02:論より証拠

「いい加減、帰らせてもらいますよ。カーベラさん」

「な、何で? 何で何も起こらないの? ちょっとむかついたから服を少しばかり燃やそうとしただけなのに」

 かなり聞き捨てならないことを言われたような気が・・・


    ―ストン―


 何かが着地した音が鳴った。

 もう冬明けの5時を過ぎている。あたりは陽が消え始め、闇に包まれている。落ちたものの容姿もはっきり見えない。


 なぜ、闇だと思ったのだろうか。暗がりと表現すべきだったのではないだろうか。いや、違う闇こそが適切だったのだ。禍々しく、飲み込まれてしまいそうな圧が、闇がそこにはあった。


「“シャイニング アロー”」

 闇が消えている。カーベラが放った光が闇を消し去った。そして後ろにはカーベラが先と全く異なる姿で存在していた。いや存在も見かけは同じなのだ。うちに秘めるオーラだろうか。先ほどとは訳が違う。


「もう、追手が放たれていたのね。」


 取り残された俺の意識が、思考が遅れて現実に、今に追いつく。

「どう?信じてもらえた? もう一度言うわ。私の名前はカーベラ。元の世界ではこれでも有名な魔女だったのよ?どうか魔王から私の世界を救って欲しいの。」

 彼女はドヤ顔で自分の魔法の凄さを俺に示して来た。だが今はそれどころではない。


「あ、あぁ・・・」


 いやまだ思考は追いついていなかった。先程の恐怖は今までに感じたことのある種類と全く異なるものだった。それは“死”への恐怖。

 死を覚悟した。本当の弱肉強食の世界に突如置かれた。


「大丈夫?私もこんなにすぐ追手が来るとは思ってなかったんだけどね。ここにいると危険かもしれないわね。どこかに移動したいな。」

 本当に、どうゆうことだよ・・・

 あぁ、脳が考えるのを止めようとしている。目の前が暗くなっていく。


「だ、大丈ぶ・・・」


 現実が視界から、様々な感覚から消えあたりは黒くなっていく。

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