22:小指
「お兄ちゃん? どういうこと? この人たちはお兄ちゃんのこれですか? しかも2人? 不純だわぁ」
小指を立てながら妹の彩芽に問い詰められる。いや、俺とコイツらの関係をどう説明しろと。こんな展開になるならカーベラ一人の時にゲロっとけばよかったかもしれない・・・
後ろを見れば問題の2人は面白そうにこちらを見ている。アリアまで・・・
「いや、そんなんじゃないから!」
「じゃあどういう関係なの? 2人も女がいるって不純極まりないし、何? ハーレムでも作ろうとしてるの?」
「ハーレムとか言うなばか! お兄ちゃんはそんな妹に育てた覚えはないぞ」
もうこれは彩芽が信じるかどうか正直に言ったほうがいいのか。彩芽も、誰に似たのか知らないがまぁそこそこのアニオタだ。こういうタイプの話に対しては少しくらいものわかりがいいのかもしれない。
「あ、あのな? この人たちは異世界から来ていて、何だか魔王を倒すのやらに俺が手伝わされるらしいんだけど・・・」
「は?」
「1+1は?」を回答するレベルのスピードで俺の説得は跳ね返された。
というか何かすごく睨まれているような気がするのだが・・・
瞬間。睦月にはこの場の主導権を手に入れる妙案が頭を駆け抜ける。
いや、俺ってば頭いいな
「異世界とか言い訳いいから。というかお兄ちゃんに2人も女ができたんだぁ 衝撃すぎるんですけど」
俺の妙案を浮かばせている手前、彩芽は態度を変えず、俺を責める。
「というか、お兄ちゃんが女の子を2人部屋に連れ込むくらい、いいだろ別に? もしかして彩芽ブラコンなのか? お兄ちゃんが最近かまってくれないから睨んでんのか?? そうなんですかぁぁ??」
「は、はぁぁ??」
彩芽は軽く額を赤くし、急に動揺しながら否定を始める。
「何だ? お兄ちゃんに2人も女がいることがわかってどう思いましたかぁ?」
「い、いーかげんにしろっっー!!」
「バチンっ」という音とともに視界が変わる。彩芽と天井が入れ替わりに俺の視界に入ってくる。どうやら思いっきりどつかれて体勢を崩したらしい。
「っもー お兄ちゃんのバカっ! ママには言わないでやるから観念しろっ! っで、ご飯は!!」
「え、えっとー晩飯は食卓にあります・・・つけ麺です」
「そーですか!!」
バンッ!
勢いよく扉が閉められる。俺には策士の才能はないことが少しだけ判明した。
ドタッ!ドタッ!と後ろから音がなるので後ろを見てみるとカーベラたちがお腹を抱えながら脚をバタバタさせて転がっている。
「あのなぁ責任とれよ? お前ら」
しかし、何もあそこまで怒る必要はなかったのではないだろうか。たかがお兄ちゃんが女性を部屋に連れ込んだくらいだぞ? もしかしてあいつまじもんのブラコンなのか・・・?
まぁ親が家にいることが少ない分、家事もそうだし小さい頃からずっと彩芽の遊び相手になって構ってきた。俺が単に遊び相手が少なかったというのも無きにしも非ずだが。
まさか最近、カーベラたちに振り回されて会話もろくに出来てなかったのが寂しかったのか!?
「っぷはー笑えたー! ・・・まぁでも、むつきいいお兄ちゃんやってるんだね」
彩芽に対していろいろ思考を巡らせていたところカーベラに中断された。
「いいお兄ちゃんって何だコラ。 今彩芽どうすればいいか考えてんだ邪魔すんな」
カーベラは頬を膨らませて「むぅ〜」とこちらを睨みながら唸る。
「でも妹さんに慕われていることはわかりましたよ?」
アリアがようやく口を開いて言葉を発する。
「そうか?」
「あの様子を見てればわかりますよ?」
俺も少なからず「あ、俺慕われてるー」と言うのは恥ずかしながら感じたが、これからどうすればいいのだか。
「とりあえず、事情をしっかり説明して彩芽の誤解を解かないとな・・・」
「もう誤解とかじゃなくて、本当に、私がむつきのお・ん・なになってあげてもいいわよ?」
「いえ、今は結構です。それより黙っておいてください」
うるせえ。物凄く。
「っそんなこと言わなくてもいいじゃないぃぃ! 慰めてあげようとしてるんだから!」
少し冷淡に返したからって頬を膨らませて怒るんな。
あ・・・
そういえば、明日期末テストなのに全然勉強進んでねぇぇぇぇ!!!!
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