01:出会いは常にロマンチックとはいかない

「あなた、私の落ちてくるところ狙ってたわね。もしかして魔王軍の幹部? 私がこの世界に送られたことを知って待ち伏せしてたの?」


 いや、まじで急に落ちてきて何・・・?いやそれどころじゃないだろ頭が追いつかねぇー


「これ新種のドッキリ? カメラはどこ? なんかいい反応できてなくてごめんなさい」

「ドッキリって何ですか。そして矢継ぎ早の質問をしないで。ていうかそれよりあなた私の胸触りましたよね。異世界送られてすぐにセクハラとかあり得ないんだけど」


 まぁ、確かに彼女が落ちて来た時の感触は悪くはなかった。まさかとは思ったが・・・とんだラッキースケベが潜んでいたものだ。

 とはいえ、相手は知らない相手だし急に落ちて来たのも相手だ。冤罪もいいところだ。動揺したらつけ込まれる。平常心、平常心。


「いやそれはそっちが落ちてきて・・・ ていうか異世界とか大丈夫?」

「人をそんな救えないアホを見る目で見るのはやめて」

 いや何俺こんな落ち着いて話てるんだ? 人が落ちてきたんだろ? やっぱりこれどう考えても嫌がらせだよなぁ・・・もう帰ろう


 脳が勝手に思考を停止してこれ以上考えさせないようにする。

「新種の嫌がらせなら帰りますよ。あとそんな奇抜の格好していると目立つのでそういうのはコスプレ会場くらいにしたらどうですか」

 コスプレ用の服だろうか。この世界では明らかに奇抜と分類されるような服を着ている。黒いジャケットにピンクのスカート。さらには赤が裏地の黒マントとは・・・


 最近の嫌がらせは進化したものだ。さすがに人が落ちてきたように錯覚して、セクハラ容疑までかけるとは、迷惑甚だしい。焼うどんの材料も買えたし帰ろう。彩芽が待っている。


「ちょ・・・待って、待ってっててば。いやまぁ確かにあなたがセクハラしたのは間違いないけど・・・落ちてきた私にも悪い点があるか・・・あると思い・・ます」

 引き留めようと必死になって出て来た言葉がそれかい。


 ん・・・いやさっきから異世界だの魔王軍だの言ってたから頭おかしいやつと思ってたけど よく見たらかわいいというか綺麗というか。いやうん、異世界だの魔王だの言ってなければ俺の青春ストーリーの完全なプロローグだったんだけどなぁ


「やっぱり、変な目で私を見てるよね!」


 引き止められたと思ったけど、やっぱ帰ろう 


「だから待ってって言ってるじゃない!」

「何なんですか、異世界だの魔王だのいう前に名前くらい名乗ったら?」


「まあそれもそうね。私の名前はカーベラ。私がいた世界は魔王が侵略してきて、危険な状態に陥っているわ。私と一緒に魔王を倒しに異世界に来て欲しいの。」


 身長は俺より少しばかり低い。出るとこは出ていて、魅力的な体つきをしている。綺麗な黒髪で、燃えるような瞳に見つめられると思考が停止してしまう。首にかけている赤い石ついているペンダントがとても似合う。本当に魔王とか言ってなければ・・・


「はいはいそうですかカーベラさん。 本名は?」

「いや本名よ?」

「・・・・・」

「だから何なの? その救えないアホを見る目は! 信じてないの?」

 カーベラとかいうその女性はこちらを困った目で見る。そんなことを言われても本当に信じるものはいるのだろうか。


「いや逆に信じるやついる?」

「どうすれば信じるの?」

「そりゃ、異世界の定番といえば魔法とかかなぁ?」

「“フレア”」

「・・・・・」

「・・・・・」

 なんか自信満々に腕を俺に突き出して魔法っぽいセリフ吐いたから何かと思えば何も起こらない。


 やはり新種の嫌がらせか。俺は帰る事を強く、強く決心した。

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