04:納得のいかない出会いの終わり
確かにカーベラを異世界に送られて最初に会ったやつに断られてはこの先どうすればいいかと不安にさせてしまったかもしれない。でもこれでいいのだ。俺には世話をしなければいけない妹がいる。死んでいる場合ではないのだ。
俺はあの忘れられないカーベラの顔を忘れようと、自分を納得させる。
一時のイレギュラーイベントが過ぎ、普通が訪れる。あんなにうんざりしていた普通なのに今は安心さえ感じる。
「もう忘れよう」
家の前に着いた。
ドアノブに手をかける。何もかもがいつも通りだ。ドアは開いている。彩芽がいるのだろう。
「ただい・・・」
「・・・ハァ、ハァ、ハァ あれなんですか⁈」
彼女は、カーベラはことごとく俺の静寂を、普通を破壊する。あともう少しでほんの少しで確実に俺の生活は『普通』にしっかり帰っていた。
「あれ何⁈ 太い腕が回って四つん這いになって、走って、速くて、光って・・・」
車のことだろうか?
「あの・・・虫がいいのはわかるんだけど、今日だけ匿ってくれない?さっきの闘いでもう魔力切れで、今襲われたら殺されるか、連れ去られる自信がものすごくあるのよ。」
「いや、でも俺家族いるから・・・」
「適当に、彼女とでも言ってよー」
まぁ、妹しかいないので匿うこと自体はどうとでもないのだが、こんな奇抜な格好の人を彼女さんと妹に紹介して、それがあとで親に伝わるのがめんどくさい。
「流石にその格好の人を彼女っていうのも気が引けるというか。」
「服?そう服と言ったらね、びっくりしてるの。こっちの世界の人って不思議な服を着ていて、私の世界じゃ浮かれものになっちゃうよ」
それは今のお前が同じようなものだろうが。
「流石に小型化したり、透明化することはできないよな?」
「いやできるよ?まぁどっちも魔力の残量的にきついけど。今できるのは潜伏系の魔法で気配をなくすくらいのしょぼい魔法だよ。」
十分だ。それで妹の目ぐらい欺ける。いや待て、何でそもそも家に入れる気になっている。
「どうしても匿わないとダメですか?」
「この麗しい私がどうなってもいいというならほっとくがいいわ」
コイツちょっと俺が心開いたからって、元はこんなお調子もんかよ。
もしコイツと会うなら、普通にそして、もっとロマンチックに出会いたかった。
「今日だけだぞ。」
カーベラは笑顔を向けた。やっぱりその顔は可愛い。はぁ・・・ここから続く言葉はもう何となく決まっていそうなので省こう。
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