第2話流行の最先端

「なになに…白銀とは鉄よりも低い温度で融解する鉱物で…加工する温度により低温なら青、高温なら赤、様々な色に変化する金属です…か…」


昼間マイネおじさんと別れたあと図書館に行き本を借りてきた。

鉱物入門書級という本だ。

この本には様々な鉱物の加工方法、技術が事細かに載っている。

本来は鍛冶見習などがこぞって借りていて借りられる状態ではなかった…数年前までは…

時代変わったなあと18歳ながらにしみじみとしながら読み進めていく。

元々ロックハート雑貨店の前身はロックハート工房という素材を持ってきてもらえばなんでも作る工房だったらしい…

それを何時しかただの武器屋に変えてしまったのが叔父と父親だったらしいが…

まさか僕の代になって工房に再び火が灯るなんてご先祖様は思いもしなかったろうな…


「よし…明日から忙しくなる…気合入れて今日は寝ないとな…」



久しぶりにぐっすり寝ることができた。

ぐっすり寝たせいか懐かしい夢を見た。

勇者が街に来て、ロックハート雑貨店でいろんなものを買ってみんなが笑顔で今より生き生きしているそんな夢…


「よし!マイネおじさんが来る前に工房の片付けと、準備をしておこう!」


埃にまみれた工房を少しずつ片付けていく。

埃をはたくたびに工房は色を取り戻していく…止まっていた時間が少しづつ、本当に少しづつ動き出していくかのように…


「ジンくん、お待たせちょっと色々買ってきたよ工房も久々に使うって聞いてたから掃除道具もある、早く稼働できる状態にしないとね」


「あっ!マイネおじさんありがとうございます。色々してもらっちゃって…後でお金は払いますね」


「お金なんて今はいいんじゃよジンくん…私はね実はこの街で生まれてこの街で育ってこの街を見捨てて外の世界に飛び出していった薄情ものなんじゃよ…」


「マイネおじさん…?掃除しながらお話聞かせてもらえますか?」


僕は今日、本当のマイネおじさんを知った。

そして僕の夢は決まった。


マイネおじさんは昔この町で生まれて物心つくまではこの街で育ったらしい…

その時のこの町の名前はセンスオブタウンと名前がついていたそうです。

この街で作られたものは世界に羽ばたいて瞬く間にトレンドになる。

武器でも防具でもアクセサリーでもそのくらい素晴らしい生産技術をもった街だったと。

しかし、事件は起きた。

魔王軍の魔物が一斉に攻めて来て街は見る影もないくらい無残な光景…

幸い魔王軍の狙いはこの街ではなかったらしく死者はあまり出ていなかったものの街は壊滅状態…

多くの人間はその日を境にこの街を最果ての町と呼ぶようになり、この町から出て行った。

マイネおじさんも出て行った一人だったそうだ。

そんな状況になったら逃げ出すのは当然だ。それに逃げることは恥じゃない…生きるためには切り捨てる勇気だって必要だと僕は思った。

でも、そんな中ある夫婦だけが町に残った。

そう、それがロックハート雑貨店店主である僕の父親だったそうだ。

借金を残して消えたくせに昔は随分かっこいいことをしてくれているじゃないか…

ロックハート夫妻はたった二人で町とは言えない町で何年もかけて家を建て直し、店を作り魔物を狩りなんとか暮らしていた。

そしてマイネおじさんが町に20年ぶりに戻ると最果ての町は見事に人の住める土地になっていたそうだ。

その時からマイネおじさんは街をここまで町に戻してくれたお礼にと何も告げづにロックハート雑貨店を陰ながら支援してくれていたそうだ。


「そんなことがあったんですね…マイネおじさん…僕決めました…」


「どうしたんだいジンくん?」


「僕はこの町を最果ての町じゃなくて、また世界に名前を轟かすそんな素晴らしい街にしてみせます…そのためにもう少しだけロックハート雑貨店を支援してもらえませんか…?」


「ジンくん…もしかしたらその夢は君が生きているうちには叶わない夢かも知れない…それでも頑張れそうかい?」


「僕は生涯をかけてこの町をこの店を誇れるものにします!!」


「老い先短い私でよければジンくんと同じ夢を見させてもらうよ…君は本当にお父さんにそっくりじゃな…」


こうして僕とマイネおじさんは同じ目標へ向けて歩き出した。

工房の掃除は全然進まなかったけど…

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