魔剣?いえただの調理包丁です
おいちちゃんの力で若返ったのは、ルビイ、クオーツ、サファイアの3人で村では3ばばと呼ばれていた村の生き字引であり、クオーツは採掘ギルドの元職人長だったり、サファイアは鍛治職人だったりで、村に居た採掘職人になりたい若者が少なからずおり、採掘ギルドが出来たり、サファイアのための鍛治場が出来たりして、短期間に村の改装が行われて行った。
最も素を知っていても妙齢な美人が3人も増え活気付いた若者だけでなく、昔の悪さを暴露されかけた村長達が、慌てて予算をつけたのも理由の一つだろう。
アルメリアにとってはルビイが天然魔石に5属性を付与できる魔石付与士だった事が嬉しかった。
遺跡から出た魔道具も属性魔石を使い動くので、元来は王都でも魔石付与士は引く手数多な中で5属性付与はレア中のレアであった。
ルビイが辺境の村に来たのは結局使い尽くされ、歳を取ったら国からの依頼も無くなり生活ができなくなったのが理由だった。
村長達も理由は知っていたので、特産品として魔石を作ってもらう事は諦めていた。
「なので、炎の魔石を作って欲しいんです」
理由を知らないアルメリアは屈託のない笑顔でルビイに天然魔石を渡して可愛く小首を傾げてお願いしてきた。
「あ、ああ、アルちゃんがそう言うなら作らなくはないけど、そんな物がホントに作れるのかい?」
ルビイの問いかけに、物凄く良い笑顔を浮かべると。
「虫食いだらけの本だったのですが、おいちちゃんを作ってみた時の感覚で理解したの、これは作れると」
「つまり、炎の魔石と天然魔石、それに魔法陣で超高速振動の包丁を作ると切れ味が良くて錆びないから研ぎが要らなくなると?」
「そうなんですよ、私包丁使った事なかったですしその方が便利だと思って」
うーん、嫌な予感がするなとルビイは思ったが、危なかったら取り上げれば良いと結論をつけると天然魔石に、炎属性を付与してあげる事にした。
「完成したら必ず持ってくるんだよ、あたしが使ってダメだと思ったら禁止だからね」
出て行くアルメリアにそう声をかけたが、元気よく手を振るアルメリアになんとなく不安を覚えるルビイは腰に手を当てて「まったく」とため息をついたのだった。
おいちちゃん事件と呼ばれる時間の後元さんばばの3人は村人に緘口令を引き、理由をがわからない人達には、今遺跡からしか出ない魔道具を作られ設計もできるなら絶対に、国からの命令で戦争の道具を作らされかねない、昔いた魔道具士が今いないのは、それが原因ではないか?
お前たちはアルにそんな事をさせるのかと言えば全員が首を横に振りなんとか口を封じる事に成功したが、包丁のつもりが魔剣ができた日にはそれが現実になりかねない。
どこか抜けているアルな事だ、大人である自分達が守らないとと、気を引き締め直してクオーツとサファイアにも話をするために2人の所に出かける事にした。
家に戻ったアルメリアは家の包丁の柄を外してその形に切った木の板に普段と違い銀ペンで魔法陣を描き込み始めた。
クオーツのおかげで銀の鉱石も村に出回り始めた事でサファイアに頼んで作ってもらった物だ。
銀の方が魔力を通しやすく、薄い板にも掘らないために魔法陣を描きやすいのだ。
「指向性をつけて……延焼防止に、刃だけを振動する様に……あ、熱も少し出るようにすると調理が楽かも……オンオフもつけて」
そんな事をを言いながら細かく細かく幾重にも魔法陣が繋がるように組み立てつつ構築して行く。
普通の人なら虫眼鏡を使って描かないと見えないほど小さな文字を確実に丁寧に描いていく。
気がつけばお昼から朝になるだけの時間を制作に使いやっと魔法包丁が完成した。
「ふ〜完成っと、
約束たし、ルビイさんに見せに行こうかな?」
包丁を研ぎ要らずのケースに入れて家を後にしたアルメリアの後ろ姿をおいちちゃんは見ていた。
人形らしく無く頭を抱えて震えながら。
「ルビイさん出来ました♪」
「早いね、どれどれ」
外でお昼の鳥を捌こうとしていた、ルビイに笑顔で包丁を渡すアルメリア
「おや?アルにしては普通かな?
鳥を捌くのに使っても良いかい?」
「もちろんです、説明しますね」
「ああ、頼むよ」
「まず、束の赤い石に魔力を流すとオンです。
二回流すと熱も出るのでかるくあぶる時は丁度良いです
その後もう一回で止まります」
「へ〜、どらどら」
ルビーが言われたように魔力を流してみると、少しプーンという音がしだした。
緊張しながら鶏のお腹に包丁を入れるとまるで何も無いようにするりと切れ、そこからは簡単に解体が終わってしまった。
骨まで簡単に切れるその切れ味に驚き思わず「これもう魔剣じゃん」と呟いてしまうほどだった。
「これなら大丈夫ですよね?」
笑顔のアルメリアにルビイは「ああ、あたしも欲しいくらいだよ」と言ったものだからアルメリアはとても良い笑顔で「作ってきますね」と言って家に帰って行った。
その後村中の包丁がそれに変わり、フーガのオノも高速振動付きになったのはやり過ぎかもしれない。
村の主婦からは物凄く感謝されたが夫からは危なすぎて嫁に逆らえないとの声が上がったのは御愛嬌
「これは良いのかな?」
と、ルビイは少し困った顔をして言っていた
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