第二二食 六人組とお昼ごはん②
食堂から戻ってくるなり
そのただ事ではなさそうな空気に、彼女と一緒に昼食を買いに行っていたもう一人の友人――いわゆる〝ゆるふわ〟系の少女・
「雪穂ー。なんか怖い顔してるけどー、まひるがどうかしたのー?」
「聞いてよアキ! 実は今まひるにオトコが出来た可能性が浮上しててね!?」
「えっ、まじでー?」
「
「どっ、どど、どうなんだ
「出来てないよ! なんでそんな話になってるの!? ……ハッ!?」
「ちょっと。即座に私に疑いの目を飛ばしてくるのやめて。なんも
まさかひよりちゃんがお兄さんのこと話したの!? とでも言いたげな目で見てくる真昼に、この場で唯一事情を知るひよりは胸の前で否定のジェスチャーをとった。
そしてこの騒ぎの元凶たる眼鏡の少女は真昼を椅子に座らせると、まるで事情聴取でもするかのように彼女に詰め寄る。
「私の
「言い方ー」
「絶対いるでしょ、彼氏ないし気になってるオトコが!? 聞かせなさいよその恋バナを!?」
「なな、なに言ってんの雪穂ちゃん!? そそ、そんな人いないよ私!?」
「とぼけるなーっ!? だいたい思い返せばアンタ、中等部の頃から今までぜーんぜんそういう話なかったじゃない! というか前から思ってたけどこのグループにはそういう色気のある話が圧倒的に足りない! モテるのはいっつもアンタかアキで、そのくせアンタらには彼氏作る気が無さすぎるの! そんなんじゃアンタらのオトコから彼氏候補を
「……さりげなく私を巻き込まないでくれない? そんなしょうもない野望、抱いた覚えはないんだけど」
「それなのに! それなのに友だちの私たちに隠し事するなんて酷いじゃないまひるーっ!?」
ひよりのツッコミを完全無視して、雪穂は机に突っ伏しておいおいと大泣きを始めた。
それを見て困惑の表情を浮かべた真昼は「え、えーっと……」と、仕方なく雪穂が知りたがっていること――かどうかはさておき、隣の大学生に世話になっていることを話して聞かせた。
「……なるほど、話はよく分かったわ……。つまりまひる、アンタは――」
「う、うん」
「アンタはその大学生をオトそうとしていると、そういうことね?」
「なんにも分かってないよね!? 料理を教わりに行ってるんだってば!?」
「じゃあその人私に紹介してよ!?」
「え、ええっ!?」
「いいじゃんアンタはその人のこと狙ってるわけでもないんでしょ!? ねえひより、その大学生ってイケメン!? イケメンだった!?」
「え」
突然話を振られ、ひよりは記憶の中の――一度しか会ったことのない大学生のことを思い出してみる。
「……うん、まあ……うん」
「……あっ……」
「なに察してるの!? お、お兄さんはすごく優しくて素敵な人なんだからね!?」
「いや、彼氏にするなら
「雪穂は面食いだもんねー」
「(……まあ雪穂がすぐ興味失うのは分かってたけど……)」
ひよりはチラリと、先ほどからやけに静かな男性陣――のうち一名の顔を見やる。
「(……
そこには、なにやらメラメラと対抗意識を燃やしているらしい眼鏡男子の姿があった。
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