12:小さい×可愛い
「よー、榊原。 今日災難だったな」
「榊原ぁーだいじょ・・・っわっはっは ごめ、顔見たら思い出して笑えて来たわ」
あー最悪だ。
気を取り直して、2時間目は・・・日本史か。特に俺がやらかす要素はない。ここで切り替えよう。
授業まで時間もあるし切り替えるためにも自販いくか・・・
「うわっぁっっ」
こけた。盛大に。陳腐な悲鳴は教室に響き渡り、沈黙は喜劇に変わる。
ここから教室に出るまでの話はしたくもない。
しかし、また疑念が残る。先ほどと全く同じ理由だ。靴を抑えられたようにしてこけた。誰かの悪戯だろうか。
恥ずかしさ、怒り、疑念を抱きつつ自販に着く。
俺が買うのは・・・缶コーヒーだ。
缶コーヒーを片手に俺は校舎裏の人気の少ないところに行く。
人気のないところでゆっくり飲みたいというのもあるが、それだけではない。
「カーベラ、お前だろ。」
俺は先ほどの珍事の答えをカーベラだと回答する。あの性格、どんな魔法を使ったのか知らないが、気配を消せる技・・・どうだ模範回答だろう。
「早く出てこい。出なければ今日からお前は家で匿わないぞ」
ズボンの袖を引っ張られた。些細な違和感だったが、すぐに気づいた俺は蹲み込んで引っ張られたズボンを見る。
「・・・いた」
「むつきぃー わ、悪かったって思ってるから・・・ (グスッ)家を追い出すとかっ ぃいわないでよっ・・・(グスッ)」
小型化したカーベラがいた。俺の掌と同じくらいか、いや一回り小さい。しかも泣いている。そんなに追い詰めたつもりはないのだが・・・
どうしてだろうか、悪戯されたのは俺だ。なのに罪悪感が半端ではない。これだから・・・美少女はずるい。
「わかった、わかった。追い出したりしないから泣かないでくれよ・・・」
「ほんとぉ?」
「こうして出て来たんだし、追い出さないって。だから泣くな・・・ その、泣かれても困るから。」
流石にかわい過ぎて罪悪感がやばいとは本人にいえない。俺が加害者ではなかったら見ながら泣いていることだろう・・・かわい過ぎて。
ん・・・? 加害者? 間違えた被害者だ。
「ほんとの、ほんと?」
「今日の朝言っただろ? 魔王倒すって」
あと、お前に命預けるとか恥ずかしいことも言ったような・・・ これは思い出すだけで恥ずかしさで死にそうだ。
泣き止んだ。どうやら、納得してくれたようだ。
「・・・どうしてついて来たんだ? ついでにあんな悪戯も」
「だって・・・ むつきがいないと寂しかったし、暇だったから」
やばい、コイツってこんな可愛かったっけ? 今小型化してるのもあってなんか怒れない。そして、むつきがいないと・・・ってとこもう一回行って欲しい。
「今小型化してるのは魔法だよな? その状態でどうやってついて来た?」
流石に小型化したままだと学校まで来れないだろう。
「学校に来るまでは気配消しながらきてたの。で、むつきを見つけてから小型化してポケットに入ったりしてた。で・・・その・・・退屈だったから・・・」
「悪戯したってわけか」
どうやら小型化しても力などは小型化前と変わらないようだ。あと当然だが、性格も。
ばつが悪そうな表情で俺を見てくる。怒りたいところだが、もう小型化したカーベラには敵わない。
「もう許したって」
「むぅ〜」
なんか俺が加害者みたいな感じになっている気がするのがなんともいえない。
「キーン コーン カーンコーン」
あぁーそうだった! なんかカーベラと一緒にいて忘れてたけど俺学校にいるんだった!
これはやばい急がなければ。
「カーベラ、不機嫌なところ悪いが、もう俺授業に行かなきゃならねぇ。 どうする?」
「じゃあついてく」
即答だなぁ
少し不安だが、ちょっぴり嬉しいような・・・
「じゃあちょっと動くなよー」
俺はカーベラをつまんで、制服の胸ポケットにいれる。
「走るから気を付けろよ」
「うんっ」
胸ポケから顔だけだし、ポケットを掴んでいる。
その後、「こけた上に遅刻」というレッテルを貼られ1日をなんとか乗り切った俺はその怒りをカーベラに向けつつも、小型化したカーベラに癒された。
「ずっと小型化してくれればいいのに・・・」
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