第2幕 敗者

うむ。ではよく聞け。


我々イノシシシ族は、この星で知性を持つ、数少ない種の一つである。

知性だけではない。

牙を持ち、体表を覆う固い毛を持ち、特に固い鼻を武器にする確かな脚力がある。森ではおよそ敵など居なかった。


感じとる限り、この星では我々種族の固体数はかなりな数になるはず。

だがそれは、太古の昔、ヒトト族に捕まった同胞が、戦いの機会も与えられず牙も抜かれた。今ではヒトトに保護されながら数を増やしている。

死ぬまで食べる事への心配なく暮らし、奴らに喰われていく。生き方はそれぞれだ。ただ、牙を抜かれても、知性は失ってはいかん。


とはいえだ、一方の我ら森に住む者は減った。どちらが良いのかは分からん。しかし私は死ぬときは戦って死にたい。

死に方もそれぞれだ。

私は一族の未来の為に命を燃やし尽くし死んで生きたい。

ヒトトのもとで暮らす同胞が満足していれば良いのだがね。


私たちは数を増やしたが、はたしてそれは、この星にとって必要なのか。

今はまだ何とも言えんよ。


・・・ああ、達者でな。

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