02 すれ違ったあの日に

「はいっ、じゃあ今日の合奏はここまで!!

来週までに今日指摘したとこ、個人練習とアンサンブルしっかりね!」


「「「お疲れ様でしたーー」」」



私の締めの言葉で、部屋を埋め尽くす物が音楽から声に変わる。



「久美さーーーん!!!!」


「っと、びっくりしたぁ、もう!どうしたの??」


「久美さん、今日も宮田先輩とお仕事ですか?」


「ん?そうだけど??」


「じゃあ今日差し入れ持って泊まりに行ってもいいですか??大人しくしてるんで!!」


「すずちゃんの大人しくしてるは信用出来ないんだよなぁ。」



胎児の時からワチキはパリピ


という独特なセンスしか放っていないキャッチフレーズではじまるオリジナルラップをよく口ずさんでいる、音楽仲間のすずちゃん。

私と出身高校が同じで、ギターとベースがとっても上手。最近はピアノもやってみてるんだって。


そんなすずちゃんの演奏に惹かれて、私が大学生になってから所属させてもらってるこの楽団にお誘いしたんだけど、練習中はめっちゃ真面目で大人しくしてるからその反動なのかもしれないけど、すっごいハイテンションで私にくっついてくるの。


だからこそ一緒にいて楽しいし、5つも歳下なんて思えないくらい仲良しなんだけどね。



「え、なんか言いました?」


「なんにも言ってないよーだっ!」


「もぉ!そうやってすぐ私をはぐらかすんだから!」


「違うもん!!とにかく、私がいいって言っても愛萌がいいって言わなきゃ部屋に1歩も入れてあげないから!!」



「私は…構わない、ですけど??」


「「うわっ、びっくりした!!」」



愛萌のあまりに突然の登場に、思わずすずちゃんとハモってしまった。



「さっきからずーっと!久美さーん!久美さん!!くーみーさーん!!!って呼んでたんですからね?!」


「ごめんごめん、すずちゃんとのお喋りに夢中だった、」


「あぁ!やっぱり久美さんったら私のことだぁい好きなんだからぁ!!」


「んんもう!すぐそうやって茶化すんだからぁ!」


「はいはい!もうイチャイチャしない!!

私、今日午前練って聞いて13時にランチ予約しちゃったんですから!久美さん!早くトランペットしまって!!鈴花もほら!早く荷物もって来て!!」


「え!!もしかして最初っから私のこと誘ってくれるつもりだったんですか?!さっすが宮田先輩、わかってるーー!!」



なんてバカ騒ぎをしながら、愛萌セレクトのおしゃれランチに向かうため、私たち3人は練習場を後にした。



「あ!あそこですよ、今日私が予約したお店!」


「すっごい!めっちゃおしゃれ!!

え、ここ本当にお昼に来るとこですか?!

宮田先輩、おしゃれディナーと間違えてません?」


「そんな訳ないでしょ?

私をなんだと思ってんのよ、ね?久美さん!

って、久美さん?どうかしました?」


「え?!あぁ、ごめんごめん!」



お店の近くまで来たときふと見覚えのある人とすれ違ったような気がした。

ついそれを目で追いかけているうちに、2人のトークが白熱していたみたい。



「どうしたんですか?ぼーっとしちゃって。」


「実は、もしかしたら前取材を受けた時の記者さんかもしれない人とさっきすれ違って...ちょっと気になるから追っかけてみる!ふたりとも、先お店入ってて!」



なぜかはわからないけどどうしても気になって、私は少し早歩きで追いつき、その背中に声をかけた。



「日向、さん?」

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