おまけ もしもクロウが参加した場合
これは、「もしも」のお話です。
本編とは関係ありませんし、影響もありません。
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~ 第三章 「エクサの役所に来てみました。」闘技大会を勧められる場面にて ~
「んじゃ、クロウが闘技大会に出てみたら?」
ケイがまた反応に困る冗談を言うと思ったら。
「こんな大きな都市だと、滞在費もけっこうかかるよ。その点、選手ならお祭り期間中は宿泊費無料、食事代もタダ。負けるにしても、その鎧ならひどいケガにはならないでしょ」
けっこう本気な顔で勧めてくる。
「さらにお食事はおかわり自由です。お得だと思いますよ」
受付さんがさらに付け加える。
商売上手め。
まあ、目的にしていた仕事がなくなったし、このままだとお金が減る一方ではあるんだけど。
「しょうがないなあ……。やってみようか?」
「ありがとうございます! それでは、気が変わらないうちに手続きしちゃいますね。登録名は、先ほどのもので記入しておきます」
顔を輝かせた受付嬢は、必要な書類をすごい勢いで書き上げる。
よっぽど選手が足りなかったのかな……。
「では、こちらをお持ちください。闘技大会の選手番号になります」
赤く塗られた木製の番号札が、私に渡された。
番号は、九十四。苦しんで、死ぬ。
なんて素敵な数字……。
「それじゃ、闘技大会の会場に案内するよ。私はもう受付を済ませてるから、場所は知ってるんだ」
「ああ、ケイ、行かないで。ジュリアさんが来るまで待たなきゃ」
ケイが先頭に立って歩き出そうとするので、慌てて呼び止める。
……しかし、我ながら勢いで大変なことをしちゃったのかもしれない。
まあでも、他に収入のあてはないし、ウェナに出場させるわけにもいかないしなあ。
死鋼の鎧があれば、なにもできずに負けるってこともないかな。たぶん。
~ このように、ジュリアが来る前に闘技大会の参加手続きを済ませた場合。 ~
◆ ◆ ◆
~ 闘技大会 クロウの第一回戦 ~
「知名度最高、賭け人気も最高! 本大会三年連続優勝者にして、現在は首都の守備隊を率いる、この闘技大会の出世頭!」
……それって、私の対戦相手のこと?
三年連続優勝ってすごいな。今年の優勝候補ナンバーワンなんじゃないかな?
「その名もおぉぉ、エクサの守護者、ジュリアァァァァァっ!」
「ええー!」
私の悲鳴は、直後に起こった観客の雄叫びにかき消された。
「対するはぁ、魔……」
司会の人の口が、一瞬止まる。
「なんだこりゃ。読みにくいなぁ。魔王でいいや。略して魔王! 情報、なにも無し! 初出場のこいつが、どこまで粘れるか。あのごっつい鎧が、ハッタリでないことを祈ろう!」
ごめんなさい。ハッタリのようなものです。
「出なきゃよかった。逃げ出したい……」
≪おいおい、やる前から諦めてどうするんだ≫
~ この後、ギド王のアドバイスを受けながら戦うけど、本編のジュリアと戦った鉄塊王とだいたい同じ目に合う。最後にジュリアに槍をつかまれたところで、ギド王に励まされながらジュリアを槍ごと観客席まで投げ飛ばして逆転勝利。その後は、本編のジュリアと入れ替わる形で闘技大会を勝ち進んでいく。 ~
◆ ◆ ◆
~ 闘技大会 決勝日 準決勝戦 クロウ 対 疾風 ~
「前の試合は見させてもらった」
疾風さんが、そう言って私に右手を向けた。
その手には、二本の短い金属棒が握られている。
そして、その二本は短く太い鎖でつながれていた。
あれってヌンチャクかな。
カンフー映画とかで見るやつ。
いや、本物は見たことないけど。
「相当の腕力だが、捕まらなければ問題ない。俺の速さは、おまえとは比較にならん」
うわ、すごい自信。
≪お、クロウ。槍に黄色いのがついてるぞ≫
「おまえがなにをしようと、俺の体に触れることはできない。棄権するなら、今のうちだぞ。おい、聞いているか?」
見てみると、確かになにかが槍にくっついている。
それはトウモロコシのかけらだった。開会式の前にトウモロコシの海塩焼きを食べてたんだけど、もしかしてこぼしちゃったのかな。
指で触れてみたけど、かけらは槍の柄にぺっとり貼りついていて取れない。
≪弾き飛ばしたらどうだ?≫
私は中指を親指の腹にあて、力を込めてトウモロコシを弾いた。
「ぐっ!」
疾風さんが変な声を出したので、私は顔を上げた。
彼は自分の額を左手で押さえている。
額からぬぐうように手を離した疾風さんが、その手のひらを広げた。
「貴様……」
どうやら、弾いたトウモロコシが命中しちゃったらしい。
疾風さんの顔が怒りにゆがみ、首の後ろの毛がふくらんでゆく。
≪ウハハハハハ、いい腕してるじゃないか。この距離で命中させるなんてな≫
~ この後、怒った疾風に先制攻撃を受ける。本編で疾風と戦ったジュリアと違って何回かヌンチャクで叩かれるけど、不用意に近づいた疾風にカウンターを決めて勝利。 ~
◆ ◆ ◆
~ 闘技大会 決勝戦 クロウ 対 双鉄拳(マーグ) ~
「さあ、始めようじゃねえか。あの女の
双鉄拳が、小手の両拳を身体の前に合わせた。
≪死鋼の生み出す力は、金属の量と使い手の魔力によって決まる。相手の死鋼は右腕一本分だが本人の魔力が相応にある。こっちは全身鎧でも、中身は魔力ゼロだ。総合的に出せる力は互角だと思った方がいい≫
「わかったよ」
私は槍を握る手に力を込めた。
確かに、あいつは強いし、怖い。だけど、一発くらい引っぱたいてやらなきゃ。
無抵抗のケイをあんなに攻撃したのは、さすがに許せない。
「登録名、魔を拒む黒鉄の王。登録名、双鉄拳。中央へ」
審判さんが誘導し、私と双鉄拳が闘技場の中央で向かい合う。
~ ケイを目の前で倒されたクロウは、決勝戦でマーグに正面から立ち向かう。激戦の途中でマーグのカツラが取れ、議長か試合をストップ。そこから先は、本編と同じ展開に。 ~
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…というような、クロウが闘技大会に参加する可能性もありました(過去形)。
このルートでは、最後には本編と同じ結末に向かいますが、本編以上にクロウが大変な目にあってしまいます。
また、金銭収入に闘技大会の優勝賞金が追加されます。
あと強敵との実戦経験も得られます。
クロウ本人はそんなの求めてないでしょうけど。
黒髪少女と黒の呪鎧《アーマー》~異世界転移しても普通の女子のままで魔法も使えませんでしたが、そんな私だからこそ着られる最強の呪われた鎧を見つけました。鎧を着たら強く可愛い女の子の従者も付いてきました。 海原くらら @unabara2020
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