05:押入れの生き物

 俺と気配を消したカーベラは家に入る。珍しいものが多いのだろうか。カーベラは恐る恐る歩いている。どうやら気配を消す前から見ている人は頑張って観察すれば何とか見えるは見えるくらいの魔法らしい。まぁこれでも相手から姿を消すには十分な精度だろう。


「ただいまー」

「おかえり、お兄ちゃん」

「俺が家に帰ってくるまでいい子にしてたか? 今日はおばあちゃんがいないから久しぶりに俺が焼うどん作ってやるぞ。」


 カーベラには俺の部屋を教えてある。多分変なものは置いてないよな・・・?やばい心配になってきた。とりあえず、部屋に行こう。


「学校の課題終わらせたら作るから、ちょっと待ってろ。」

 妹は、それを聞くと嬉しそうに自分の部屋に戻る。とりあえずは切り抜けられそうだ。


「ひぃぃぃぃ!」

 カーベラの悲鳴が聞こえた。一応、妹に聞こえない程度の声量に我慢してくれたみたいだが。

「何だ、どうした⁈」

「何これ? 怖いんだけど⁈」

 カーベラが指していたのは、俺の部屋に行く途中に見えるリビングのテレビだった。


「テレビだよ。あー 彩芽のやつテレビつけっぱにしてたなぁ。ていうか、早く俺の部屋に行くぞ」

 カーベラは物珍しそうに恐る恐る俺の部屋に入る。カーベラがテレビに気を取られていたのは幸か不幸か、俺が自分の部屋に変なものがないか確認できてよかった。


「なんか、成り行きで俺の部屋に寝ることになりそうだけど大丈夫?」

「別にいいよ。 一緒の布団に入るとかじゃなかったら」


 まぁ当然、親や妹に発見される可能性があるので俺の部屋以外に寝泊りすることは不可能なのだが。それにしても以外と俺の部屋は小さい。どこに寝させるか考えなくてはならない。床はもしまだプライバシーというものを知らない妹が勝手に入ってきたりしたらすぐ見つかってしまう。ベッドで一緒に寝るわけにもいかない。そうすると・・・


「あのさ、寝る場所なんだけど押入れの中じゃだめ?」

 俺が元々布団で寝ていたため、旅館とかにありそうな布団が入っている押し入れが俺の部屋にもある。ベッドで寝るようになった今は、下の段に少しごちゃごちゃしているものが入っているとはいえ上の段がほぼほぼ空いている。


それなりにしっかりしている作りになっているし、まぁカーベラが重いというわけもないし寝ても大丈夫だろう。

「まぁ、不本意だけど、しょうがないか。」

「多分耐えらえると思うんだけど、上の段を使ってくれ。」

「何よ。私が重そうで心配してるの?」


 カーベラが睨んでくる。はぁやっぱりコイツ面倒臭いところあるよな。

 カーベラがヒョイっと押入れの上の段に寝転がる。

「うーん。さすがに硬くて腰が痛いかも。」

「あーじゃあこれ使ってくれ。」


 とりあえず俺の部屋のマットを差し出す。これでも痛いとは思うが、少しはマシになるだろう。しかし、これだとまるでドラ○もんだな。


「何笑ってるの。」

「いや、小学生の学習で、教科書より大事な教材に出てくるヤツに似ててさ。俺の国の子供はその教材を見て創造力を養うんだよ。」

「その小学校やら教科書っていうのがイマイチ、ピンと来ないけど、とりあえずこの国で一番尊敬されてるものに似てるってこと? 褒め言葉として受け取っておくわ。」


 いや、やばい。もう心の中で大爆笑が起きている。次笑ったら流石に言い訳できそうにない。平常心・・・平常心・・・


「俺、飯作ってくる。妹が腹空かして待ってるからな。」

「疲れているし、少し休ませてもらうわ。」


 俺はそういって自分の部屋をでた。どうやら心の中ではまだ大爆笑が起こっているようだ。

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