第3話 これからの道

一日目は、掃除だけで終わってしまった。

何十年も使われていなかった工房だから仕方ないといえば仕方ない…

それにしても掃除するまでは気がつかなかった。

自分の家とは思えないほどの設備…武器だけではなく薬の調合や食肉の加工本当に色々なことができそうだ。

落胆していた数日前までが嘘のようだった。

しかし…次の日やってくる。

忘れてはいけない僕には多額の借金があることを…


「おいこらあああああ!いるのは分かってんだ!借りたクルトはちゃんと返さんかい!!」


借金取りだ…二日に一回はこの家に来る。

こんな状況では商売どころの話ではない…


「すみません…周りの目があるので家の中にどうぞ…」


借金取りを家に招く、借金取りはふてぶてしく椅子に座ると言った。


「昨日は随分楽しそうに工房の掃除をしてたらしいじゃねえか!!クルトを返すあてでも見つかったのか!!ああ!」


「見てらっしゃったんですか…一応また商売を始めようかと…」


「ほう!!いつまでも引きこもってるよりは返せる確率は上がりそうだな!」


「なので…もう少し返済を待っていただけますか?」


「俺たちも鬼じゃねえんだ、相手に返す気と可能性があるならいくらでも待ってやる!安心して商売しろ!その代わり利息はどんどん膨れ上がるがな!!」


借金取りはすごく楽しそうに話している。

クルトを搾り取れることを喜んでるのか、僕の新たな門出を祝ってくれてるのか…

もちろん前者だとは思うけど一応事なきを得た。


「ちょっと工房見せてもらうぜ!」


人の家の中をづけづけと歩いていく借金取り…

時々、触ったり、何かを見て納得した様子を見せている…


「ほとんど整備しないと使えねえぞこれは」


「えっ…借金取りさんこういうの詳しいんですか?」


「借金取りさんじゃねえ!!ロイドだバカ野郎!詳しいもなにもこんなの見ればわかるんだよ!こんな炉じゃあ火は入らねえんだよ!他のもてんでダメだ!」


「すみませんロイドさん掃除して綺麗にしたのはいいんですがこの先どうしたらいいかわからなかったんです!教えてもらえませんか!」


「ああ!お前はそんなこともわからないで何をやろうとしてたんだよ!とりあえずはこの書類にサインしろ!!」


急に紙とペンを出してきたロイドさん…

そこには、借用書100000クルトと書いてあった。


「じっ…十万クルト…どういうことですか…?」


「これだけあればこの工房を完全に再稼働することができる!俺がもってやるって言ってんのさ!!」


「いや…でも今でも返せるかわからない程の借金があるのにこれ以上は…」


「お前はそんな考えで借金全部返せると思ってるのか!?俺はなあお前にかけてみたいんだよわかるか?こんな町を世界一の町にしたいなんてバカなことを言うお前をな!」


「えっ…昨日聞いてたんですか?」


「おう!全部聞いてたぜ!だから俺はお前に投資をするだけだ!!」


あまりにとんとん拍子に話が進んでいくのが少し怖いけど、このチャンスには乗るしかなかった。


「わかりました…ありがとうございますロイドさん!僕絶対返済できるように頑張ります!!」


「おう!整備には一週間以上かかる、その間に何をどうするのか最低限のビジョンを決めるんだ」


「最低限のビジョン…」


そうだ一番大事なのは何を売るかだ。

僕は今まで店の手伝いはしていたことはあっても生産をしたこともなければ今の世界が必要としている物もわからない…


「その顔は一から何したらいいか教えてやらなきゃダメな顔してんな…お前に投資するの間違えてたかもしれないな…まあクルトは俺が貸した中から捻出していいから都にでも行って来い!今だったら聖都インステレアにでも行ってきたらどうだ!」


「聖都インステレア?」


「そうか…お前はこの町から出たこともないのか…こりゃ前途多難だな…」


「でも!マイネおじさんが居るからなんとかなるかも知れない!」


「マイネ!?もしかして伝説の旅商人マイネか!?昨日一緒に掃除してたおっさんが!?」


僕の知らないところでマイネおじさんも実はすごい人でした(笑)


「この町をどん底から復興させた両親を持つお前が伝説の旅商人の弟子になるのか…こりゃ投資も成功するかもな!!後の工房のことは任せてマイネからいろいろ盗んで最高の店を作れよ!」


僕の人生どん底だと思ったら周りの人がすごくいい人じゃないか…

何日も無駄にしてしまった自分を恨みたい…

いよいよ始まる僕のロックハート雑貨店が!

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