31羽の折り鶴
國春 茉奈
第1話 悪夢
冬が終わった。暖かくなって、やっと布団から出やすくなった頃なのだろう。まぁもう俺にはそんなこと関係ないのだけれど。360度ずっと変わらない情景と、この独特な空気の匂いにもさすがにもう慣れてしまった。
「あと一ヶ月か……」
遡ること、五ヶ月前。
「膵臓に悪性の腫瘍があります。しかも、末期です。もってあと半年といったところでしょう」
これってドラマとかでよく見るあれだよな?余命宣告ってやつだよな?
「は……?」
衝撃も度が過ぎると不思議と感情がなくなるものなのだろうか。後ろに立っている母も口をあんぐりと開けて……反応がない、ただの屍のようだ。
と、まぁこうなるのにも実は訳がある。
二度も遡って読者には申し訳ないが、さらに遡ること三時間前。
『そして今日の運勢最下位は……ごめんなさい!やぎ座です!』
「あ~やぎ座最下位か……やばいな」
あ、ちなみに言い忘れていたけど俺はやぎ座の「八木悟」だ。よろしく。
『やぎ座のあなたは今日膵臓がんが見つかってしまいます!残念!』
「は?」
いや、その内容を言うにしてはちょっと軽すぎないか?なんだよ、残念!って。ジョークにしても全然笑えねぇよ。しかも全国ネットでやぎ座に対して《膵臓がんが見つかる》なんてそんな断言するか?俺はたまたまこれから健康診断だけど、っていやいや!それでもおかしいだろ。もうなんか色々通り越して呆れたわ。
……なんて思ってた三時間後にはこれだ。単なる偶然なのだろうか?一体何がどうなっているんだ。こうして僕は訳が分からないまま、すぐ入院することになった。
……そして今に至る。
環境に慣れはしたが、正直今でもこれは悪い夢なんじゃないか、いやそうであってほしいと思っている。
相変わらず病院食ってやつはまずい。こんなの食べてたらますます憂鬱になって余計に病状が悪化するんじゃないか。…なんて思って何となく窓の方を見た。うん、少女がいる。いつもと変わらない。……ん?
「うわあっ!」
そこには窓ガラスに張り付くようにこちらを見る少女の顔があった。しかも見ず知らずの。
俺がその場で固まっているとそいつは、「あっ、いっけね☆」みたいな感じに笑って窓を開けた。
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