幕間1

 アルメリアが追放された翌日、ボンクラーはタベズを連れて国王が国民に会う参賀に参加していた。


 国王の言葉が終わるとボンクラーとタベズば前に出ると


「国民よ聞け!我ボンクラーは公女アルメリアを煉獄の森へ追放し、アルメリアの名を取り上げた!

 そして今、公女タベズにアルメリアの名を送りこの美しき公女を名実ともに祝福されし聖女とする!」


 ボンクラーの言葉に国民も割れんばかりの歓声を上げ、祝福モードいっぱいになるが、国王と一部の重臣は顔を真っ青にしフラフラとその場に座り込む。


 国民の歓声に気を良くしたボンクラーはさらにこう続けた。


「そもそも醜い女に最初に祝福を与えた女神は責任を取り、我が国を皇国以上に富ませ我が国以外の国を我が国に平伏させる責任がある!

 そうだろう!無能な神々を我が前に平伏させ世界を征服しようではないか!」


 すでに気運の高まっていた国民も歓声を上げボンクラーの言葉にyesと返事をしてしまった直後、空が割れ王国の空はドス黒い赤に染まり6神が降臨した。


 しかし、神々の姿は祝福の時に見せたような白く神々しいものではなく、黒く恐ろしいものであった。


 国民も、国王、重臣、ボンクラー達も王国全ての人間が腰を抜かし死よりも恐ろしい恐怖を感じ、ただただ怯えていた。


「愚かな思い上がった人間よ

 我は正義と秩序の神であり

 騎士と戦士の守護者でもある神アンガスである」


 最初に口を開いたのは漆黒の鎧を纏った精悍な男神であった。


 短く切られた黄金の美しい髪をなびかせたその姿は間違いなくアンガス神であり、騎士と戦士はアンガスに祈りを捧げる事によりその職につくので、魂から間違い無いと感じていた。


「我からの裁きを下す

神を愚弄し、創造神様からの賜り子を愚かにも詐称した罪により

騎士と戦士の職を解き二度と職にはつかせぬ

そして、国民も王家の者も二度と穏やかな夜が訪れぬようにここに神罰を与える」


 アンガスが漆黒の剣を抜き放つと騎士や戦士から光の球が抜け全ての人間に漆黒が降り注いだ。


「妾は癒しと知識の女神アルテイシアである

 妾からの裁きはシスター、プリースト研究者の職を解き未来永劫知識を振るう事を禁止する」


 垂れ目の穏やかそうな女神が黒のドレスを纏い気怠そうにその長い桃色の髪を触りながらそう告げると、聖職者の体から光の球が抜け全ての人々の頭に漆黒が巻きつき消えた。


「吾輩は技術と生産の神ハッフハじゃ」


 長い蓄え髭の男神が前に出てきた。

 ハッフハは筋肉質なその身体を晒し、下半身に黒いズボンを履いているだけであった。


「吾輩からの神罰は技術職にある者の職業消し、この国では二度と生産が成功しない事にしよう、あ、そうじゃついでに鉱石などの鉱物資源も取れなくしておくぞ」

 

 そう言って腰に無造作に刺していた槌を払うと生産職の人間からは光の球が抜け、大地と人々に漆黒が、降り注ぎ消えていった。


「俺は農夫と豊穣と子孫繁栄の女神ラクシード

 お前らにはこの国では農夫の職を禁止しこの国では何も実らない育たない神罰をあたえる」


 金色に揺らめく長い神の美しい女神はその美しい手に持っていた金色の稲穂をゆっくりと、振るうと農夫からは光の球が飛び出し、大地と人々に漆黒が降り注いで消えた。


「まて!なぜ我々が呪われねばならない!」


 産まれたての小鹿ののように脚を激しく震わせながらボンクラーが批判の声を上げた。


「ボンクラー!神々に声をかけるなど不敬だ」


 国王が慌ててボンクラーの頭を押さえ平伏させようとするが


「父上我らは王家です!神など信仰のための道具でしかない!」


「ば、馬鹿者!神々は我らに職を与え、多くの加護をもたらされる存在だ!人は神を信仰せねば生きていけぬのだ!

 何を習ってきた!この、愚か者が!!!!!」


 怒りのあまり国王はボンクラーの顔面を殴りつけると倒れたボンクラーの身体を何度も蹴り付けた。


 そんな状況にもかかわらず、肩までの髪の凛々しい女神が前に出てきて、空を指差した。


「わたくしは、天候と精霊を司る女神オーベリン

 この国の天気は常に曇りとし、全ての精霊はこの国から去る事で神罰とします」


 にっこりと柔らかい笑みを浮かべ宣言する

オーベリンはたたおやかな動きで、創造神へと視線を向ける


「創造神たら私が告げます、この国の国民はこの国から出る事を禁止します。

 また、アルメリアの名はあの子以外には似合いません、タベズ、あなたの名は罪の証として怨念を集めるという意味として使い、あなたが生きている限りこの国に怨念が集まるようにします。

 ただし、だからといって殺してはダメですよ、生き続けることが贖罪なのですから」


 祝福の時と違いゴスロリを着た創造神がそう告げると、国中に響き渡るほど不気味な鐘の音が聞こえ、神々はその姿を消した


 呆然とした国民と、王城の者達が現実に帰った時は、職も無く、スキルも魔法も取り上げられ、荒涼たる変わり果て王都や国土であった。


後編に続く





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