第2話フリーデン皇国へ到着

 その日の夜に御者はバトルラビットを2匹狩って来た。

 バトルラビットは人間の子供サイズのツノが生えたウサギで、冒険者や騎士の中級への登竜門と言われているほどの強さだ。

 との戦闘スタイルは独特で格闘のお手本のような動きをし、歳を経たバトルラビットはあのオーガすら圧倒すると言われている。


「真核とツノを持ってきたぞ」


 解体の終わったバトルラビットのお肉を枝に刺したものを焚き火の近くで炙るように置いた御者が真核とツノとそれが入る大きさの瓶を置いてアルメリアを急かすようにアゴを動かした。


「やり方を説明するわ」


 真核と魔核では金額が明らかに違い、真核だと銀貨10枚ほどだが魔核になると金貨8になるしかもウォーラビットの魔核なんて金貨12枚にもなるのだから御者は楽しみで仕方ないのだろう。


 アルメリアはビンに少し細工をして真核を底に置きその上にツノの生えていた部分を当てるように置いた。


「このビンは簡易の錬金陣を描いているのでこのビンだけが魔核を作れます

 ただしツノの先端は真核に当てないようにしてくださいね」


 アルメリアがそう話すと御者はコクリと頷き興味深そうに見ていた。


 馬車の置ける広場で御者とアルメリアは焚き火を囲みバトルラビットの肉を食べていた。

 空は満天の星空、すぐ近くは森というのに、何故かアルメリアは恐怖を感じていなかった。


「お前は錬金術なんて、廃れた物をなんで覚えた」


 御者の問いかけに、アルメリアは少し困ったような笑みを浮かべながら


「最初は道具扱いされるのが嫌で、少しでも何が出来れば周りの目も変わるかと思ったのがきっかけですね

 今では錬金術の復興が私の楽しみになってます」


 アルメリアがそういうと、御者は「変なやつだなぁ」と呟いて仰向けに寝転んだ。


 アルメリアもそう思う、魔力のコントロールが難しくて廃れた錬金術にハマり、今では遺跡からたまに取れる魔道具やポーション類の作成など出来る様になっているし、何より超古代魔法の無限収納を復活させた辺りから古代魔法もどんどんハマって行ったが、このことを知っているのは誰も居ない。

 誰もアルメリアの話は聞かなかったからだが。


 誰もが諦めた廃れた技術と超古代魔法どちらも今は研究者すらいない、そんな話を聞いてくれたのは御者が初めてだった。

 ふと、そんな事を思いながらアルメリアはゆっくりと優しい夢の世界に落ちて行った。



 煉獄の森へ旅立って2日目の夜

 ビンに入っていた真核とツノは完全に融合して金色の陽炎が浮かび上がる魔核になっていた。


「ほんとだったようだな

 オレも約束は守ろう、フリーデンに進路を変えたら後2日で着く、もう一回魔核試せるからな」


 御者はそう言って真核を取り出し大事そうに懐に入れると同じように真核を置きツノを上に乗せてビンの蓋を閉めた。


 アルメリアは首の後ろにチリっとした感覚が走りふと後ろを見ると、煉獄の森に居るはずのフレイムグリズリーの姿がチラッと視界の端に映り込んだ。


「フレイムグリズリー……」


 アルメリアの呟きに御者は素早く臨戦態勢を取る頃には、煉獄の森の魔物、モンスターと呼ぶにふさわしいその容貌がしっかりと見えていた。


 フレイムグリズリーの毛皮は常に周囲の魔力を吸い炎を纏っており、接近戦で戦闘するには毛皮の硬さと炎の熱もあり難易度も高い。


 また、遠距離戦では普通の矢は燃え尽き、金属製の矢もその硬い毛皮が弾く。


 遠近両方に強いモンスターであり、攻撃力はその巨体から繰り出される力強い両腕の一撃と、他を畏怖させる咆哮に加え、火炎弾による遠距離攻撃とまさに汎用型の強者である。


 唯一の救いは移動速度が遅い事だが、それはモンスターとして、である。


「ち、運がねぇ

 馬車で逃げるには時間が足りねぇか」


 御者はそう言うと、ビンを懐にしまい、馬車から外していた馬に飛び乗り一気にアルメリアを置いて逃げ出した。


「お前を襲ってる間にオレは逃げることにする、役人にはお前は死んだと伝えとくぜ」


「な!」


 走り去っていく御者にアルメリアは一瞬呆然となるが、御者が置いて行った酒瓶の中にある酒を頭から被り、濡れた袖を口に当てて茂みに飛び込んだ。


 すると不思議な事に、フレイムグリズリーは御者目掛けてものすごい速度で走り出した。


 五分なのか1時間なのか祈るように目を瞑りじっとしていると気配が消えやっと、恐怖から落ち着きを取り戻しアルメリアが茂みから外をのぞくと、御者の姿も、フレイムグリズリーの姿も無かった。


「助かった……」


 フレイムグリズリーは鼻が敏感で、アルコールの匂いを嫌うと本に書いてあった事を思い出し、とっさに行動に移したのだった。


 アルメリアはブルリと身体を一瞬震わせて生きてる事を実感すると、ウォームアクアの魔法で温水を出すと頭から被り異次元収納から別のタオルと服と下着を取り出し、馬車の荷台で着替えると焚き火に魔物除けのお香を放り込み、馬車の荷台で寝る事にした。


 魔物除けのお香は元来迷宮の発掘品で高価なのだが、アルメリアは錬金術の練習に大量に作ってあり、異次元収納に大量にしまってあった


 恐怖のあまりあまりよく寝れなかったが、少しでも睡眠が取れた事で少しは疲れが取れ、気を取り直して、フリーデン皇国の方へと森の中を進み始めた。


 アルメリアがフリーデン皇国の辺境領の端の村にたどり着いたのはこの事があった5日後のことだった。



ーーーーーー

プロローグ終了です

はじめての小説なので拙いところもあるとは思いますが、どうぞ温かい目で見てやってください。











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