20:変化する日常

 今日は3月6日。カーベラと会ってから1週間がすぎた。果たして俺はカーベラとアリアという二つの爆弾を抱えて過ごす日々に慣れることができたのだろうか。

 とは言ってもアリアという二つ目の爆弾がやってきたのは昨日だ。まだ未知数な未来が俺に待ち受けているかもしれない。少しでも安全に過ごせるよう俺は心から、いや心の底から祈り、起きた。


「おーい。 お前らー飯だぞ」


 俺は、押入れの前にたち、カーベラとアリアに声をかける。ちなみにアリアが生活する場所はカーベラの作った異次元空間となった。現在二人は一つの部屋で寝ている。カーベラの作った異次元空間の広さは狭くはないため、二人だとしても苦労はないだろう。

 少しすると、カーベラが大きなあくびと「ふわぁぁぁ」を発しながら押入れを開ける。


「おはよう、むつき・・・」


 どうやら起きたばかりのようだった。押入れの奥を見ると、まだアリアは寝ている。

 ここについたのがたった昨日だ。身体的にも精神的にも疲れているのだろう。


「朝飯作っといたから、二人で食べとけよ」


「毎朝、毎朝、朝ごはん早いよぉ まだ陽が上がったばっかりよ?」


「まぁ、こればかりはしょうがないから我慢してくれ。アリアが起きたら一緒に食べてくれ」


 俺は毎朝、毎朝カーベラのご飯を作るために早起きをしている。理由は毎日朝ご飯を作りに来てくれる祖母にバレずに料理を用意する必要があるからだ。

 おかげさまで俺はとても健康な生活習慣を手に入れることができた。今は毎朝5時起きだ。祖母は毎朝6時半くらいに家に来るので、軽めの朝食を作るくらいだったら時間は十分だ。

 その影響もあって、最近は夜にやりきれなかった課題も朝に終わらせている。どうやら俺は朝型人間だったようで、夜より頭が冴える。生活習慣が良くなったことは、カーベラのもたらした唯一の良い影響だと思う。『唯一』の・・・


「おはようございます、むつき」


 カーベラと話していると、カーベラの後ろから声がした。アリアだ。


「悪いな。起こしちゃったか?」

 アリアは首を振り、「大丈夫」と答えた上で


「今日はどのような予定なのですか?」

「悪いが、今日、半日俺は学校に行く。これまでカーベラは小型化してくっついてきてたけど、今日は2人とも家で待機しておいてくれるか?」


 カーベラは悲壮感を表情にだす。アリアは一応納得してくれたようだ。


「もう3月の終わりで俺も試験が近いんだ。学校を休んではいられないんだよ」


 そう。俺は1週間後大きなイベントを抱えている。それは『期末テスト』だ。俺の学校はそこそこの進学校でそれなりに勉強をしていなければ赤点をとってしまう。

「シケンとはなんですか? 試練ですか?」

「まぁ多分似たようなもんだ。」

 少し言葉としてはカッコよくなってしまった気がするが俺が挑むのは試験であり、紛れもなく赤点を回避しなければならないという試練なのだろう。


「と、いうわけで。さっきからしょぼくれているが、今日は家でゆっくりしてろよ?  アリアも疲れてるんだから」

 さっきからつまんなそうにこちらを見ているカーベラに声をかける。


「えぇー じゃあ私はこの退屈な日をどう過ごせばいいのよぉ!」


 俺はこの忠告を無視するという特技を持つ魔女にもう一度釘を差す。


「頼むから家族には見つかってくれるなよ? 押入れの中にずっと入ってろと言ってもどうせ出るんだからせめて家族に見つかるのだけはやめてくれよ?」


 カーベラはがっかりして俯きながら「はい」と生気のない返事をする。ここまで釘を差しても経験談からするとどうせ何かをするのだろう。もちろん悪い意味で何かをするのだが・・・


 いつの間にか家に来ていた祖母の「ご飯ですよー」という声が聞こえ、俺は自室をでる。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る