第2話 鶴
「やっほー♪」
えっ、やっほー……?なんでそんなにノリが軽いの?いやいやいやそうじゃなくて!誰だよこいつは!俺はナースコールを押そうとした。
「あ、追い出そうとしたでしょ?無駄だよ♪あたしニンゲンの目には見えないからね」
どこまでもムカつく奴だ。何なんだよ!いよいよ本気で追い出そうと腕を掴む……つもりだったが無理だった。少女は浮いていたのだ、空気的ではなく物理的に。
宙に浮く少女はこちらを見下すようにほくそ笑んだ。
「言ったでしょ。無駄無駄。あたしニンゲンじゃないし。鶴だから」
「……とにかく帰ってくれよ」
そう言うと、急に彼女の眼に陰りがさした。
「……すいません、迷惑でした……よね。本当は私も帰りたいんですが、帰れないんです」
は?さっき窓の外にいたよな?と不思議に思っていると、疑問の色を察したのかぼそっと呟くように
「ここで目が覚めて飛んで帰ろうとしたんです。そうしたら、何かに勢いよく当たってそのまま落ちてしまって……よく見たら病院に結界が張ってありました。ほら、こんな風に」
彼女は上着の内ポケットからケータイを取り出してその画像を出す。
パッと見ただけでは分からないが、よくよく見ると病院の入り口付近に生えている木の辺りにうっすら靄のようなものがかかっている。……まったくどうなってるんだ?
「ねぇ、なんか退屈だからゲームでもしない?しよう??いいよね???」
いつの間にか彼女の眼の陰りは消え去っていた。先ほどとはうってかわって、太陽のような星のような光に満ちている。口調も違うし、もしかしてこの娘……
「おっ、こんなところにオセロはっけーん!やろやろ♪」
こういう気の強い系異能少女はだいたい逆らおうにも逆らえない。多分逆らったらろくな事にならない……というファンタジー物のお約束がある。俺の周りで起こっている出来事的にこれはファンタジー物の世界な気がするので、つまり従うしかなさそうだ。
こうして、謎の少女とオセロで戦うことになるのだが、あまりオセロが得意ではない俺はあっさりと負けてしまった。
「っ……!」
急に腹が今まで感じたことのないレベルで痛む。痛さのあまり意識が朦朧としてくる。薄れゆく視界に最後に映ったのは
「くくく……」
悪魔のような少女の笑顔だった。
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