祝福された公女と呪われた国
たぬまる
第1話
公女アルメリアが生まれた時創造の女神がアルメリアと言う名とともに、大いなる祝福を与えた。
国王ニコライは自分の息子の婚約者にすぐさま決め、バル公爵家を丁重に保護することを決めた。
その2年後パル公爵家にはタベズと言う宝石のように美しい娘が生まれた。
年を重ねるごとに美しくなるタベズとそれに反して美しく無くなって行くアルメリアに国民も国王周辺も、タベズを対外的に祝福された聖女とし、アルメリアは国を富ませる道具として見て行くようになっていった。
そして・・・
物語はアルメリアが16歳の春に動き出した。
アルメリアは顔をベールで隠し道具扱いされたためか、常に下を向いて日々を過ごしていた。
そんなアルメリアが唯一の居場所といえる王宮の大図書室で魔法書に目を通していた時に、大図書室の豪華な扉を大音量で開けて、この国の王子ボンクラーが顔を真っ赤にして飛び込んできた。
「もう我慢ならん!アルメリア貴様からアルメリアの名と我が婚約者の地位を取り上げ、煉獄の森の砦に追放とする!
そこで貴様は国を富ませるために一生を過ごすが良い!」
「あ〜んさすがボンクラー様
女神から贈られた名を私の物にしたら私が女神の祝福を受ける聖女になりますよ♪
だから、この暗い女は死んでも大丈夫ですよ」
ボンクラーに、寄り添うように胸を押しつけて体をくねくねさせるアルメリアの妹タベズに金髪の気の強そうな顔のボンクラーはだらしない顔をしてタベズの方を向くと、レースをふんだんに使った桜色のドレスの強調されたくびれに腕を回し軽く頷くと
「そうだな!タベズの美しさなら女神もその恩恵をこの女から移すだろうな
おい!この女を煉獄の森に捨ててこい!」
ボンクラーはタベズの肩を抱きながら豪華な図書室から出て行った。
後に残されたアルメリアは呆然とし、騎士はどうした物かと悩みつつも命令どうり、アルメリアの腕を拘束して、外に出て行った。
煉獄の森は大大陸と言われるシルバートレイの国を分断するようにある6つの大森林の中心にあり、砦を築き魔物の侵入を防がなければならないほど凶暴な魔物が出る。
あまりのその恐ろしさに魔物とは一線を画すために煉獄の森の魔物はモンスターと呼ばれていた。
「へへ、お前もついてなかったなぁ
女神様の気まぐれでお前なんぞに祝福を与えなければ、長生きできたのにな」
「私が望んだわけではないのですがね」
御者の軽口にアルメリアも軽口で返すと
「へへ、そりゃそうだ、お前なんぞが女神様に望みを叶えてもらうなんざぁ不敬ってな問題」
御者は薄汚れた毛皮のベストの肩を揺らして下品に笑うと、楽しそうにうなずいた。
「それにしてもこれはどうにかならないのですか?」
アルメリアは後ろ手に縛られて粗末な馬車に転がされている状態で、馬車が揺れるたびに右に左に転がりとても居心地が悪がった。
「すまねぇなぁ、お前の腕を解くと逃げられるかも知れねぇからなぁ
後5日だぁ、我慢してろ」
アルメリアはこの状態で5日もなど我慢できるはずもないし、何よりトイレや食事はどうするのだとため息をついた
「ねえ、貴方は今のままで良いの?」
急なアルメリアの言葉に御者は訝しげな目を向けつつ首を傾けた
「つまり、この死体を運ぶ馬車の御者で良いのかって事
私は逃げないからロープを解いて、食事とトイレの自由をくれるなら、貴方により良い身の振り方を教えてあげる」
「煉獄に捨てられるお前に何があるんだよ?」
「私には王宮の大図書室に有った書物全ての知識で貴方の得意な魔物の剥ぎ取りの技術を活かす方法を教えてるわ」
御者は一瞬訝しむが少し怖い顔になり
「お前なんでそんなことを知ってる?
オレが剥ぎ取りが得意だって」
「だって貴方の右手親指の付け根にナイフダコがあって、左手の指がそっているでしょ?
それは硬い魔物を解体する人がなる状態だし、貴方の汚れたベストの毛皮はブラウニーグリズリーの毛皮これは剥ぎ取りの専門家は一生の宝にするために作る物で、普通は鎧に加工するから珍しいの」
「……良く知ってるじゃねぇか
大図書室の知識か、いいだろう信じてやらぁ」
御者はそう言うと、馬車を止めてナイフでロープを切ると、また、馬車を進め始める。
「ありがとう」
手首をさすりながらアルメリアがお礼を言うと御者は顎をしゃくり話を促す。
「ふふ、そうね
先ずは貴方の腕ならバトルラビットの解体は出来るわよね?」
御者は首を縦に振ると、アルメリアは話を続ける
「バトルラビットには真核が有るんだけど、それにバトルラビットのツノを一緒に瓶に入れて2日置くとウォーラビットの魔核に変わるのよ」
アルメリアがそう伝えると、御者は驚いた顔で振り向くと
「嘘だろ……もし捕まえてきたら試せるのか?」
「もちろん」
アルメリアが自信ありげに頷くと
「もし成功したらお前の食事のグレードもあげてやるし、砦でなくフリーデン皇国の方に逃してやるよ」
こうして、アルメリアの運命は少しずつ動き始めた。
この動きは少しでも、王国にとっては大きな動きで有った
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