚のパックを見回す俺。もう夕暮れ時ということもあってか、並んでいる商品のいくつかには値引きシールが貼られている。
これまでは俺と真昼、どちらか一方が買い物に行くのが普通だったが、なぜか最近になり、真昼はやたらと二人で買い物に行きたがるようになった。本人は「お買い物のコツも教わりたいですっ!」と言うのだが……別に買い物上手でもなんでもない俺に、一体何を教えろというのか。
それでも折角の頼みを
「(それにしても真昼がうちに来てから、買える
俺と真昼は朝夕の食事を共にしており、それにかかる費用は二人で
以前にも少し
しかし、真昼がうちに来るようになってからは違う。
「(鮭一切れ九八円、二切れで一六八円……やっぱ量が多くなる分、こっちの方がお買い得だよな)」
鮭の売り出しポップに表示されている価格を確認してから、俺は二切れの鮭が入ったパックを手に取った。
業務用スーパーで売られている徳用チーズなどが好例だが、基本的に食品というのは内容量が多くなるほど値段は安くなっていくものである。もちろん消費しきれなければ損をするだけなので、俺一人で自炊をしていた頃は比較的割高な商品を買うしかなかったのだが……真昼が来てからは俺も内容量の多い商品にも手が出せるようになった。
一つ一つでは五円や一〇円の差しか
「あれ、お魚買うんですか? グリル洗うの面倒がってたのに」
「おう、まあたまにはな。……あとはアイスでも買って帰ろうか、カップのやつ。好きなの選んでいいぞ」
「いいんですかっ!? わーい、じゃあアイス売場に行きましょうっ!」
……もっとも食費が浮いた分、こうしてお菓子や嗜好品を買う機会も増えたので、一概に財布に余裕が出来たというわけでもないのだけれども。
「あっ、お兄さん! アイスも安売りしてるみたいですよ! 〝二つで五〇〇円〟ですって」
「高っ!? ってそれ一番高いカップアイスじゃねえか!」
「でも普通に買うよりは安いですよ? これ普段は三〇〇円くらいしますし」
「いや安いけど高いだろ……まあいいか、今日だけ特別だぞ?」
「やったあっ! じゃあせっかくなので、違う味を買って、後で半分こしましょう!」
「はいはい」
早速お高いカップアイスを前に、「どれにしようかな~」と物色し始める真昼。そんな女子高生の後ろ姿に、俺はそっと苦笑をこぼした。
やはり俺たちが買い物上手になるまでには、まだまだ時間がかかりそうである。
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