兄としての俺、学生としての俺

21:お兄ぃが!!

 アリアが来てもうすぐ1週間。話す相手が増えたからか、カーベラは少し落ち着き、アリアと二人で留守番することも多くなった。とは言っても初日は思いっきり忠告を破ってアリアを巻き込みあれやこれやと悪戯を仕掛けてきたが・・・


 そしてアリアが来てから1週間がもうすぐ経つということは、同時に期末テストが迫っているということでもあった。これさえ終われば数日休みに入る。その間にアリアがこの世界で生活できるような環境を整える必要もある。


 明日から3日間テストが始まる。今日は大詰めだ。俺の成績は中の上くらいで、そこそこ準備していれば特に赤点をとる可能性はない。

 だが・・・ カーベラとアリアのための炊事などこの二人が来てからやたらとしなければならないことが増えてしまった。いや、しなければならないことが増えたというより、カーベラに所々絡まれるので勉強が進まないのだ。はっきり言ってあんまり準備はできていない。


今日は、今日こそはしっかり準備して明日に備えなければ・・・!


「むつきぃー 暇なんだけど何かない?」


 はいー! 早速来たぁ! この数日でそのセリフを何度聞いたか・・・


「適当に俺の漫画棚でも漁ってろ」


 今日は流石に構ってられないのだ。俺は素っ気なく返す。

 calm down だ俺よ。いつもみたいに構うな。

 

 ・・・っと。もう7時か。ご飯作らないとな。今日は少し簡易なものにしよう。

 

 自室をでた俺は、冷蔵庫を漁る。何か簡単に作れるものはないだろうか。

 こういう時のために簡易に作れるインスタントのものが・・・ あった。 インスタントつけ麺まぁこれでいいだろう。ちょうど2パックで4人分ある。俺とカーベラ、アリアあと彩芽を含めればちょうど4人だ。


 インスタントなので、時間はさほどかからない。さっさと作り、3人分を俺の部屋、1人分を食卓におく。


 自室に戻ると、カーベラは最近ハマったのか俺の漫画を読み、アリアはレオの世話をしている。


「はい、ご飯作ったから」

 何だか、この生活に慣れてしまうともうこれはこれで『普通』な感じがして何だかつまらない・・・


「これは何ですか?」


 つけ麺を不思議そうに見ながらアリアが聞く。

「つけ麺だ。俺もテストが近いくて時間なかったからインスタントのだけどな」

 3人で「頂きます」と言い、各々食べ始める。



「美味しいぃ(です)!」


 と2人に言われたが、インスタントのものなのでそこまで嬉しくはない。そして、こっそりいつかつけ麺を作ろうと静かに決意した。





―ガチャッ


「お兄ちゃん、ご飯まだ・・・えぇぇ! 誰! お兄ちゃんの女⁈」

「ブヘッッ!!」


 何の拍子もなく彩芽が入ってきた。やばいやばいやばいやばい。突然のことで睦月は吹き出した。


「いやっ・・・これは・・・あれだ。あれだな」


 彩芽は携帯を取り出し、何やら操作して耳元に当てる。電話か??


「マ、ママー! お、お兄ちゃんがハーレ」

「ヤメロォ!!」

 俺はとっさに彩芽の携帯を取り上げる。というか中学生1年生の妹よ、ハーレムなんて言葉を言おうとしたよな? いつ覚えたんだ。お兄ちゃんはそんな妹に育てた覚えはありませんぞ。刹那そんな妹に対する保護者的思考が過ぎるが、それどころではない。


「か、母さん、何でもないからっ!」

『ハーレ・・・何? あ、ごめん上司に呼ばれたから切るね』

―ツーツーツー

 彩芽ぇ〜 なんてことしてくれたんだ。というか何だか久しぶりの気分だな。最近はカーベラたちに振り回されてなかなか接する場面もなかったからな。


「な、なぁあや・・」


「お兄ぃがハーレム、お兄ぃがハーレム・・・」


 物凄い勘違いをされている。


「お、おい!! 彩芽! ハーレムとか連呼すんな! しかもチゲぇーし!」


 俺の声でやっと意識を取り戻した彩芽はこっちを向く。


「違うってどうゆうこと? ちゃんと説明してよねお兄ちゃん」


 問題の2人を見ると呑気そう、いやカーベラに至ってはもうさぞ楽しそうにこちらを見ている。爆弾が少し爆発してしまったようだ。

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