第5話 勇者の生まれた港町

「ここがウインガーデン…」


船から降りるとそこには祭りでもやっているのかというくらいの人の波。

これが都会ってやつなのか…

これから行く聖都はもっとすごいのかなと胸を躍らせながらもここ、ウインガーデンでやらなければならないことがある。

まずは市場調査だ。

もちろんこの町での流行が全てではないが、この町の賑わい方を見るからに一つの指標にはなりそうな気がする。

マイネおじさんの力は借りずに自分の力でやるしかない、マイネおじさんに言えば色々教えてくれるのはわかっている。

でも、それでは僕の店ではない…今日まで順調に来ていたけど、本来はマイネおじさんもロイドさんもいない状態が普通なんだ。

今の甘えた考えを捨てないことには僕は店を続けていくことはできないと思う。


「ジン君?どうしたんだい?一緒に市場調査に行くかい?それともマリンちゃんと…」


「行きません!!マリンちゃんとも遊びません!」


「ごめんよジン君ちょっとおじさんからかいすぎてしまったみたいだね」


「あ、違うんです!僕自分の力で少しでも…だから今日一日一人で市場調査させてください!マイネおじさんも市場調査おねがいします!それでふたりの目線で行きましょう!」


「ほう…さすがはロックハートさんの息子じゃなあ、そこまで考えてるとは、夕方の6時までに船に戻ることを条件としてお互いに市場調査と行こうかの」


「ありがとうございますマイネおじさん!」


「じゃあ気をつけて行くんじゃよ」


「マイネおじさんも!行ってらっしゃい」


さて…市場調査なんて一度もしたことがないのに思い切って言ってしまった。

最初の一回くらいは一緒に市場調査しておくべきだったかもってちょっと後悔だ…

いつまでも港にいても仕方ない!

とりあえず町の方へ向かう。

レンガで舗装された道、それだけでも僕の生まれた町とは違う。

むき出しの土に雑草、それに石もゴロゴロ転がっている。

歩くことが楽しくなるくらいにきれいな町並み。

食べ物屋さんが多い、やはりここまで賑わうような町では旅に来る人もその町の味を楽しみたいのかもしれない…

雑貨屋を探すが見当たらない…

武器屋、防具屋、アクセサリー屋も見つからない…


「やばいぞこれは…並んでる商品と売れ行きを見たかったのに何もない…薬屋はあったけど…」


「坊主迷子か?見た感じ迷子になるような年にも見えねえけど」


「うわあ!びっくりした!」


身長2mを超える大男がいきなり後ろから声をかけてきたら誰でも驚くよね、うん、そんな人が急に僕に話をかけてきた。


「うわああああ!そんな大きい声いきなり出すなよ!こっちもびっくりするだろ!」


「すみません、でも大きくて振り向いてびっくりで…」


「なんか、言葉不自由になってんぞお前」


「ああ、すみません…」


「まあそんなことはどうでもよくてな!お前名前は?」


「僕はジン・ロックハートです。」


「ロックハート?ん?なんか聞いたことありそうでない名前だな(笑)」


「ん?よくわからないけど馬鹿にされてますかね僕」


「してない、してない、ジンかお前は迷子なのか?さっきからキョロキョロしてどうした?」


「そうだ!僕お店を探してて!あなたこの町の雑貨屋さんって知りませんか?」


「あなたって気持ちわるいな(笑)俺はディガン!この町の治安を守る自警団の隊長だ!」


「自警団の隊長…?」


「そうか!ガキにはまだ早かったかもな!この町は豊かな町だ、だからこそ色々な問題が起きる」


「問題…?」


「富裕層と貧困層が生まれるのさ」


「それは賑わってなくても生まれるような…」


「確かにどこにでも存在するだが、賑わえば賑わうほどその差は開いていく…そうするとたくさんの問題が起こる」


「犯罪ですか…?」


「そうだ!ジンお前実はバカじゃないな!」


「一度も自分でバカなんて名乗ってませんが…」


「まあまあ気にするな!正解だよ犯罪が起こるんだ。その犯罪から町の人たちを守るのが俺たち自警団だ!」


「町の人を守るのに武器もなにも持たないんですか?」


「昔は持ってたさ…でも今この国には武器所持を禁止する法律ができてしまった…だから今は肉体を鍛えて武器はもっぱらひのきのぼうかこん棒だよ(笑)ダサくてもって歩けないぜ」


「…じゃあこの町に武器屋も防具屋もないのは…まさか…?」


「全部潰れて食いもん屋になった!でも今はそれでも昔よりは儲かってるみたいだから悪くはないんじゃねえのかな」


衝撃の事実を知ってしまったジン…

法律により本格的に武器を作ることは叶わなくなった。

元々武器に固執してはいなかったもののこの世界のことを何も知らない自分に悲しくなった。

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