アルメリアのお気楽生活

 アルメリアがフリーデン皇国の辺境の村に脚を踏み入れるとそこはまさに、戦場だった。


 激しく剣を振るう数人の兵士と、明らかに人数が多い盗賊に見えるオノや槍などを持った集団の激しいぶつかり合いは、明らかに兵士の方が劣勢だった。


 フレイムベアーと遭遇してこの村までの間に、かなりの魔物と遭遇したアルメリアは自分が使える魔法や錬金術などの実践を経て盗賊ではあまり怖く無くなっていた。


「アイシクルランス」


 アルメリアが力ある言葉を解き放つと、12本の氷の槍が盗賊の太腿を貫き地面に縫い付けて行く。


 とっさのことに戸惑う兵士達を尻目に盗賊はアルメリアを危険な敵と認識して武器を向けるが。


「ブルーウエポン」


 今度は両手杖で古代魔法を発現させると盗賊達の武器がバラバラになり地面に散らばった。


 アルメリアが持っている杖は森の中のゴブリンシャーマンの持っていた杖で、思ったよりも魔力の増幅率と蓄積能力のおかげで、まだレベルの足りない魔法も少しなら使えるようになっていた。


「さて、降伏しますか?しないならアイシクルランスを今度は全員に……」


 笑顔で問いかけるアルメリアにリーダーらしき男が両手を上げて周りを見回すと他の盗賊達もそれに倣い両手を上げた。


「降参だ、この通り降参する

だから、部下達の手当てを頼みたい」


「お前!何を虫のいい事を」


 盗賊のリーダーの言葉に、激昂する兵士をよそに、アルメリアはにこりと笑い


「わかりました」


 そう言って指を鳴らすと氷の槍が消え太腿を貫かれた盗賊は地面に尻餅をつく。


「何を勝手にするか!」


 激昂した兵士の怒りの矛先がアルメリアに向くが、アルメリアは冷静な顔で


「降伏している人に、これ以上の危害を加える必要はないかと?」


「逃げたらどう責任と取るんだ!」


 はぁとため息をつきながら盗賊の太腿にポーションをかけていく


 ポーションなんて高級品を使われるとは思っていなかった盗賊達はその場で呆然とし、さすがのリーダーも唖然としていた。


「この人ならわかってると思うのですが、魔法使いの攻撃範囲から逃げる間に確実に殺される事もわかっているでしょうし、何より武器もなく森の方へ逃げるのは自殺行為です」


「それでも逃げたらどうする!」


「その時は仕留めますが?」


「もういい!話にならん!こいつらは我々が捕縛するもはや手を出すな!

 お前らもいつまでへばってる!さっさと捕らえろ!」


 後ろで疲れ切って地面に体を投げ出していた兵士達を怒鳴りつけ、盗賊を捕らえようとするが、誰も動かない。


「あんたさ、口ばっかで何もしてないじゃないか、それに、そいつらの全ての権利はそちらのお嬢さんにあるだろう、俺達にじゃない」


 赤髪の兵士がそう言うと、盗賊達もそうだと言い始めた。


「何を言うか!我らが戦っていた横から手出しをしたこんな小娘に権利など無い!」


「あんた、頭悪いな

皇国法第18条に降伏した盗賊、敵国兵士は降伏した相手に全ての権利が委ねられる

ってね」


 盗賊のリーダーはそう言って小馬鹿にしたように激昂している兵士を馬鹿にしたように鼻で笑った。


「小娘!権利を我等に移譲しろ!」


 アルメリアに掴みかからん勢いで迫って来る兵士の顎を杖で下から打ち上げ意識を奪うと、呆れたような目で見下した。


「で、他の兵士さんはどう思います?」


「盗賊の権利はお嬢さんあんたにある、ついでにこいつに、皇国追放とでも今のうちに命令しておいてくれると助かる

 もはやあんたにこいつの権利あるしな」


 この世界では国が決めた法の中で平等であると神々が認めたものは全て強制力があり、当時の王達が自分たちのために決めたものには強制力が無く廃れていくのだった。


特に1条から20条の法律は各国で違いはあれ初代法と言われ絶対的な強制が働くものばかりである。


「なら、追放で」


 アルメリアがそう宣言すると兵士達は歓声を上げて喜んだ。


 

 その後盗賊達は村の復興に使い、その後は畑の開墾や狩猟に割り振ることになり。

 形的にはアルメリアが村に貸し出して対価をもらう形に落ち着いた。


 アルメリアは村の一角にある、空き家を契約金代わりにもらった。


 家は3LDKで庭付き井戸付きで広い間取りになっていた。


 アルメリアはその内一部屋を錬金製薬室として使おうと決めていた。














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