第8話 なく夜に
「いつになったら忘れるんだろう……。」
海からの帰り道、車に積んであったTシャツを着た霧ちゃんが言う。
「若いうちはよくあることなんだよな。」
「ん。」
「霧ちゃんはあの人たちと出会ったこと後悔してる?」
「してないよ。」
断言をする。
運転をしているうちにコンビニについた。霧ちゃんは水を買っただけだった。
「霧ちゃんは、清貧の生活をこころがけているんだっけ。」
「くだらないとお思い?」
いつもと違う口癖がポロッと出る。無理をしていたのだろう。
本当に優しい子なのがわかった。
「甘いものを食べず、多くを食べずって……まあ、体型を維持したいっていうのもあるけど。」
「ビールは別で?」
「ビールとかお酒を飲むのは辛い時だけ。」
「清貧じゃないな。」
「そうね。」
丁度のお金でお会計をする。
レシートを綺麗に半分に折る。
車に乗る時は服の裾を気にして座る。
正直ひとそれぞれでこれをしたら忘れるとか完璧な措置はない。が。
「忘れなくていいんじゃない。」
「どうして。」
「だって、後悔していないなら。」
「それもそうか。」
窓の外はもう夜になっていて、少し冷えた空気の中にいるのに、車の中はポカポカとしている。
「夏が終わる。」
鈴虫がないている。
涙をこぼさないように、外を睨みつけながら目の縁に力を入れているのを横目にみていた。
[完]
ワイルドスピリット〜赤〜2 はすき @yunyun-55
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